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第一話 天草春樹という男

 今日は学校がお休みだ。私こと天草夏美あまくさなつみも兄の仕事に協力する。

私が朝早く起きて、食事の支度をしていると、依頼の電話が鳴る。

春樹は三コール以内に電話を取る。

営業職では、電話を三コール以内に出る事を重要視している。

その事を知った春樹もその通りに実践していた。

春樹は電話を取り、喋り出した。

そして、電話の相手が仕事の依頼である事を知ると私にこう言う。


「夏美、重要な依頼が入った。静かにしていてくれよ!」


そう言って、電話の内容をじっくりと聞く。

春樹は言う、生死に関わる仕事が舞い込んで来るかも知れないのだ。

依頼主からの情報は、決して聞き漏らしてはいけないと……。

そのため、私もテレビなどの電源を切り、静かに春樹の電話が終わるのを待った。


 私が食事の支度を整えると、春樹の電話は終わったようで仕事の依頼を報告して来る。

食事は迅速に取らなければいけなくなったと言い、早食いする。

私はあまり早食いは得意ではないので、兄に構わずゆっくりと食べる。

兄は、私が食事をしている時間に、仕事の内容を教えてくれる。

親切なんだか、迷惑をかけているのか、食事に集中できない。


「今日の依頼は久々に命の危険を伴う任務だ。お前も心して聞いて欲しい」


「ああ、はいはい。前不利は良いから、仕事の内容を早く言え!」


「脱走不能と言われた牢獄から五回以上も脱獄した恐るべき化け物の捜索だ。

腕と脚の筋力が異様に発達した怪物だ。

スピードは世界最速を誇り、首領能力にもたけている。

依頼主から俺以外に、奴を捕らえることは不可能と言われている。

夏美、遊び半分できたら命は無いと思え!」


「はいはい、真剣にやりますよ」


こうして、私達は食事をし終わり、それぞれの武器を持って出かける事にした。

やはり武器は、自分の使い慣れた物が一番良い。

私の武器は、鉄を骨組みに作られた特別製の傘だ。

作ってくれた人は、黒い傘を使用している。

私はその人に気に入られたので、おそろいのピンクの傘を作ってもらったのだ。

これでも逆刃刀と同じくらいの威力はある。

鍛練と護身を兼ね備えた必殺の武器だ。

日本で持っていてもばれない最低限度の武器だ。


 でも、春樹の武器はもっとすごい。

ウルボロスとかいう研究グループが独自で作り上げた世界でたった一つの武器なのだ。

その分、値段も恐ろしく高い。兄の持ち物はその武器だけなのだ。

タイプ・ヒュドラ―と呼ばれ、どんな形状にも変形でき、強度も鋼鉄並みにある。

それでいて、かなり軽い。

フライパン、テニスのラケット、ヌンチャク、剣など色々と瞬時に切り換える事ができるのだ。

普段は紺色のコート姿をしている。

その武器を持って仕事に行く春樹は、まさに氷結のエリクシ―ルなのだ。

どんな敵が待っているのだろうか?


 春樹に誘われ、辿り着いた場所は牢獄のような豪邸だった。

全く、金持ちという奴は、自分が牢獄のような家に住み付いて、財産と命を守ろうとするとは、愚かな生き物だ。

しかし、この牢獄から脱走する凶悪な生物とは、何なのだろうか? 

不思議に思った私は訊いてみた。春樹は真面目な顔でこう答える。


「そう、この家で飼われていた愛玩動物の猫だ。しかし、普通の猫ではない。

三毛猫だ!

三毛猫は、猫の中でも特に獰猛で、好戦的だ。

興奮している時など小さい虎そのもの。

子供やお年寄りにとっては、命を脅かす猛獣なのだ。

この猫によって、どれほどの友人が無くなった事か……。

洗われていない時の爪はまさに猛毒、俺の戦友である猫は腹の一撃を受け、帰らぬ猫に……」


春樹はマジ泣きし始めた。

なんだかよく分からないが、早くターゲットの猫を捕まえない事には、いろいろな生物の命が危険らしい。

あんまり気乗りしないが、しょぼい仕事も偶にはあるか……。


 春樹が先頭になって、ターゲットの猫を捜索する。

春樹は猫の行動範囲を知り尽くしているようで、周辺の地図を取り出し辺りを付けて探す。わずかな物音にも敏感に反応する。

時には違う猫を見付け、時にはホームレスのおじさんを追撃する。

警察に目を付けられそうになるが、何とかまいて捜索を続ける。

三時間後に、問題の猫を発見した。


 さすがに、頭の良い猫だけあって、普通に餌で釣る方法では捕まりそうもない。

いや、かえって猫の本能を刺激し、近くの人や動物を襲う危険がある。

中途半端な方法で近付けば、取り逃がすだけである。


「夏美、下がっていろ! こいつは俺でなければ捕らえられない!」


春樹はそう言って、武器のヒュドラ―を剣の形にする。

春樹は戦闘を開始する時は、必ず剣の形で始める。

まあ、相手も武器の形状が変わる事を知らないし、本人もやる気になるから良いけど……。


 さすがに春樹が言うだけあって、三毛猫の動きは素早い。しかも攻撃的だ。

普通の人間では、目で追う事さえも難しい。春樹は武器の形状をネコジャラシに変え戦う。一瞬、三毛猫の動きが止まったかと思ったが、それは罠だった。

人間に目では捕らえられない早さで近づき、春樹の手をピンポイントで攻撃する。

肉も皮もあまりない、人間の防御の一番薄い部分だ。

攻撃を受け、春樹は武器を落とした。

三毛猫はすかさず私に向かって攻撃をして来る。恐るべき戦闘判断だ。


「やれ、夏美! フルンティング(ピンク色の傘の名前)で攻撃するんだ! 

奴にはそれくらいで無ければ動きを止める事はできない」


「ええ! 生け捕りじゃなかったの? まあ、全力でいくよ! 

喰らえ、フルンティング・ソード!」


フルンティング・ソードは、私の腕を思い切り振り上げ、剣の重みを利用し、遠心力で周囲の全ての敵を薙ぎ払う攻撃である。

私の持っている攻撃パターンの中でも、一番攻撃力があり、攻撃範囲も広い技である。

しかし、三毛猫はジャンプをし、私の攻撃をかわす。

しまったと思った時には、背後を取られていた。凶悪な獣の一撃が私を襲う。


「くっ、夏美……」


春樹は私をかばい、腕に怪我を受ける。


「ふふふふ、ついに捕らえたぞ! 凶悪なモンスター『トリプルカラーキャット』!」


春樹はダメージを負うものの、武器のヒュドラ―を網状に変形させ、三毛猫を捕らえたのである。


「ふふふ、さすがのお前も俺の前には、ただの猫も同然だな。

さて、夏美。こいつを連れていって、金に換えようぜ!」


春樹がそう言って決めている所悪いが、武器を広範囲の網に変えたため、春樹のコートは無くなりパンツだけになっていた。


「ちょっと君、警察署まで来なさい」


「ちょっと待ってください。

あいつを確保するまでは、近隣住民も安心して眠る事ができません。

せめて、牢屋に入れてからでも……。

ああ! 猛獣が逃げた!」


「君、何を言っているのかね? 君の方が立派な犯罪行為だよ。

近所の女子高生も怖がっているじゃないか!」


「違う、違うんだ!」


春樹はその日帰って来ませんでした。

その後、二日ほどして三毛猫を確保したそうです。

三日働いて、十万円もらいました。

報酬は意外と高くてびっくりしました。



天草春樹あまくさはるき


暗殺者だったが、ほぼ探偵に成り下がった氷結のエリクシ―ル 二十歳

身長 175センチ 体重 60キロ

血液型 B型 B85 W73 H84

誕生日 4月15日


性格 妹想いの兄貴。さっぱりした性格。

妹がスリルのある生活をしていたため、ずっとそういう仕事をしていると思っている。

本人は探偵業でも良いと思っているし、顧客もあるのだが、妹のために危険な仕事の振りをしている。

安全な仕事とも言えないが、世界最高レベルの武器を使いこなす。

ウルボロスの武器・ヒュドラ―は、変幻自在に武器を変えるため、接近戦では最強クラスと言われている。

弱点は武器の大きさに制限がある事。

コート以上の質量の武器は作れず、最大限使うと鎧ともいうべき服が無くなってしまう。本来は服を着て使用するのだが、彼はお金がないという理由で、パンツ姿で戦う。

その真意は……?



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