短編「くりすますくーる」
年末特有の言い知れない焦燥感に悩まされながらも、駅前はクリスマス特有の鮮やかに彩られたイルミネーションが光り輝いていた。
そんな世の中浮足立っているこの時期なのだが、身近にも1人浮足立ち過ぎている奴がいた。
「どうだ、似合っているか?」
目の前には、ふかふかのニットワンピース、赤いニーソックス、サンタクロースを意識したエプロンを付けた完璧美少女が居た。
「非常に似合っているんだが、なぜ家にいるんだ。」
「もちろん、今日はクリスマスだからな。大切な人といるべきだろう?」
「家にいる部分の答えになっていないぞ。」
「鍵なら事前に作成しておいた。」
「待て待て、どこに作るタイミングがあった。」
「あまり硬いこと言わないでくれ。
私に対して硬くするのは一部で良いんだぞ。」
「そんな露骨に胸元を寄せるな、あっさり下ネタを言うんじゃない。」
「別に私はどこを硬くするとは言っていないぞ。」
「それは分かった。そしてなぜ家に来た。」
「さっき言ったと思うが、大切な人と過ごすべきだろう?」
「お前まだ高校生だろう。俺みたいな社畜の相手してないで同年代の男と遊びに行って来いよ。
お前みたいにかわいい子ならクラスの奴らが放っておかないだろう?」
「君にかわいいと思われているようで私は非常にうれしいのだが、同年代よりも君が良いのだ。
クラスメイトの誘いはすべて君のために断った。」
「そ、そうか。」
サンタ娘が仕事用の鞄をひったくるように持ち去る。
「玄関で立ち話もなんだし、食事ができているんだ。来てくれ。」
「まったくいつも強引なんだおまえは・・・。」
「君は強引に行かないとついて行かせてくれないからな。」
「はぁ、とりあえず腹減ったしもらうかな。」
「ちなみにデザートは私だぞ。」
「いらん。」
「まったく冗談の通じない男だな。」
「冗談じゃないだろう、真顔で言いやがって。」
「ばれていたか。」
「あぁ飯の前に渡しておくか。
ほら、クリスマスプレゼントだ。」
「・・・。」
「なぜそんなハトが真顔で豆を打ち付けられた顔をしている。」
「どうして、クリスマスプレゼントを君が用意している?」
「お前のことだからどうせ明日あたり来ると思っていたからな。」
「あ、ありがとう。開けても良いか?」
小さな箱の中には、シンプルだがかわいらしい腕時計が入っていた。
「お前この間、腕時計が動かなくなったって言ってただろ?」
「覚えていてくれたのか。君というやつは、どれだけ私の気持ちを揺さぶってくれるのだ。
今日は寝かさないからな。」
「いや、ちゃんと帰れ。送っていくから。」
「残念だが、家には誰にもいないし、家も、君の両親の許可も取っている。」
「外堀完璧かよ・・・。」
「もちろんだとも。それにご飯を食べたら私からも渡したいものがあるんだ。受け取ってくれるか?」
「お、何かくれるのか?」
「あぁ、期待していてくれ。」
鞄にちらりと見えるのは、ラッピングされた袋と薄い封筒、小さいカラフルな小箱なのだが、
とりあえず今は見なかったことにしよう。
そうして、素直でクールな女の子のクリスマスは過ぎていくのでした。
「あぁそうだ、言い忘れていた。
メリークリスマス。」
今年のクリスマスは三連休でしたね。
皆様いいクリスマスはお過ごしですか?
あ、ちなみに私は25日お仕事デス。
サンタさんはお仕事を持ってきてくれました。