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素直でクールな彼女  作者: わほ
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短編「流れ星くーる」

今日(2017年12月14日)はふたご座流星群が見えます。

今からでも見てみてはどうでしょうか?

寒いので風邪には気を付けてください。

お風呂に入り頭を乾かしていると、隣に住む幼馴染からスマホへ連絡がきた。

『これから空いてるか?』

『空いてるよ。』

返事はすぐに返って来た。

『すぐに行くから外に出られる服に着替えて待っていてくれ。できるだけ暖かい服が良い。』

やれやれ、またいつものクゥの思い付きだろうと思いつつも大人しく衣装ケースを漁る。


10分程度した後ケータイが鳴った。

玄関にいると一言言うので、扉を開くとモコモコと厚着をしたクゥが少し大きめの荷物を持ち玄関には立っていた。

「いくら何でも着こみ過ぎじゃないか?」

「いや、カズ君もこれぐらい着るべきだ。着替えなおすと良い。」

玄関から部屋へとずかずか上がる彼女に遠慮と言う言葉は無かった。


手馴れた様子で彼女は服を用意すると、最後にポケットからカイロを出す。

「これは君の分だから持っていると良い。それじゃあ行くぞ。」

「行くのは良いんだが、どこに行くんだ?」

「裏の神社に上るぞ。」

「え?今からあの強烈な階段を上るか?!」

「あぁそうだ。行くぞ。きりきり歩くんだカズ君。」


しばらく歩くと神社へと続く長い階段が目の前に続いていた。

用意の良いクゥがライトで道を照らしながらズンズンと進んで行く。

「なぁ。そろそろなんで神社に行くか教えて貰っても良いか?」

「そうだな、今日はふたご座流星群が見れる日なんだ。」

「へぇ。流星群か。本当に見えるのか?」

「今日は新月に近く、雲もない。気温は低く絶好の天体観測日和だよ。」

「なるほどなぁ。だからこれだけ着こませたのか。」

どうやらしばらくこの寒空の下にいる気らしい。

だいぶ歩くとようやく神社の境内が見えてきた。

境内へとやってくると、階段にシートを引きレジャー向けの折り畳みクッションを二つ取り出した。

「さて、天体観測と洒落こもうかカズ君。」

「まぁここまで準備されちゃ仕方ないか。」

二人並んで座ると、クゥはブランケットを取り出し膝へとかける。

「暖かい紅茶も入れてきたが飲むか?」

「いやまだ喉は乾いてないな。」

「そうか、お菓子もあるが大丈夫か?」

「お前どんだけ楽しみだったんだ?!」

「そりゃ君と流れ星を見るんだ。楽しみにしないわけがないだろう。」

彼女の物言いはいつだってストレートで、好意を十分すぎるほどに伝えてくれた。

いつだって顔を赤くするのは自分だった。

「まったく、お前は。」

仕方ないなぁと思いながら少しだけ距離を詰めることにした。


しばらく、空を二人で眺めているとだんだんと目が暗闇に慣れてきて、

星々が煌めき始めるように満天の星空が世界に広がっているようだった。

「きれいだな。」

自然と声に出していた。

こんなことを言うのはいつだって彼女なのだが、こんな時はまぁ俺が言っても良いのだろう。

横を見ると、クゥは真剣な表情で夜空をじっと眺めていた。

暗闇に慣れた目は、暗い中でも彼女の表情が見え、夜空と同じ黒髪と少し大きめの瞳が夜空の星を映しこんでいるようで、思わず「きれいだな。」とまた言ってしまった。

「そういうことは星を見て言ってくれないと困るな。そろそろ流れ始める時間のはずだから見上げた方が良いぞ。」

自分の言ったことが少し気恥しく、慌てて空へと視線を移す。


「流れた。」

「見た。すごいな、俺こんなにはっきり流れ星見たのは初めてかもしれない。」

「あぁ。私も初めてだ。」

「おぉ!また流れたぞ!」

「あっちにも流れたぞカズ君。」

二人して流れ星が見えるたびに指差し、笑い合う。

いっぺんに二つ流れることもあればしばらく流れない時もあった。


クゥは温かな紅茶に口を付け「本当にきれいだな流れ星。」と声をこぼす。

「そうだな、今日はありがとうな連れてきてくれて。」

こんなにゆっくりと夜空を眺め楽しい時間はきっとクゥと一緒じゃないと味わえないのだろうと思った。

こいつはいつだって突然で、真っすぐで、何をやるにもそつなくこなす。

「お前はなんで俺と居て楽しいんだ?」

「おかしな事を聞くねカズ君は。」

「いやだって、別に俺に良いところなんてないだろうに。」

「私に君の良いところをしゃべらせたら一晩じゃ終わらないけれど良いのかい?」

「一回聞いてみたい気もするが、やっぱりやめておく。きっと恥ずか死ぬ。」

「いや、一つだけ言わせてくれ。君は私の事を大切にしてくれるだろう?それはとても私にとって居心地が良いんだ。これからも側にいさせて欲しい。」

こいつはいつだってこうだ。

「クゥがいたいなら俺はクゥの居場所になるよ。」

「ありがとう。」

クゥの頭が肩口へコテッと乗ってくる。

彼女なりの照れ隠しなのだろう。


「流れ星止まらないな。クゥ。」

「そうだねカズ君。願い事を何かしないとと考えていたけれど、私は今すごく満たされていて幸せだ。」

「じゃあこの幸せが続くように願っておくかね。」

ブランケットの内側でそっと手を握り、星空に溶け込むように二人の姿もまた並ぶ星座にように睦まじく溶け込んでいった。


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