第82話「本物」の不可視暗殺者(インビジブルキラー)降臨wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
その時だった。
魔法陣の向こう側…
遠くの暗闇からゆっくりと何かが歩いてくるのが見えた。
「ケラケラポー♪…ケラケラポー♪…ケラケラポー♪…」
小さな感情が全くこもっていない歌声が聞こえる…
それは今まで聞いたあらゆるオカルト系の映画やアニメとは比較にもならない「本物」の呪いの歌だった。
めっちゃ戦慄!!!「本物」の恐怖に襲われて身動き取れないんですけど!!!!
あとなんかそれ微妙に間違ってるから良いんだけど、歌詞はめっちゃ心臓に悪いからやめてくれないかなあっ!!!!
そして魔法陣の手前でその影がゆらりと立ち止まった。
「あ…天使さん…」
その影は間違いなく天使さんだったんだけど、僕はそれ以上何も言うことができなくなった。
そこには赤いネコのキグルミを着た天使さんが全くの無表情で立っていたのだ…
もう心の中で突っ込む気力すら残っていなかった。
新たなる「本物」の力が、僕の心を完全に侵食し始めていた…
「差身君、ゲットだぜ、イエイ」
天使さんは無表情で右手を突き出したかと思うと、足を踏み出しながらグイッと腕を力強く曲げた。
おい…天使…おまえ、なに混ぜちゃってるのよ…
そのアニメ界の両翼をなに混ぜちゃってるのよ…
赤いネコのキグルミから顔が出てるのはわかるけど、耳のところからツインテールが出てるのは誰が仕込んだの?!
それかわいいけど、別に無理に出さなくても良いんじゃないのかな!!!!
それ以上にもっと指摘しないといけない所が山程あるんだけど、もう頭がいっぱいいっぱいで何も考えられないよ!!!!!!
まさに沙織が言っていた通り「ツインテールの子ネコ」がやってきたわけだが、特に果物ナイフとかは持ってる様子もなく、天使は手ぶらだった。
ああ、良かった。後ろから刺しに来るかと思ってたけど、どうもそういうわけではなさそうだな。
でも凍りついた人形のようだった天使から、ちょっと人間味を感じることができたかも。
どういうつもりで天使がこんなことしてるのか分からないけど、これはお互いを知る良い機会なのかもしれないね。
「天使、どうしたの?こんな夜遅くに?」
僕が話しかけても天使は表情を変えずに僕を見つめていた。
それは天使が僕に何かを訴えているように見え、でも天使が何を伝えようとしているのかは全くわからなかった。
「差身君をゲットしに来た」
感情が読み取れない小さな声で天使はつぶやくんだけど、その予想外の返事を理解できず僕は凍りついた。
「ゲットってなんだ…」
「沙織が言った。差身君を殺したら差身君を私にくれるって」
え?沙織がそんなこと言ったのか?
あいつなんでそんなこと言い出したんだ?
「沙織のママは教えてくれた。好きだから調べる、好きだから探す、好きだから追う、好きだから殺す、これは太古から続く恋愛の基本。だから私は差身君を殺しに来たの…」
ちょっと待ってよ…それって沙織が同じこと言ってたよ…
あのわけのわからない恋愛論は沙織のお母さんが言い始めたことなの?!
天使!!!それ間違いだから!!!あの親子以外そんなこと言わないから!!!
普通は好きな人は絶対にに殺しませんからああああああっ!!!!
天使の背後に蒼い氷のような暗黒オーラが立ち上り始めた。
沙織とは違う静かで冷たい感じ。
全てを凍てつかせるような想い。
ずっと1人きりで考えあぐね、僕を殺すという「本物」の答えを出してしまった。
あの親子は答えが出せなくて色々悩んでいた天使に、とんでもないことを吹き込んで「本物」化させてしまったのだ…
「差身君…死んで…私の友達出てくるニャン…」
天使が「ニャン」のところで、無表情のまま両手首を曲げかわいいくねこポーズを決めると、天使の前にあるさっき僕が投げた石を焼きつくした魔法陣が光り始めた。
蒼く冷たい光が魔法陣から溢れ始める。
あの魔法陣が地獄とつながったのだろうか?
魑魅魍魎ともいうべきたくさんのおぞましい声が魔法陣から聞こえてくる。
ゆっくりと浮かび上がるように、絶対にこの世の中には存在しない生き物が姿を現し始めた。
犬のような生き物なんだけど、真っ赤でどう見ても普通の犬の数倍はある。
僕が見上げるくらいでかい犬なんてこの世の中に存在するわけないんだけど!!!!!
あかん…あかんやつですよ…
天使…いまさらなんですけど、あなたは魔法使いかなんかなんですかね…
「冥界の番犬ガルムよ…ラグナロクは終わったが、また解き放たれる時が来た…契約しよう…差身君を殺せばおまえは自由になる…頑張るニャン…」
天使が「ニャン」のところで両手首を曲げかわいいくねこポーズを決めると、ガルムと呼ばれたその巨大な「絶対にこの世に存在してはならない」生き物が、天使の呼びかけに応えるように天使を一瞬振り返った。
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンッ!!!!!!!」
ガルムの咆哮にこの辺一体が地面から震え上がるように振動する。
バサ!バサ!バサ!と小机城阯公園一帯の山の木々が激しくざわめく。
一瞬にしてこの平和な小机町が魔界へと変化したかのようだ。
ガルムは僕に視線を向けると、すぐにでも飛びかかれるようにその姿勢を低くし力を溜め込んだ。




