第21話「本物」の神隠しwwwwwwwwwwwwwwww
あの「本物」の地下室であった「本物」の事件。
僕は運転が得意なコブに沙織と一緒に家まで送ってもらった。
何だか沙織がタイ語と思われる僕が全く分からない言葉でコブと車の中で話してたんだけど、沙織は僕を送ると家に帰らずコブとどこかへ行ったようだ。
あの「本物」の入学式の時以上に頭が狂いそうになっていた僕は、そのままうなされるように眠り込んだ。
翌日、僕は寝坊して学校を遅刻した。
どういうわけか沙織は僕を迎えに来なかったんだけど、沙織も少し遅刻してしまったようだ。
そりゃあれだけのことが起これば遅刻くらいするよね…
僕はもう早くこの狂った「本物」の現実から逃げ出したいよ…
ところが昼休みくらいになると「本物」の不穏な噂が流れ始めた。
沙織に嫌がらせを続けていた佐藤さんが行方不明になったというのだ。
夜は自分の部屋で寝ていたはずの佐藤さんが朝になっても起きてこないので、佐藤さんの親が起こしに行ったところ、部屋に佐藤さんの姿はなかったという。
そして慌てた佐藤さんの親が学校や佐藤さんの友達に連絡しまくり、この生徒数が少ない僕達の学校中に佐藤さんの謎の失踪があっという間に広まったのだ。
みんなが佐藤さんのことを口々に話すんだけど、僕はそれを聞いてすぐ犯人が誰なのか分かってしまった…
その犯人が佐藤さんをどこに隠しているのかも…
間違いない…ついに絶対にあってはならない恐ろしい「本物」の事件が起こってしまった…
昼休み、一緒にお昼ごはんを食べようと、僕の教室に現れた沙織を誰もいない校舎裏に連れて行った。
沙織は素知らぬ顔で病んだ笑みを浮かべていたが、僕は周りに誰もいないのを確認してから沙織に向き直った。
「おい!沙織!佐藤さんをさらっただろ?」
僕がそう沙織に強く言ったんだけど、沙織は動揺するどころか全く気にもとめない様子だった。
沙織は凶悪な病んだ笑みを浮かべ、僕をことを見透かすようにまっすぐ見つめていた。
「ん?wwwwwwwwwwwwww差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwww何の話だ?wwwwwwwwwwwwwwwww共産圏の国にでも拉致られて喜び組にでもされたんじゃないのか?wwwwwwwwwwwwニャンパス?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「ニャンパスの穴だろ!沙織!お前が佐藤さんをニャンパスの穴に落としたんだろ!」
「ああああっ!wwwwwwwwwwwwそんな証拠どこにあるんだ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwたとえ私が佐藤若菜ちゃんを拉致ってニャンパスの穴にたたき落としたとしても何の罪に問われるんだ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwニャンパスの穴罪という罪にでも問われるのか?wwwwwwwwwwwwwwwwwそんな法律民事でも刑事でも聞いたことないなあwwwwwwwwwwwwwwwww」
「沙織、法律なんか関係ないんだ!やって良いことと悪いことがあるんだ!」
「ずいぶん佐藤若菜ちゃんの肩を持つんだなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあいつは差身が私と付き合っているから嫉妬してひどい嫌がらせをしてくる悪いやつだwwwwwwwwwwwwwwwそんな奴はこの世からニャンパスされても神様も許してくれるwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はちょっと怒ったような目つきで語気を強めた。
少なくとも沙織の中では、佐藤さんは僕に気がある最も危険な人物だからな。
沙織の気持ちもわかるんだけど、このままだと何かある度に先生や生徒、いや…これから沙織と会う全ての人達がニャンパスの穴に落とされてしまうかもしれない。
それに沙織は嫌なことがあると、目の前から嫌なものを消してしまいたくなるところがある。
これは改めさせないといけない。
多少は我慢したり、融通を利かせたり、うまく立ち回れるようにならないといけない。
何の苦労もしないで育ってるから、そのあたりの能力がないに等しいんだよね。
「沙織、それでも駄目なんだ。この世の中には自分と考え方が違う人達がいっぱいいるんだ。正しくないことをしてる人もいっぱいいる。だけどそれが本当の世界なんだ。何を考えてるのか分からないみんなとバランスを取ってうまくやっていかないと駄目なんだ。自分と世の中は同じじゃない。別なものなんだよ。だけどみんなと協力していかないといけないんだ」
僕がそう言うと沙織は急に悲しそうな病んだ目になり、僕にすがるように僕の両襟を掴んできた。
「差身は私がこんなに酷い目にあってるのに平気なのか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww何も悪いことをしていない私をかばってくれないんだ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織が声を震わせながら目に涙を浮かべ始めたので、僕は優しく沙織を抱き寄せてあげた。
沙織も佐藤さんの嫌がらせが続き、ずっと辛かったのを我慢していたのだろう。
「そんなことないよ。沙織のことを1番心配している。お前は僕の彼女なんだから」
しばらく沙織は僕の胸に顔を埋めていたが、そのうち嬉しそうに病んだ笑みを浮かべながら僕を見上げた。
「そうかwwwwwwwwwwwwwwww私のことを好きなら良いんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww哀れ佐藤若菜ちゃんの恋終了wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身は私だけのものなんだwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はそう言うと安心したように、また僕の胸に顔をうずめてぎゅっと抱きしめてきた。
沙織が辛そうにしているのは僕も嫌なんだけど、沙織も少し強くならないといけない。
僕が沙織のそばにいて助けてあげないとな。
僕達を春の優しい風がくるむように包んでは消えていった。