第144話「本物」の水着回③wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
めっちゃ嫌な予感がしたんだけど、恐る恐る僕の背中を踏んでいるのが何なのか振り返ってみると、天使がいつも通りの無表情で僕を見下ろしながら踏みつけていた。
おかしいなあ…全く人の気配なんかしなかったのに…
僕の「死亡フラグ回避センサー」も天使には反応しなかった。
天使の右手には電撃で相手を倒すテイザーガンが握られてるのに。
いつの間に近づいてたんだ?!
「あれ?天使、いつの間にこんなところに」
僕が声をかけると天使はじっと僕を見たまま動かなかったが少し経つと話し始めた。
「さっきからずっといた。差身君は私が近くにいても気がつかないことが多い」
「そ、そうなのか?あの、何で僕の背中踏んでるんだ?」
「差身君が楽しそうに移動してるから踏んだ。死にそうになるとイキイキする。特殊な性癖」
天使は小さな声でそう呟くと、僕を踏みつけたまま両手首を曲げ猫ポーズを決めた。
「差身君…私、第一夫人になるニャン…」
理性を感じられない天使の無機質な「本物」の目!
鳥のようなその目は僕を確実に捉えていた!
天使は見えない誰かに向かって猫ポーズをアピールすると、ゆっくりと僕にテイザーガンの銃口を向けた。
アカンやつ!アカンやつですよ!
間違いなく天使は躊躇なく僕を撃つんだろうね!
あなたは間違えているんですよ?
銃で撃つと人間の心が手に入るなんてことは絶対にないのです。
だいたい僕が死んじゃったらどうするのよ?
それ撃ったらまずいことになるってどうしてわからないんだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
「天使!じゃ…一緒にやろう!一緒に清城京の銃弾から逃げよう」
僕が天使の手を引っ張り地面に伏せさせると、天使は無表情のまま顔を赤らめた。
「えっ…」
天使は地面に伏せたまま僕を見つめていた。
清城京の放つ凶悪なワルサーWA2000の銃弾が頭をかすめていく。
僕には天使が何を考えているのかわからなかったんだけど、どうやら僕を殺すことはなくなったようだ。
「いいの?」
「もちろんだよ!早く伏せないと清城京に撃たれちゃうよ」
「わかった。でも私、銃弾には当たらない。あらゆるものが私を素通りしていく」
そのまま清城京の銃弾をかいくぐりながら、天使と歩伏前進でジャングルを進んだ。
進みながら天使はどこか楽しそうに「ニャンニャン…ニャンニャン…ニャンニャン…」と繰り返していた。
でも僕はいつまた天使が僕を殺そうとするか気が気じゃなくって、顔は笑いながらもめっちゃ天使の動向に注意していた。
しかし、急に天使の姿が違和感のある物音とともに消えた。
「ニャーーーーーーーーーン」
まるで他人事のような叫び声を上げながら、天使は空中に飛んで行くように引っ張り上げられていった。
あっ!これは沙織の得意なブービートラップ!
「本物」達に壊された僕の家の周りにもよく仕掛けられていたんだよな。
天使はロープか何かで空中に吊るされたんだろうけど、こう鬱蒼としたジャングルで罠を仕掛けられると全然わかんなくって逃げ切れないよね。
すると近くの茂みから見たことのある人影がガサガサッ!と飛び出してきた。
あの病んだ目つき、M16-A4、間違いない!沙織だ!
沙織が僕を殺しにやってきたんだ!
「やった!wwwwwwwwwwwwwwwww差身捕獲成功!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww若菜ちゃんと金髪リボンの位置からしていずれこの辺に逃げてくると思っていたんだよなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は僕には気がつかず、罠にかかった天使を確認に向かった。
ここしかない!僕はめっちゃ死ぬ気でジャングルの奥へと走り出した。
「あれ?かかったのはツインテールwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあっちか!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
すぐに罠に僕がかかっていないのに気がつくと、沙織は僕が逃げていった音が聞こえていたのだろう、僕の逃げた方に向かってM16-A4を連射し始めた!
ズバババババババババババババババババババババババ!!!!!!!!!!!!
若菜ちゃんのミニミ軽機関銃に比べると発射速度が遅いが、それでも人を1人蜂の巣にするには充分だ。
思ったより遠くに逃げたのに気がついたのか、沙織は今度はスナイパーライフルのようにM16-A4を撃ち始めた。
ズババッ!!!…ズババッ!!!…
様々なシチュエーションに合わせて使い分けができるM16-A4。
銃身変えれば砲撃もできるし、スコープもレーザーポインターも設置可能。
あらゆる局面に柔軟に対応できるM16-A4。
沙織という「本物」の殺戮マシーンが喜びそうな銃だよね!!!!
必死に逃げ惑う僕の頭の中に、沙織が渡したきたダイバーウォッチ経由で沙織の声が聞こえてきた。
「おい!!!差身!!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこれで逃げられたと思ったら大間違いだ!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私から絶対に逃げることなどできない!!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww震えろ!!!wwwwwwwwwwwwwwww死に怯えろ!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww『私のことを忘れないように24時間怯え続けろ!!!!!!』wwwwwwwwwwwwwwwwwww」
はい!出た!沙織の決めセリフ!
刻まれたよ!一生忘れることができない傷が心に刻まれたよ!
「本物」が1人増える度にその狂った力が自乗され増えていく『本物少女』の定理」が爆発してるよ!
まさに魔法少女が増える度に力を増すのと同じ。
「本物」が4人!16人分の沙織に僕は追われてるのに、よくまだ死なないでいるよ!
自分で自分を尊敬するんだけど!
それからずっと逃げ回った。
あいつら「本物」達は容赦なく僕を殺しに来た。
陽がかなり落ちかけた頃、僕の体力は完全に尽きた。
あいつら運動とか苦手なくせに、こういう時は無限の体力を発揮するからな…
もう死んでもいいや…
僕は立ち止まり座り込むと、後ろから誰か歩いてくる音がした。
「差身wwwwwwwwwwwwwwwwww死ねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
1撃の銃声音共に、僕のヘルメットに付いていた風船が割れた。
そして身動きできなくなっている僕の背中に沙織が抱きついてきた。
沙織がわけのわからないことを喚きながら嬉しそうに騒いでいる。
終わった…やっと終わったんだ…
大きな太陽がジャングルの向こうの水平線へ沈んでいく。
こうして「本物」の「南の島ツアー」1日目が終わろうとしていた。
その夜のこと。
僕はみんなとご飯を食べたりして、自分の泊まってる海上コテージに戻りベッドに倒れ込んだ。
疲れた…もう寝よう…
しかし、まだ終わってはいなかったのだ。
全く身動きできないくらいになっている僕の上に、10年以上ずっと感じていた感覚が乗っかってきた。
沙織だ…この感覚は間違いない…
僕はゆっくり目を開けたんだけど、やっぱり僕に抱きついていたのは沙織だった。
「ニャンパス争奪戦に勝ったからニャンパスは私のものになったwwwwwwwwwwwwwwwww差身の離れに忍び込む権利を獲得wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwなあ差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私はもっと溜めておくつもりだったんだがもうそろそろいいのかもしれないなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織が病んだ笑みを浮かべてながらそう言ったんだけど、何故か沙織は下着だけで服を着ていなかった。
沙織の美しい体があらわになる。
沙織のパパの言葉を思い出していた。
沙織は着痩せするタイプだからベッドでも良いって…
見慣れた沙織に、僕はめずらしく緊張感を抱いていた。
「いいかもしれないって?」
「もうしようと言っているwwwwwwwwwwwwwwwwwこんなに美しい学校がない世界で差身と2人きりwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwここから全てが始まるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww『差身補完計画』wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身は私とセックスしたくないのか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織の口からセックスという言葉を聞いて、かなり動揺して頭の中が動かなくなった。
沙織はそういうことを考えていたんだという驚きと、急にリアルな現実が襲ってきたような感じだった。
「沙織…それは…」
僕も僕でなんと返事したら良いのかわからなくって、でも自分でどうしたいのかも判断できなかった。
「差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwww私は差身が襲ってきてくれるのを待っていたのかもしれないwwwwwwwwwwwwwwwwwいつも私ばかりが差身を襲っているのにだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwでもそれでもいいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身と今セックスしたいんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
身動きできなくなってる僕の服を脱がし始める沙織。
闇夜に薄っすらと女神のような沙織の姿が揺らぐ。
沙織の「本物」の目は美しく潤んでいた。