第14話「本物」の沙織のクラスへwwwwwwwwwwwwwww
そして沙織を見ていた全員の視線が一斉に僕に集中した。
なんですか、そのすがるような目つきは…
ああ、これは…みんなの期待を感じる…
沙織を連れて来るしかなさそうだな…
これからは沙織も色んな人達と話せるようになった方が良いから、これは調度良い機会なのかもしれないな。
僕はみんなに「ちょっと待ってくれ」というジェスチャーをした後、廊下で硬直し小刻みに震えている沙織の所へ歩いて行った。
沙織のそばに行くと沙織はおろおろした様子で僕の襟を両手で掴み、「もう駄目だ」と言わんばかりに涙目で首を横に振った
「差身wwwwww私のことを忘れていなかったか?wwwwww何ですぐに迎えに来てくれないんだ?wwwwwwwwwww」
半分泣きそうな顔で病んだ笑みを浮かべながら沙織は弱々しくそう言った。
見知らぬ人だらけの僕のいないクラスに、かなりのダメージを受けたのかいつもより「w」の数も少ない。
僕はあまりにも弱り切っているので何だかおかしくなってしまい、笑いながら1人で頑張った沙織の背中を軽く叩いた。
「ごめんごめん。うちのクラスのやつらが沙織と挨拶したいんだって。沙織もうちのクラスに遊びに来ることになるんだから、ちょっとうちのクラスに寄ってから帰ろう」
僕がそう言うと沙織は弱った顔でしばらく僕を見ていたが、下を向き少し考え始めた。
「そ…wwwそうだな…wwwwwwwwwwしばらく差身のクラスに通い妻をしなくてはならないwwwwwww嫁の務めを果たさねばwwwwwwwwwww」
沙織は顔を上げると病んだ笑みを浮かべながら仕方なさそうにそう言った。
おお…沙織にしては積極的なことを言い出したのでちょっと驚いた。
てっきり嫌だと言って逃げ出すと思ったんだけど、沙織の中でも少しずつ何かが変わりつつあるのかもな。
「差身wwwwwwwあとでうちのクラスにも来てくれないか?wwwwwwwwwwwww親切そうなビッチが話しかけてきてくれたんだが何を話していいかわからないんだwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は潤んだ目で僕を見ながらおねだりしてきた。
いつもと違ってめっちゃ素直な感じでドキッとしてしまう。
こんな風にたまに沙織が超絶かわいく見える時があるんだが、普段は闇を放出し続けてるからその闇が薄れるとそんな風に見えるんだろうな。
でも沙織が言ってきたことは大変良いことだと思う。
沙織が僕以外の人達と関わりを持とうとするなんて今までなかった。
こういうのは大事にして、芽を育ててあげないとな。
沙織の世界を広げてあげなくては。
「ああ、じゃあ、あとで沙織のクラスに行こう」
僕がそう言うとよく褒めてもらった小さな子供のように、沙織はパッと輝くような病んだ笑みを浮かべた。
「ありがとう差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwwこのままでは全員殺してしまうwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身と一緒にいれなくなるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織がキラキラした病んだ笑顔で何か不穏な発言をしたような気もしたが、僕の心が崩壊してしまうのでそれは聞かなかったことにした。
あの事件を経験しても残ったクラスメイトが全員殺されて、沙織だけが生きていたらどうやって誤魔化して良いのか分からないよ…
いや…どう考えても沙織は捕まった方が良いんだよな…
日本の警察が沙織を捕まえることができるのならね!!!!!
沙織と一緒に僕のクラスに入って行くと、さっきまで騒いでいた奴らが凍りついたように固まっていた。
おい、あれだけ騒いでたのに、沙織を目の前にするとこれかよ…
まあでもこれくらいの方が、沙織も怖くなって暴れだしたりしないし調度良いのかもな。
沙織がクラスの中を1歩歩くごとにクラスが華やいでいく感じすらする。
さすが沙織。雰囲気を一瞬にして一変させてしまう。
何というか確かに普通の人達とは、持ってるものが違うんだよな。
でも良く見るとかなり病みに病みきっている「本物」の中の「本物」なんだけどね。
沙織をみんなの前に立たせると「沙織、何か挨拶しよう」と声をかけた。
沙織は「ああwww」と緊張した面持ちで頷くと、ガチガチなまま病んだ決め顔でみんなを見た。
みんなは沙織の「自然(略)魔法」にすっかりかかりまくっていて、脳内変換された沙織を見ているから、沙織がめっちゃ緊張してるのに、ゆったりと女神が微笑んでいるようにしか見えてないんだろうな。
みんなが固唾を呑んで沙織の第一声を待っていた。
沙織がかしこまった様子で「ごほんwwwwごほんwwww」と咳払いをすると、僕の方を「いくぞwwwww」という感じで病んだ笑みを浮かべながら頷いた。
そして大きく深呼吸すると、改めて病んだ決め顔で沙織を取り囲むみんなを見た。
「はじめました…wwwさ…さお…さおりゅwwww沙織でしい…wwww」
それは何日間声を出していないんだという感じの声だった。
考えてみたら家族と僕以外と話すのなんて何ヶ月間もなかったかもしれない。
小さくどもって何を言ってるのか分からない聞き取りづらい話し方。
沙織は危なっかしい「本物」の挨拶をした。
あーあ、もっと元気良く話せば良いのにと思った。
しかし、そんなことは一切関係無かった。
沙織の生まれ持った「本物」の力は、沙織が「本物」であることなど吹き飛ばしてしまった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
ドーーーーーンッ!と色めき立ち興奮する取り囲む男子。
恐ろしい脳内変換。完全に沙織に惑わされていやがる!!
今、沙織を取り囲んでるやつらに見えているのは、最高の女神がみんなに微笑みかけながら優しく語りかけているような感じなのだろう。
自分の彼女ながら恐ろしい。
沙織は全く僕以外の男に興味がないどころか、男性全般を怖がっているようなところがある。
でも実際には何の気なしに「自(略)魔法」で全ての男を洗脳していく。
まあいいか。これで少しはこのクラスにも馴染んだわけだし最初はこんなものだな。
「さ…さお…沙織様…沙織様のご趣味はどのようなものなのでしょうか?」
かなり緊張した感じでさっきから露骨に震えていたやつが、恐る恐る手を上げながら沙織に質問をした。
沙織はそれを聞くと病んだ笑みを浮かべながら何度か頷いた。
「ああああwwwあの…あのう…にゃ…にゃ…ニャンパスなど少々wwwwwwwww」
沙織はちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめもじもじしながらうつむきそう言った。
おい!バカ!!!!
ニャンパスって言っても分からないやつの方がいっぱいだろ?
やばいな、なんか不穏な印象でも与えちゃったかな?
しかし、僕の心配は杞憂に終った。
どうやらみんな沙織の言っていることなど、ほとんど耳に入っていないようで、ぽわわわわわあああんと沙織をとり憑かれたような目で見ているだけだった。
「ニャンパス…ニャンパス…ニャンパス…ニャンパス…ニャンパス…ニャンパスが趣味…ニャンパスニャンパスニャンパスニャンパス…」
質問したずっと震えているやつも、多分意味はわかってないと思うんだけどずっとニャンパスニャンパスと繰り返しつぶやいていた。
「ああじゃあ、沙織のクラスに行ってくるので…」
今しかない、逃げるぞ。
僕は荷物をまとめるとさっと沙織の手を引き一緒のクラスを出た。