第13話「本物」の高校生活終わりの始まりwwwwwwwwwwwwwwww
時間はかかったが何とか沙織を沙織のクラスに入れると、僕も自分のクラスに入った。
本当に沙織の駄々っ子のような引き伸ばしには困った。
しかもただの駄々っ子ではない。
15歳にして主にアニメの世界で生活している「本物」の駄々っ子だから手に負えない。
沙織にとってリアルな社会は別次元であり恐ろしい世界なのだ。
さっきはめっちゃ周りから見られていた気がするんだけどそんなこと構っていられない。
今度こそちゃんと高校生としての第一歩を踏み出すのだ。
ここまで来てまた帰宅し、沙織の家でのんのんびよりを見るわけにはいかない。
これ以上あんなぬるま湯につかっていたら「本物」の廃人になってしまう。
しかしクラス毎のオリエンテーションは30分もかからずあっさりと終わり、担任の先生は僕達に危ないから早く帰るように促し逃げるように出て行った。
とても新入学生に対するものではない。
こっちがやる気になっているのに全くもって酷い話だ。
しかし、あれを経験してもこの高校に通学することを選んだ「本物」達が集まっているだけあって、誰1人として帰るやつはいなかった。
みんな新しい学校生活が楽しみだったのか何も気にせず適当に遊んでる。
登校中は周りを警戒していたやつが多かった気がするんだけど、だんだんそんなことも忘れて楽しくなってるんだろう。
もう「また学校が爆破されるのでは?」とか考えてないんだろうな…
さっきも先生が話してるのに、「本物」過ぎてどいつもこいつも先生の話なんて全く聞いていなかった。
それは先生に反抗するために大きな態度をとっているのではないのだ。
多分あまり物事を考える能力がないだけで悪気はない。
でもこれくらいじゃないと、この学校に残るわけないんだよな。
「よお、外でお前にべったりだったやつ、お前の彼女なのか?」
隣の席のやつが先生が出て行ってすぐに神妙な顔でそっと僕に話しかけてきた。
ああやっぱり当たり前だけど見られてたんだよなあ。
別に今更沙織と付き合っているのを隠すつもりはないから、そんなこそこそ聞かなくてもいいのにな。
君もこれから沙織という「本物」に巻き込まれていくんだから覚悟しておいてくれ。
あ、ごめん!そうだった!
この間の爆破で既にみんな巻き込まれてるんだよね!!!
これからも色々あると思うから何とか逃げ切って!!!!
「ああ、そう…そうだね…」
僕はなるべく無難に返事をした。
沙織はとんでもない「本物」ではあるんだけど、育ちが良いので立ち振舞が上品だし見た目もめっちゃキレイだから普通の人からすると「まさかこの地球上にこんな美しい女の子がいたとは!!!」なんて思われ奇跡のような存在に見えるようだ。
沙織のことをしゃべりすぎて余計なことを言ってしまうと沙織が「本物」だということがバレてしまうし、場合によっては僕が沙織のことを自慢しているように思われてしまうので気をつけないといけない。
昔から沙織と一緒にいることを羨ましがられてきて、その弊害も結構あったので僕は沙織のことを聞かれるとつい慎重になってしまう。
沙織と一緒にいたという理由だけで襲われたり、僕の私物が隠されたり、予想だにしない嫌がらせを受けたりしたこともあった。
沙織にその気は全くないんだけど、沙織という存在が色んな男を狂わせていく。
まあでもしばらくするとそういう「本物」の「僕は何にも悪いことをしていないのに僕が攻撃される理不尽な事件」はピタリとなくなる。
それ多分、沙織がなんかやったからじゃないのかなあ?と考えているのだが、誰に聞いても教えてくれないから真相は謎のままだ。
「凄いな!あんなキレイな人初めて見たよ。どこで知り合ったんだ?」
「幼馴染みなんだ。凄い人見知りだから仲良くしてあげて」
「なんだって!!!!紹介してくれよ!!!!」
「うん、分かった。良いんだけど物凄い人見知りだから最初は優しくして欲しいんだ」
「大丈夫!!大丈夫だから!!!!!俺、もう超優しい!!!!!任せてくれ!!!!」
そいつは沙織とよほど知り合いになりたいのか、めっちゃ興奮しながらそうアピールしてきた。
お互いよく知らないのに最初から沙織を紹介してくれという話をしている。
ああ…これもいつも通りだな。
みんなが沙織に驚き、沙織のことを直接沙織に聞かずに僕に聞いてくる。
これも仕方がない。沙織の持って生まれた「自然に湧き上がる。男を狂わせ沙織のためなら人すら殺しかねない状態にする魔法」という特殊能力のせいだからな。
これって沙織がその気になれば、沙織が女王に君臨する王国ができる気がする。
沙織のことを話してたらみんな沙織のことがめっちゃ気になっていたのか、だんだん僕の周りに人が集まってきた。
めっちゃ興奮してる男子に囲まれている男子の僕。
僕が襲われてしまいそうな気すらしてくる。何だか不思議な気分だ。
若干モテる女の子が男子に怯えるシステムが理解できる気がする。
「あの方は日本人なのか?どこの国の方なんだ?」
「名前…名前はなんて言うんだ…」
「何歳?何歳なんだ!!!???」
「どこのクラス?好きなものは???」
「ずっとこの学校に通うんだよな?!」
色んな奴が矢継ぎ早に僕に沙織について質問してきた。
みんな沙織の見た目に騙されて、沙織が女神以上の何かに脳内変換されてるんだろうな。
自分もそうではあるが、男は馬鹿だと思う。
めっちゃキレイな女の子がいると、あっという間に虜になって我を忘れてしまう。
沙織がどんなやつだか教えてあげたいよ。
ついでに沙織を完全に引き取ってもらえたら助かるんだけどなと半分思ってみたりもする…
いいんだよ…
完全に引き取ってくれるなら…
それならそれで僕にも新しい未来がやってくるからさ…
「沙織は完全な日本人だよ。外人ぽく見えるけど」
一度に色々答えられないのでとりあえずそう答えると、「おおおおおっ!!!!!」と僕を取り囲む男子が感嘆の声を上げた。
「おおお…沙織様という名前なのか。そうか…沙織様か…」
その中の1人が特にガタガタと震えながら沙織の名前をつぶやいていた。
こいつ…何で沙織の名前を呟きながら震えてるんだ…
沙織はそんなにいいものじゃないのに…
沙織に狂う男子の中でも、多分こいつは既にかなり沙織に狂わされているみたいだ。
こういった沙織を女神のように崇める狂信者的な奴も現れる。
そのうち僕に刃物でも突きつけなければいいんだけどな。
するとそいつが廊下の方を見たまま完全に硬直した。
なんだ?と思って見ていると、震えた手をゆっくりと上げ廊下の方を指さした。
半分口を開け「うわあああああああああ…」とうめき声のような声をあげた。
「沙織様がいらっしゃる…」
そいつがそう言うと、そいつが指さしている方をみんなが一斉に見た。
するとそこにはガチガチに固まった沙織がクラスの外に立ち尽くし、僕の方を怯えた表情で見ていた。
沙織の病んだ目がまばたきひとつせずに硬直している。
沙織、颯爽と僕のクラスに登場!
一瞬にしてクラスの空気が変わった。
沙織の「自然(略)魔法」がクラスの男達を魅了していく!!!!
沙織はすぐ僕の所に来たいんだろうけど、その僕の周りにも沙織の知らない人がいっぱいいるから入ってこれないのだろう。
しかしその沙織にクラス中の男子が興奮して羨望の眼差しを向けている。
多分みんなにはめっちゃキレイな女の子がこっちを見ているくらいにしか映ってないんだろうな。
君達は沙織の「本物」の「自然(略)魔法」にヤラれてるだけだよ!!!
もう君たちも逃げられないんだからね!!!!
約束するよ!!!絶対に普通の高校生活を送ることはできないよ!!!!
終了だよ!!!しゅうううううううううううううううううりょおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
終わりだよ!!!終わりが来たんだ!!!!!
今君達が取り憑かれたように見ているものは!!!!!女神なんかじゃない!!!!!
「本物」の悪魔!!!!!終わりの始まりなんだよ!!!!!!!!!
もう「本物」の終わりなんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!