第12話「本物」の2度目の初登校wwwwwwwwwwwwwwwwww
2度目の初登校の日も晴れ渡った清々しい朝だった。
しかし何故かその日は沙織からの襲撃はなかった。
沙織は落ち着いた様子で、普通に玄関の呼び鈴を鳴らし僕を迎えにやってきた。
それに違和感を感じたんだけど、考えてみたらこれが普通なのだ。
今日は沙織なりに覚悟を決めての登校なのだろう。
僕と別なクラスになるという沙織からすると、恐るべきどうにもならない現実。
沙織は観念したように僕に寄り添いながら通学路を歩いていた。
「差身wwwwwwwwwwwwこの間よりも人数が少ないなwwwwwwwwwwwwwwwほとんど誰もいないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は僕の腕にしがみつきながら周りを見渡すと、病んだ笑みを浮かべそう言った。
沙織からすると人数が少ない方が若干気も楽なのだろう。
この間よりは安心しているように見える。
「ああ…あれだけのことが起きたら普通は転校するだろうな…」
たしかに沙織の言う通りで、この間よりも登校する生徒数が半分以下にはなっているのではないだろうか?
2度目ではあるが今年度の初登校日だというのに、この間とは違いみんな周りを警戒しながら緊張した面持ちで歩いていた。
「ウヒヒヒヒィィィひいいいwwwwwwwwwwwwwww差身wwwwwwwwwwwwww警察の装甲車も配置されてたなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwどうせ地雷とか踏んだら何千万もかけて作った装甲車も一気に吹き飛ぶのになwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwダンボールの下にでも隠しておけばあいつらは気がつかないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は警察をディスるように闇を放出させながら笑っていた。
そうなのだ。あれだけのことがあったので、警察もついに本気を出したらしい。
ずいぶん離れた所にもあちこちたくさんの警察官が立っていて、パトカーや普段絶対見ることのない装甲車など、どこの国と戦おうとしているのかと分からないくらいに配置されていた。
物凄い勢いで警戒しているのだ。
だがしかし、その厳重な警戒の中を「本物」の実行犯沙織が、堂々と全く気負うことなく歩いている。
「おい沙織。そう言う話は止めておけ。警察に聞こえたら沙織も捕まっちゃうかもしれないぞ」
あんまり不謹慎なことを言ってるとどこで誰が聞いているか分からないので、沙織におとなしくするように諭すと沙織は反省したように病んだ笑みを浮かべ頷いた。
「ニャンパスwwwwww分かったwwwwwwwwwwwwwwwまだ捕まりたくないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwでもどうせ警察も派手に警備しないと怒られるからやらされてるだけだwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「まあ、そうかもしれないけど、警察がいないと無法地帯になるんだからあんまり迷惑をかけたら駄目だぞ」
「ああwwwwwwwwwwwwwwwwwww私は警察を相手にしないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww警察とはパパが良く話し合いをしているwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
おい…今なんて言った…
警察と話し合うってなんだ?…
何だかとても聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がしたので、僕はそれを聞かなかったことにした。
学校に到着すると「本物」の悪魔沙織が残した爪痕があちこちに残っていた。
酷いものだ。どんな凶悪なテロ組織がやったのかと思うほど、無残にも破壊されていた。
応急処置をしてある場所や立ち入り禁止区域があり、校内にも警察車両と消防車救急車がスタンバイしていた。
クラス分けの名簿を見て確認すると、やはり僕は1年1組で沙織は1年3組だった。
あー、ずいぶんクラスの人数も少なくなってるなあ…
この前に掲示板で見た時は、もっとたくさんの名前が載っていた気がする。
生徒の人数も激減したので、完全に崩壊した棟は捨てて、何とか使用できる棟に全学年のクラスを集めたようだ。
「差身wwwwwwwwwwwwwなんだか巨人が学校に進撃してきたみたいだなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww我々はウォール・ローゼに撤退するwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww実写版にリヴァイ兵長を出さないからこういうことになるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は満足そうに崩壊した学校を見渡すと、僕達のクラスがある棟を指さした。
何がウォール・ローゼだよ。
あと実写版をディスるのは構わないんだけど、あんまりうちの校舎が崩壊してるのとリヴァイ兵長は関係ないんじゃないのかな!!!!
進撃の巨人に出てくる巨人達でも、どんな巨大地震が来ても絶対に崩壊しない図太い柱で建てたこの学校を、ほんの一瞬で叩き壊すのはいないと思うんだよね!!!!
沙織!!お前は巨人以上だよ!!!
あーあっ!!!!リヴァイ兵長が沙織を捕まえに来てくれないかなああああああああっ!!!
そして入学式は中止でいきなりクラス毎のオリエンテーションだったので、1年生のクラスがある階に僕達は移動した。
沙織のクラスの前まで行くと、沙織は急にオロオロし始めなかなかクラスの中に入ろうとしなかった。
「さwwwwwwwwwww差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私は恐ろしいwwwwwwwwwwwwwwwwwwこんな腐れ高校殺したいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこんな風習許されるわけがないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はガタガタしながら僕の手を握り放そうとしなかった。
それは小さな子供が親から離れてどこかに預けられる時に、親から離れまいと泣き叫ぶのとよく似ていた。
「大丈夫だよ、沙織。今日は1時間もかからないんだから。さっき先生が危ないから早く終わらせるっていってただろ?」
「怖いんだよ差身と離れるのがwwwwwwwwwwwwwwwwww絶対に私のことを忘れるなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私を忘れたら差身を殺すwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「だから大丈夫だって沙織のことは忘れないよ」
「でもこれは結婚するのに必要なことwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww将来差身の会社を爆破したらwwwwwwwwwwwwwwww差身と離婚しなくてはならないwwwwwwwwwwwwwwwwwwww昨日もパパが言っていた働かない男と結婚してはならないとwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「じゃあそろそろ行くよ。先に終わったら僕の教室の前で待ってるんだぞ」
「分かった差身wwwwwwwwwwwwwwwwwww絶対に私のことを忘れるなwwwwwwwwwwwwwwww清純派キャラに騙されるなwwwwwwwwwwwwwwwwあいつらは全員ビッチだwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「分かった、分かった。早く自分のクラスに行くんだ」
「いやwwwwwwwwwwwww待ってくれwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwもう少し時間をwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は色々話題を変えながら何とか僕と離れないように時間の引き伸ばしをしているんだけど、だんだん時間がなくなってきた。
何とか切り上げて沙織を沙織のクラスに入れないとな。
「駄目だぞ沙織。すぐ近くにいるんだから。もう自分のクラスに入るんだ」
「そうだ差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwパパが今日おいしいものを買ってきてくれると言ってたんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwww2度目の入学祝いwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「沙織はもう何を言っても駄目だ。またあとでね」
僕が沙織の手を振りほどき沙織に背を向けて僕のクラスの方に歩き始めると、僕を逃がすまいと沙織が僕の腕ぎゅっと掴み引っ張り始めた。
沙織から物凄い執念を感じる。
よほど自分1人で見知らぬ人だらけの新しいクラスに入るのがめっちゃ怖いんだろうな。
「差身いいいいいいいいいいいいいいいいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwまた会うのんwwwwwwwwwwwwwwwww忘れたら殺すからなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「だから間に合わなくなるって。沙織も自分のクラスに入らないと駄目だ」
「この国を破壊したいこの国を破壊したいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこの恐怖政治を始めた奴らを殺したいwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「そういうことしたら駄目だってパパから言われたんだろ?終わったらまた話そう」
「いやいやいやwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身もう少し待ってくれwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「だからもう行くよ。早く行かないと余計に長引くだろ」
「差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこの国は間違っているwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww次元を超えてニャンパスの世界に行きたいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はそう叫ぶと両手で僕の腕を掴み体全体で引っ張り始めた。
何が次元を超えてだよ。
お前はいつでも次元を超えてるよ!!!!!
ニャンパスの国って何?
アニメの中に行きたいってこと?
お前がニャンパスの世界に行ったら、平和な田舎町がメチャクチャになるよ!!!!!
沙織の決死の引き伸ばしは、いつまでたっても終わることはなかった。