第118話「本物」のツインテールの想いwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
この宇宙のような異空間で、しっかりと唯一神に向かって立ちはだかる天使。
唯一神を襲う爆風にツインテールをなびかせながら無表情で見上げていた。
でもその無表情は、覚悟を決めたような強い意志を感じるものであった。
沙織が放った「超ニャンパス砲ダイナマイト」の爆発が収まり、唯一神がその恐ろしい影を現し始めた。
「私は気がついた…ここは現実じゃない…差身君と会って気がついた…差身君が本当の世界…」
自分自身に語りかけているような。
唯一神に対してつぶやいているような。
天使なりに何かを悟ったように、ゆっくりとそう言った。
「何を言っているのだ…汝がこの世界を望んだのではないか…」
恐ろしい表情ではあったが、唯一神は天使に何かを思い起こさせるように言った。
「それも気がついた…私はこの魔界を創った。この世界は私そのもの。私の心の中」
「ならば何故我を殺そうとする。私を殺すということは汝自身を殺すようなもの…」
唯一神の問いかけに天使ははっきりと首を振った。
「この世界は私自身。でも私は差身君がいる外の世界に行くの」
「よく考えよ…この完璧に作りこまれた世界であれば、汝はこの世界の女王として幸せな日々を送れる…それを捨ててまで外の世界に行くというのか?あえて汝の力ではどうすることもできない外の世界へ出てどうするというのだ?差身というアダムと同じ男も、沙織という女と結ばれているではないか…改心せよ…汝自身が汝を苦しめる必要はないのだ…」
唯一神が天使の考えを変えさせようとしているんだけど、天使はしばらく唯一神を見上げたまま黙りこんだ。
まあでも、確かにそうだよね。
ここにいれば、そんなに酷い目に合うわけでもないし、ひたすら悪魔を倒したりしながら生きていけば良い。
何だかんだ言ってもここはゲームの世界でもある。
順番に話を進めていけば、まず死ぬことはないし、わざと先に進まずレベルだけ上げていれば、のうのうと生きていくことだって可能だ。
現実の世界の方がずっと残酷だと思う。
天使は詳細はわからないけど、お母さんが死んでお父さんも全然帰ってこない孤独な生活を続けてきた。
そりゃそうだよ。天使が人と話すのが苦手になるのだってしかたないよ。
クラスでも全く目立つことなく、ずっとひとりぼっちだった天使。
もう心は凍りつき、孤独にも慣れて、それが当たり前になって何も感じることができなくなってしまい、どうにもこうにもできなかったんじゃないのか?
それに沙織が僕を手放すわけがないしな…
天使もかわいいんだけど、なんでだか僕も沙織と離れられない体になってるんだよね…
沙織から逃げて天使と駆け落ちしたら、沙織が世界中、いや次元を超えて僕を殺しにやってくるからな…
だから天使は未来永劫、僕と付き合うことにはなれないだろう。
これも沙織という「本物」が彼女だからこそ変えることができない鋼鉄の縛り。
だが天使はふと無表情で両手首を曲げ唯一神にねこポーズを決めた。
「大丈夫ニャン。『差身補完計画』があるニャン。創世記差身ゲリオンニャン」
何言ってるの天使…
めっちゃかわいいんだけど、何言っちゃってるのよ…
天使…いったい何が大丈夫なのかな?
その「創世記差身ゲリオン」とかいう僕がまだ聞いたこともない、どう考えても僕の身が危険に晒されそうな「本物」の悪巧み…
僕が考えている以上に想像を超えた「本物」の計画なんだろうね!!!!
こんな時でも心臓がバクバクして震えてくるよ!!!!
「そうだぞ!!!!唯一神!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww我々人類を甘く見るな!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww我々はお前の想像を超えた計画を発動中だ!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww『本物』の『新しい創世記』を創りだしてやるよ!!!!!wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww新しい世界では差身がアダムにwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
僕の腕の中でぐったりしていた沙織が急に声を張り上げた。
「のわあああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!私達の『新しい創世記』をリア充に邪魔させないよ!!!!!」
若菜ちゃんも顔だけ上げて力の限り唯一神に向かって叫んだ。
お前達、何言ってるのかわからないんだけどさあ!!!!
その「新しい創世記」ってやらない方が良いと思うよ!!!!!
自分達が神になろうとでもいうの?!
それってまずいんじゃない?!まずいんじゃないの?!
何だか良くわからないんだけど、僕を巻き込むのだけは止めてくれえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!
「愚かな人の子よ…邪悪な蛇にそそのかされて知恵の実を食べ、エデンの園を追い出されたアダムとエヴァ…汝ら人の子はあの時から取り去ることができない罪を背負った…アダムとエヴァはエデンの園で豊かな生活を送っていたが、エデンの園を追い出したあとはアダムとエヴァに産みの苦しみと死を与えた。作物は枯れる大地にへと我はアダムとエヴァを送り出した…」
恐るべき唯一神の声がこの宇宙のような異空間に響き渡る。
僕達は黙ってそれを聞いていた。
「人の子らよ…我は苦しみのある世界へ汝らを送り出し、多くの人の子らは我にすがり祈りを捧げた…しかし汝らは苦しみの中でも自分の意志でそれを乗り越えようというのか?誰にも頼らず新しい世界を創造しようというのか…これも知恵の実を食べた人の子らの力なのか…」
僕に難しくって唯一神が何を言っているのかわからなかったんだけど、何だか唯一神も単に怒っているわけではなくって、何だか僕達を見定めているようだった。
本当に唯一神は僕達を殺すつもりなんだろうか?
それすらも疑問に感じてきた。
すると天使は1歩、2歩と唯一神に力強く歩み寄った。
「私はあなたを殺す。この世界を壊し新しい世界へ行く。差身君と生きるって決めたから…」
天使はそう言うと、無表情で僕を振り返った。