第110話「本物」の心の奥底にある天使が一番大事なものwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
すると、僕達がいる部屋の床が急にガタガタ言い始め、床の一部がパカリと開いた。
そう、それは小さな正方形で、ちょうど小さな女の子が1人通り抜けられるくらいの大きさ。
まさに天使だったら出入りできそうな、そんな大きさ。
深い深い地下帝国の不思議な家。
そのさらに誰もいないだろうと思われた床下。
そこから見たことのあるツインテールが顔を出した。
ひょっこりと、そこからぬけ出すように出てくると、無表情で床に立ち、着ている服の汚れを払った。
天使だ…
僕達の天使と同じ「本物」の天使が床下から出ていた。
僕達の天使は席を立つと、床下から出てきた天使に歩み寄った。
床下から出てきた天使も、僕達の天使に近づいていく。
天使のお母さんは、心配そうな目で見つめていた。
それは小さな子供が初めて大勢の中に1人で入っていくのを見守っている母親のような目だった。
お互いに直ぐ側まで近づくと、動きを止め真っ直ぐ見つめ合う2人の天使。
無表情の2人がじっと固まっていた。
しばらくその時間が続いたが、2人は何か共通する「本物」のシンパシーを感じたのか同時に動き始めた。
「はじめましてニャン」
2人の天使は無表情で挨拶しながら、全く同じ動きからのねこポーズを決めた!
「うっひひひひひひひひひhwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwツインテールのねこポーズがwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww 戦争の時の私みたいにもっと増えないのかな?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織がめっちゃ狂った様に笑い出した。
「のわああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!ツインテールが2人に増えたよ。ツインテールなのに4つになったよ」
あんまり良くわかってなさそうな顔で笑いながら若菜ちゃんが言った。
いやあでも、この不思議の家の中で、僕はめっちゃ緊張状態だったのかもしれない。
2人のねこポーズでちょっと気が緩んだよ。
双子が相手になにか悪いことが起きたら感じとれるとかって言うけど、この2人の天使もお互いに何も話さなくても意思疎通しているところがあるんだろうね。
そうじゃなかったら、あんなぴったりなタイミングでねこポーズを決められるわけがないよ!!!
「お母さんと住んでるの?」
僕達の天使が床下から出てきた天使に言った。
「住んでるし住んでない。たまにこの家の中に出てくるだけ」
「私はお母さんと初めて会った。楽しい」
僕達の天使はそう言うと、天使のお母さんを見上げた。
「私は差身君と初めて会った。楽しい」
床下から出てきた天使はそう言うと、僕を見上げた。
「本当はずっと繋がってた。だからお母さんがいないとか思わないで」
床下から出てきた天使が無表情で呟いた。
それはでも僕達の天使をめっちゃ気遣っているように見えた。
「わかった。ずっとお母さんと一緒だったと気がついた」
「そう。私は私。お母さんはずっと一緒。だから私もあなたも同じ」
「それもわかった。同じだった…」
「差身君と一緒に行くんでしょ?」
「そう。私は差身君と行く。決めた」
僕達の天使は僕の横に歩いてきて並ぶと僕の腕を掴んだ。
「今、全部わかった…『本物』の自分は私と全く同じだった…」
天使は僕の腕を掴んだまま、天使のお母さんと床下から出てきた天使を見つめた。
僕には天使が何を言っているのか全くわからなかったけれど、何だか天使が覚醒したように見えた。
天使に今見えているものはなんだろう。
天使には見えないものが多いかもしれないんだけど、普通の人では辿りつけない境地で全てを見ているような気がした。
「お母さん、またね。バイバイニャン」
僕達の天使が僕の腕を掴んだままねこポーズを決めた。
「待って」
床下から出てきたそう言うと天使は、また床下に戻ると長方形のケースを持ってまた出てきた。
そしてそれを持ち若菜ちゃんの前に行くと、長方形のケースを手渡した。
「若菜ちゃん。ドクロの弾丸より凄い弾が出るミニミを作った」
「のわあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!ツインテール凄いよ!!!!どんな弾が出るの?」
「撃てば分かる。弾は無限に出る。でも若菜ちゃんが疲れやすくなる」
「わかったよ。ツインテールがくれたミニミを大事にするよ。ミニミ若菜改だよ」
若菜ちゃんはめっちゃ嬉しそうな顔で笑いながら長方形のケースを受け取った。
床下から出てきた天使は、僕と僕の天使のとろこまで来ると、ポケットから変わった形の拳銃を取り出した。
「これはテイザーガンの原理を活かした銃。もはやテイザーガンではない。ツインテールガンと名付けた。無限に弾が出る。『本物』の友達がくれたあだ名の銃。大事に使って」
床下から出てきた天使がそう言いながら、変わった形の拳銃を僕達の天使に手渡した。
「わかった。ありがとう。ツインテールガンニャン」
天使はじっとツインテール銃を手に持ち眺めた後、僕に手渡してきたので無限のバックにしまった。
僕達は天使のお母さんと床下から出てきた天使に挨拶すると、そのまま不思議な家を後にすることにした。
不思議な家の玄関先で天使のお母さんが言った。
「綾子。お母さんはずっとここで綾子を待っています。いつ帰ってきても大丈夫ですよ」
天使のお母さんはちょっとさみしそうな顔をしていた。
だけれども、天使が旅立つのを喜んでいるようにも見えた。
僕達は不思議の家の外に出ると、なんとも言えない気分で歩き出した。
しばらく歩いていると、沙織が天使に後ろから抱きついた。
「おいツインテールwwwwwwwwwwwwwそろそろ唯一神を殺しに行くぞwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織が病んだ笑みを浮かべながらそう言うと、無表情で歩き続けている天使が頷いた。
それは沙織が天使を励ましているような感じがした。
「沙織、唯一神を殺そう。全部終わりにする。殺さないといけない」
ポツリとそう言った天使だが、それはどこか力強くって覚悟を決めた表情だった。
唯一神殺しの準備を整えた「本物」達。
決戦の時は近づいていた。