第11話「本物」の夜襲wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
あの「本物」の入学式終了から数日が過ぎた。
テレビでもあの「本物」の事件について何度も繰り返し報道されていた。
そして、やはり今回も誰が犯人なのか分からないらしい。
良く凶悪事件が報道された後、全く音沙汰がなくなることって良くあるけど、沙織みたいな「本物」が本気になると警察も対応できないってことなんだろうな。
ホッとしたいうのもあるんだけど、半分沙織がこのまま捕まらないというのも何だかかなりまずい気がする。
なんていうのかなあ、沙織に少し反省させないといけない気がするのだ。
そして時々考える。
沙織が本気で国を転覆させるような「本物」の事件を起こして、泣きながら警察に連れてかれてしまうことを。
反省させたいけど、警察に捕まってしまうのもちょっとね。
結局僕が少しずつ教えていくしかないんだよな。
しばらく「本物」の彼女である沙織との「本物」の愛に包まれた「本物」の狂った毎日を過ごしていたが、そのうち学校から連絡があって「学校の再開日時が決まりましたので、希望者は登校して下さい」とのことであった。
僕達新入生からすると、再開どころかまだ何も始まっていない気がするんだけどね。
どうも噂によると生徒だけではなく、先生達もトラウマに襲われ、生徒も先生も転校希望者が続出しているらしい。
また何かあったら大変だから登校したい人は登校してくれということのようだ。
そりゃ、無理矢理登校させて、誰か死んじゃったりしたら、それこそ学校の責任問題になるだろうしな。
僕からすると、あんなことが初日から起きたのに、まだあの学校に通うつもりの人の方がまともじゃないと思う。
もしかすると、僕が望んでいたまともな高校生活を一緒に送ってくれそうな人達が出て行って、「本物」だらけになっている可能性もあるんだよな。
どうにもならない。これも解決しない問題だから考えないようにしよう…
翌日が2度目の初登校日の夜。
僕は絶対に遅刻しないように、そしてほぼ毎朝やってくる沙織からの襲撃に備え、21時にはベッドの中に入っていた。
さあ電気も消したし、このままベッドの中で眠り込もうとした時だった。
「おい…wwwwwwwwwwww差身…wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
意識が途切れそうになっている時に沙織の声が聞こえた気がしたんだけど、ずいぶん小さな声だったし幻聴だろうと思いそのまま眠り込んだ。
最近沙織の気配を感じて、ばっと後ろを振り向くと誰もいなかったとか良くあるんだよな…
あと沙織のおぞましい囁きが聞こえた気がしたんだけど気のせいだったとかね。
僕も毎日心が崩壊しそうなほど色々あるので、若干神経質になってるんだと思う。
「差身wwwwwwwwwwww寝たのか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
今度はもっと大きな声で沙織の声が聞こえたかと思うと、僕の上にドスンッ!と何かが乗っかってきた。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」
僕が絶叫しながら半分起き上がり暗闇の中で目を凝らすと、僕の上に沙織が乗っていた。
「差身wwwwwwwwwwどうしたんだ?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
驚いた僕にさらに驚いた沙織は病んだ笑みを浮かべながらそう聞いてきた。
どうしたんだじゃないよ!!!!
そう言いたいのは僕の方だよ!!!!!!!
何で当たり前のように僕の部屋に入ってるのよ!!!!
「おい!!!!沙織!!!!お前どうやって僕の部屋に入ってきた!!!!」
僕が問い詰めると沙織は「ウイヒヒヒィィ」と狂ったように笑い、どこかからじゃりんじゃりんと鍵の束を出して僕に見せつけてきた。
「ああwwwwwwwwwwwww玄関から鍵を開けて入ってきたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私が差身のママから鍵はもらっているのを知らないのか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
極当たり前のように沙織はいかにも僕の方が駄目みたいな言い方をしてきた。
おい!!!待ってくれよ!!!!
お母さん!!!!どうして沙織にうちの鍵を渡してるの?!
何でうちの親は沙織が夜中に侵入してるのに何も言わないの?!
黙認?黙認なの?!!!!
あなた達まだ起きてるはずでしょ!
沙織が侵入してきたのに気がついてたんじゃないの?!
まさか沙織がこの家に出入り自由になってるのって、僕だけが知らなかったなんてことはないよね!!!!!!!!
「差身wwwwwwwwwwwwwwwww話があるんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
めずらしく沙織にしては神妙な感じで切り出してきた。
そう言えば、こんな風に襲撃をするわけでもなく、夜中に突然僕の部屋にやってくるなんて今までなかったよな。
沙織はちゃんと話しをしに来たのだ。
何があったのか分からないが、沙織にとって重要な話があるのだろう。
沙織も不安になると取り乱すことが多いからちゃんと聞いてあげなくては。
そうしないと、また何が起きるかわかったもんじゃないからな…
「どうしたんだ沙織?」
僕が優しく尋ねると沙織は1つ頷いて病んだ笑みを浮かべた。
「差身と結婚したら差身と少し離れていないといけないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwママに言われたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwだから差身と別なクラスになっても我慢することにしたwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwしかし少し心配になったwwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身に確認したいことがあるんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「ああ、何を聞きたいんだ?」
「差身は私と離れていても私のことを忘れたりしないか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は病んだ真剣な目つきでじっと僕を見ていた。
何を言い出すかと思えばそんなことか。
どうしたらお前のことを忘れてゆっくり休めるか僕が知りたいくらいだよ。
でも沙織にとって僕と別なクラスになるということは初めてのことなので、色々不安になっているんだろうな。
「ああ、忘れられるわけがないだろ。どうやったら沙織のことを忘れられるんだ」
「ニャンパス?本当か?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww私よりキレイでほたるんみたいな正統派なメスキャラが登場してもそいつのことを好きになったりしないか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww差身は時々私以外のメスキャラをニャンパスな目で見ている時があるwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
ニャンパスな目って何だよ…
ほたるんってあれか。のんのんびよりに出てくる女の子か。
あのアニメの中では、至って正常というか沙織と違って理性を感じるんだよな。
でも確かほたるんって小学生だったよな…
完全にのんのんびよりを始めとするアニメやゲームが沙織の人格を形成しているから、沙織はなにか例える時もアニメを持ち出すことが多くて何を言いたいのかわからない時が多いんだけど、おおよそ沙織が言おうとしていることは分かった。
「大丈夫だよ。沙織より好きな人はいないよ」
「そうかwwwwww安心したwwwwwwwwwwwwwwでも差身がいないと怖いんだwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwどうして良いのか分からなくなったら差身の所に行ってもいいか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「もちろん。すぐ近くにいるんだから、いつでも来ていいよ」
僕がそう言うと沙織の緊張が取れてきたのか、不安そうにしていた沙織も安心したように肩をなでおろした。
「そうかwwwwwそうかwwwwwwwwwwwww差身がいれば安心なのんwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はそう言うと嬉しそうに「ハアハアハアハアハア」といやらしい息遣いで高まり始め、僕に雪崩れ込むように抱きついてきた。
沙織は僕が考えている以上に、僕がいなくなってしまうことが恐ろしいんだろうな。
僕は逆にどうやったらお前から逃げ切れるのか知りたいくらいなのに。
少なくともこれから3年間一緒に同じ学校に通うというのに、沙織も変な所で心配になっちゃうんだな。
でもこれで沙織も何とかうまく学校生活を送れそうかな?
僕はそう考え少し安心した。
だがしかし、沙織が入学した時点で、まともな高校生活が送れるはずなどなかったのだ。
最初の狂った事件が起きるまで、そんなに時間はかからなかった。
これから始まる壮大なる「本物」の高校生活は、まだ見ぬ「本物」の友達をパフォーマーに迎え静かに幕を開けるのであった。