第107話「本物」の天使の心の底wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
僕達はガルム戦車から降りると、天使の後を歩いて行った。
六本木だと聞いていた街は、こうして歩いて行くと「本物」のますます小机町そのまんまで、僕もそうだけど、沙織と若菜ちゃんもキョロキョロしていた。
でも、なーんか不自然なんだよねー。
街が古い感じがする。
僕達が子供の頃の小机町ってこんな感じだった気が。
もう古くなってなくなったお店とかがそのまま残ってたり、新しく建てられたビルとかがなかったりする。
あと、街路樹的なものが、パステルカラーに彩られ不思議な形をしていた。
空を見上げると、まあその普通に青いんだけど、太陽が子供がクレヨンで描いたような形をしていた。
なんというか「@」に近い形というか、渦巻きそのものであった。
雲もやっぱり子供がクレヨンで描いたようなものだった。
「差身wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwこれもしかするとあれだなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwツインテールの心の中に私達はいるんだなwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織は1人で納得したように頷きながら病んだ笑みを浮かべ僕を見た。
「うーん、そうなんだろうね。この魔界というかゲームも、全部天使が創りだしたんだから天使の心の中なんじゃないのかな?」
「なるほどなwwwwwwwwwwwwwwそうなるとここはツインテールの心の中の最深部wwwwwwwwwwwwwwwwwwツインテールですら気がついていない無意識の世界wwwwwwwwwwwwwwwwwwwフロイト的いえばエスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwいやもしかすると集合的無意識というべきものかもしれないwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwユング的にいえばwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwならばツインテールの元型がこれらを創りだしたというところか?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwいや我々人類の元型が創り出したともいえるのかな?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
何だか沙織がよくわからないことをまた言い始めたんだけど、僕には何を言っているのか全然わからなかった。
「うーん、よくわからないけど、天使の心の中にいるのは間違いなさそうだね」
「そうだなwwwwwwwwwww簡単に例えるとエヴァ的にいえば我々はATフィールドの中にいるということだwwwwwwwwwwwwwwwwwwそのATフィールドはツインテール個人のものか我々人類全体のものかはわからないがなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「沙織…余計に訳がわかんないよ…」
駄目だ…全く沙織の言うことが理解できない…
沙織は何かに気がついたみたいなんだけど、僕にはやっぱりわからない。
とりえず、センターの1番下というか、更にその地下に隠された地下帝国に来てるんだから、天使の深層心理というか本能というか、天使の心の中の1番深いところにいるのかもしれないね。
「ここは何だか優しい感じがするよ。凄く楽だよ。リア充がいない楽園のような感じがするよ」
若菜ちゃんがゆっくり背伸びをし、あんまり良くわかってなさそうな顔で笑いながら僕に話しかけてきた。
何だか若菜ちゃんも遠足に来た小学生みたいにのびのびとしてるね。
でも確かにここは落ち着く感じがするよ。
懐かしい匂いがする。
「そうだね、若菜ちゃん。このままここにいるのも悪くない気がするね」
僕は若菜ちゃんにそう言うと周りを見渡した。
ここは多分、色んな物がゴチャゴチャになってるんだ。
現実と記憶の中にある過去。
心の中にあるものを天使なりに描いた世界。
この穏やかな雰囲気と現実にはありえないものが存在するのは、天使自身も気がついていない天使の理想なのかもしれないな。
「差身君、ここなら銃なんていらないよ。リア充がいないなら戦う必要はないよ」
若菜ちゃんがあんまり良くわかってなさそうな顔で笑いながら言うと、沙織も同意するように病んだ笑みを浮かべながら頷いた。
「ここならのんびりしていてい良いなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwまさに最高神れんちょん様がいるあの村のようwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww我々がこの『本物』の小机町で生きるのも悪くはないwwwwwwwwwwwwwwwwww」
「駄目だよ、沙織。帰らないとMXで今日にアニメが見れなくなるよ。ここは現実じゃないんだぞ」
僕は沙織がここに住みたいと言って動かなくなるとまずいので注意すると、沙織はやっぱり駄目かというような顔をして病んだ笑みを浮かべた。
「そうかwwwwwwwwこの地下帝国の小机町にはMXの電波は届かないのかな?wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwあとAT-Xも見たいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwだがこの地下帝国は探索したほうが良さそうだぞwwwwwwwwwwwwwwwwwww『本物』のツインテールがいると思うwwwwwwwwwwwwwwwwあとツインテールの成長は子供の頃で止まってるのかもなwwwwwwwwwwwwwwwwwどう見てもここは随分昔wwwwwwwwwwwwwwww私と差身との運命的な出会いをする前の世界じゃないのかなwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
沙織はなにか考えこむように目をつぶり腕組みをした。
沙織と出会う前というと幼稚園に入園する前か…
まあその辺りの風景なのかもしれないなあ。
僕は先頭を歩いている天使を見たんだけど、この地下帝国の小机町を知り尽くしているように歩き続けていた。
無表情ではあるが、どこか明確な目的地があるのだろう。
「天使、ここには何度も来ているのか?」
僕が天使の横に行って声をかけると、天使は無表情のまま僕を振り向き見上げた。
「初めて。でもわかる。ここを知ってる」
「そうなんだ。どこに向かってるの?」
「私の家。家族がいる。そこで銃弾も作ってくれる」
「家族?」
「そう。私にも家族がいた。でも覚えていない。私が生まれてるから家族はいたはず。今はお父さんが時々帰ってくるだけ。私は1人」
天使の言っていることには矛盾がある。
知らないはずのことを知っていると言い、知ってると思われることを知らないと言う。
でもそれは天使が嘘をついているわけではなくて、天使は本当のことを言ってると思った。
「私は家族に会いに行く。でも今歩きながら考えていた。私は差身君がいる世界を選ぶ。差身君、私を置いて行かないで…」
天使はかわいい大きな瞳で僕を真っ直ぐ見たまま、そのツインテールが僕に巻きつくくらい僕の腕に抱きついてきた。
天使はギュッと抱きつくと、その手を放し前方を指差した。
「ついた…」
天使は自分が指をさした方をまっすぐ見つめながら、また空いた手で僕の腕を引いた。
天使の心の深い深い、ずっと奥底。
その奥底でたどり着いた先に、なにがあるのだろうか?
天使は無表情ではあったんだけど、何かを覚悟しているような面持ちだった。




