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妄想遊戯  作者: 秋鹿
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プロローグ

ただ思いついただけなんです。本当にお目汚しで、すいません。

 私、相田広子あいだひろこ。32歳。 

 女を亡くした相田の心が広がる。

 つまり妄想が広がる。略して、相田広子だ。    

 転職して今の職場で事務職をして3年。

 なんとか慣れぬパソコンを使い、安い給料を貰いながら、ほそぼぞと暮らしている独身アラサー女子である。

 よく喪女とか、干物女とかいうけれど、まさに私はその典型。

 彼氏いない歴とかもう、どうでもよくなっている。

 きっと、いや、絶対に結婚できないよ、私。

 すいません、少子化の歯止めにならず。非生産的な女で。

 野暮ったい服装に、もっさい、平安女子か!って髪型。

 ちなみにメイクはエコを追求し、最近は日焼け止めと眉毛しか描いてない。

 だって、口紅はすぐに舐めちゃうし、アイラインはうまく引けないからパンダになるしさ。

 流行りの音楽も分からず、カラオケで歌うのは、高校、大学時代に流行った曲ばかり。

 とくに仲のいい友達もいない、実に枯れた人生だ。

 でも心配ご無用。私は日々イキイキと生きている。

 何もなくても幸せに生きれるのは、私の強み!

 今の私を満たすのは、恋でも愛でも、金でもなく、そう!妄想!!

 ビバ妄想生活!

 妄想といっても私に言い寄ってくる王子様をひたすら思い描くのでも、脳内彼氏とイチャコラするのでもない。

 素敵な王子様が他の王子様といい感じになるところを妄想することこそ、人生の至極。

 つまりBLボーイズラブが趣味なのである。

 実に痛い。年齢が年齢だけに、その痛みは切実だ。

 ふと現実に戻ると、あまりの痛さに死んでしまいそうだ。

 でもわかっちゃいるがやめられないのだ、この耽美なる妄想の世界は。

 女子力はないが、腐女子力なら他には負けないぜ。

 3カメに決め顔☆……ってなんだ、この謎の自信。

 ドヤ顔でいうと、なんだか情けなくなる。

 でも心の中は自由。

 そう朝ドラでも言ってるじゃん。

 想像の翼を広げろってさ!

 もちろん、私の翼は天使の翼というよりも悪魔の翼だけど。

 さて、今日も存分に楽しませてもらおうかな。

 私はマスクで隠した口元に締まらない笑みを浮かべ、向かいで机を並べる二人にそっと視線を向けた。



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