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その1 ぼうけんのはじまり

「ちゅるのー、ウルトラマンごっこしようぜ」

「おうっ!」


ここはちけいだちゅ幼稚園、ちびっ子たちの声が響くお昼休みの時間。

年少セミ組のちゅるの、かちゅんど、ちぶけんは今日も仲良くお外で遊んでいた。


「俺ウルトラマンな」

「僕タロウ!」

「ちゅるの、お前怪獣やれよ」

「なっ、なんでや!ワイはいつでもウルトラマンや!」

ちゅるのの抗議は受け入れられなかった。早い者勝ちは世の常である。すでにやる気満々のちぶけんがちゅるのに飛び掛る。


「わっ、突然攻撃してくるな!」

ちぶけんの攻撃をかろうじてかわしたちゅるのだが、足がよろけて体が斜めに傾く。背中にトンと何かが当たった。

「あっ、スマン」

「つっ……いてーな!」

「その声はっ!」

ちゅるのの顔色が変わった。そこには年長ウナギ組の番長、アキが不機嫌そうな顔でちゅるのを睨みつけていた。


「はんっ、お前か。謝って損したわ」

「お前とはなんだよ!痛いじゃねーか、どこ見てんだ!」

「よそ見しとる方が悪いんじゃい」

「なんだとー、お前年少のくせに生意気なんだよ!」

「うっさいわい!」


二人の間に火花が飛び散る。普段から仲の悪い二人。ケンカが始まるともう誰にも止められない。

それを知っているかちゅんどとちぶけんは遠巻きにそれを眺めていた。


そこに……

「ちゅるのくん、どうしたの?」

「かずこちゃん!」


クラスのマドンナ、かずこが二人に近づいてきた。慌ててそれを止めるかちゅんどとちぶけん。

「かずこちゃん危ない!」

「アイツらに近づいちゃダメだ!」

しかし、二人の因縁を知らないかずこは、トコトコと歩いてちゅるののそばに寄る。

「ちゅるのく~ん、何してるの?」


「おっ、なんだこの娘、お前の彼女か?」

「ううん、ちがうよ」

まったくもって危機感のないかずこの言葉に戦闘モードだったちゅるのの体からヘニョリと力が抜けていく。

「かずこちゃん、そんなあっさり否定せんといてくれ……」


「ふーん、よく見たら結構可愛いやん」

アキの視線にただならぬ気配を感じたかずこが眉をひそめて軽く後ずさりしはじめた。

「やっ……なんなの、この人」


「よーし、決めた!俺、この娘をおよめさんにする!」

「なっ、なんやて!そんなん許すわけないやろ!」

アキは飛びかかるちゅるのの攻撃をヒラリとかわし、すばやくかずこを抱き寄せた。

「きゃ」

「へへっ、俺の超絶ギターテクで毎晩天国に連れて行ってやるぜ」

ベタベタとかずこの体を触りながらアキが下卑た笑いを浮かべる。

「いやっ、離して」


「アキーッ!お前、ワイですら言ったことのないヒワイな発言を!」

「お前はそこでウルトラマンに退治されてろ!さっ、結婚式の準備だ」

ひらりと身を翻し、かずこを抱えてアキが年長組の校舎へ駆け込む。

「ちゅるのくん、たすけて~」

「かずこちゃあああん!」



「おいっ、待たんかい!くっそー、追うぞ!」

「ちょ、ちょっと待ってよ」

かちゅんどがちゅるのの手を掴んで引き止める。

「僕たちだけで行っても負けちゃうよ」

「相手は年長組だぞ。俺たちに勝ち目はないよ」

普段はヤンチャなちぶけんだが、流石に弱気になっている。


「ホナどないせえっちゅうねん。このままじゃかずこちゃんはアキのヤツにあーんなことやこーんなことを……くっそー、うらやま……じゃなくて、許さーん!」

顔を真っ赤にしてちゅるのがまくしたてる。

「でも……」


(話は聞いた)


「うわっ、なんや!」

突然重々しい声が響いてきた。三人が慌ててあたりを見渡す。


(これは由々しき事態だ。一刻を争うぞ)


「この声は……」

「みっちゃん先生!」

「……?センセ、どこにおるんや?」


(先生はちょっと手が離せなくてな、お前たちの脳内に直接話しかけているんだ)


「なんやワケわからんけど……かずこちゃんを助けに行ってええんやな?」

(ああ、困ったことがあったら先生がアドバイスしてやる)

「これは心強いね」

「じゃあちゅるの、早速行こうよ」

「おっしゃ!センセ公認で大暴れじゃっ!」

腕をぐるぐると回して戦闘体勢を取るちゅるの。早速年長組の校舎に向かって走り出そうとする。


(待て待て、そう慌てるな。お前たちは今から冒険に行くんだぞ。特別に装備を用意してやったからそれを着るんだ)

「え?どういうこと……わ、わ、わぁっ、何これ!?」

かちゅんどの体をキラキラした光の粒が包み込む。それが消えた時、彼の体は白いローブで纏われていた。

(賢者の衣装だ。かちゅんど、仲間の体力を回復したり、戦闘を助けてあげたりするんだぞ)


ちぶけんの衣装は和風の鎧と兜だった。

(剣士の衣装だ。お前が先陣を切って敵をやっつけるんだ)

「すげー、お侍さんだ!かっこいいー!」

満足そうに自分の姿を見つめる二人。冒険への期待が高まっていくのを感じる。そんな中……


「センセ、なんじゃこの服はあっ!」

悲鳴にも似たちゅるのの声に二人が振り向くと、そこには真っ赤な帽子をかぶり、オーバーオールを着たちゅるのの姿があった。

(おいおい、世界的に有名な伝説のヒーローの衣装だぞ)

「し、知っとるけど……カッコわるぅ……なんでワイだけスーパーマ○オなんじゃぁ……」

「ほーら、行くぞ」「かずこちゃんを助けるんでしょ」

自分の姿に納得がいかないちゅるのだが、二人に連れられてしぶしぶ歩き出す。

「くそー、この悔しさ、ぜーんぶアキにぶつけたる!」


無理やりに自分を奮い立たせ、ちゅるのはアキが潜む年長組の校舎に向かっていった。

「まっとけよーアキー。そのワカメ頭、ぐっちゃぐちゃにしたるからな!」

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