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ココロノヤミ  作者: ぬこ
8/21

8



 きょろきょろ、と、辺りを見回す少女。

 手に持ったままのダンボールのおき場所を探しているのか。


 「河合さん?」

 「これ、どこにおこうかって思って…」

 「そうだね、この木の下がいいかもしれない」

 「うん」


 素直に返事をすると、木の下にそれをそっと置く。

 

 あの声、ほんとに大丈夫かな…

 探したほうがいいのかな。

 でも、…どこにいるんだろう──


 「それじゃ、今日は帰ろうか」

 「あ、・・・うん」

 「河合さんの家、この近くなの?」

 「あそこの階段上がってすぐなの」


 指差すのは、少女が来た道。

 土手を上がる石階段。

 それをあがれば、団地があり、少女の家はその川沿いになる。


 それをみて、頷く少年を見て、少女も、ただ、頷く。

 


 気になる…けど…

 桜井君がそういうんだし、大丈夫…だよね?







 河合さん、犬と猫探してるの?

 

 さっきの声。

 きっと今日は出てこないよ。


 動物はケガしたら、じっとうずくまって、治すんだって。


 イタイ、って言わないで、じっとうずくまって治るの待ってる。

 


 人間は、どう?


 見た目で、優しくて、周りからも認められてたら。

 「  」の叫び声よりも、「そのひと」の声のほうが、大きいんだね。


 警戒して、イタくて、出てこないのは、きっと本当。

 


 人間は、どう?




 ボク?


 ボクだったら、もちろん、    だよ。

 ねっ?







 顔が、熱い。

 まさか、こんなところで逢えるなんて。


 「どうしたの?」

 「あ、ううん。…なんだか、緊張しちゃって」

 「僕もそうだよ。びっくりしたね」


 川原から、家までの道がこんなに近いことが、少し残念。

 この階段を登ったら、もう家に着いちゃう。


 

 寒さから身を守るためか、恥じらいを隠すためか、少女は頬を手のひらで覆う。

 ひんやりと冷たい手のひらが、熱い頬に触れて温かい。


 それを、横目で見る少年。

 

 薄く笑う、が、少女の目にはそれは見えていない。


 その、少女の手をふっと掴む少年。


 「!」


 驚いて、歩いていた足取りが止まる。


 「手、冷たいね」

 「さ、桜井君…?」


 驚いて、見つめたその少年は、穏やかに笑みを浮かべて。

 少女の手を握ったまま、ゆっくりと下に下ろす。


 「ん、ごめんね。手が冷たいのかなって思って」

 「う、ううんっ!」

 「そっか、余計な事しちゃったね。ごめんね」


 そういって、手を放す。

 あ…と、一瞬残念そうに、寂しそうに声が漏れる河合。

 その様子を見て、くすっと笑う桜井。


 「まだ、冷たいなら」


 と、手を差し出す。

 



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