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ココロノヤミ  作者: ぬこ
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5




 「ちっ」

 

 朝練なんかあるわけないだろ。

 いちいち突っ込んでくるなよ。

 ただでさえ学校で委員会だの任されて時間がないってのに。


 まぁ、やっておいて損はないからいい。

 信頼されるし、「イイヒト」でいられるし。

 

 生徒会、文学部、学級委員、有志活動。

 ある程度は名目だけでも問題ない。


 文学部ってことで図書館は自由に使える。

 いちいち運動部なんか入ってケガでもしたら困るだろうが。

 

 


 石段を登り、草を蹴飛ばしながら歩く少年。

 橋の手前、二本の大きな木の前で足を停めると、辺りを見回す。


 車道から離れたそこに、人気は無い。

 

 カチッ。


 学校指定のカバンの奥の、小さな袋。

 彼の母親が持たせてくれた小さなおにぎりの下から、煙草を取り出すと、火をつける。

 

 「いちいち持たせるなって言ってるのに」

 

 冷たく冷えたそれを、草むらに放り投げる。

 そして、煙を吐き出すとツバを吐く。

 

 カサッ。


 物音にびくっと振り返る少年。

 思わず手にしている煙草を背にかくし、あたりの様子を伺う。


 「……?」


 が、誰も居ない。

 注意深く辺りを見回して、人影が無い事を確認して、もう一度、煙草を口元に持っていく。


 ガサガサッ。


 「…なんだよ、犬かよ」


 丁度自分が放り投げたおにぎりの辺りに、白い毛が見えて、呟く。

 安心した後、自分の慌てっぷりに不愉快なものを感じる。


 「ちっ」


 ツバを吐くと、足元の石を拾い、力を込めて犬が居る辺りを目指して投げる…が、暗がりのせいか、的が外れたようだ。

 とはいえ、突然の攻撃に驚いたのか草むらからもう一つ、小さな何か。


 「…猫か」






 桜井君、煙草すうんだー?

 まぁ、いいんじゃないの、ボクには関係ないしね。

 ママが作ってくれたおにぎり、いつも食べてないの?

 ならボクに一つ頂戴よ。


 犬、嫌い?

 



 桜井君、雰囲気がダークでメロメロスマイルがないよ?


 でもきっと河合さんはメロメロ。


 これが、「男のニヒルなカゲ」ってやつ?


 ボクもやってみようかな。


 ボクに近寄るとやけどするんだぜ。

 ナイロンは良く燃えるから注意なんだぜ。


 どうだ、クラクラきただろ?




 煙を吐き出して、持ち手の指にほんのり熱を感じて、手元を見る。

 既にフィルターの手前まで赤い光が迫ってきている。



 

 「苦い」


 帰って勉強しないと。

 明日は確か役員の集まりと何があったっけ。


 部活だのなんだの浮かれてるやつらの面倒見て。

 修学旅行とか。


 面倒なんだよ。


 いちいち集まって集団行動なんて。

 

 



 ツバを吐き、煙草を足元に投げ捨てると踏み消す。


 「……」


 少し離れた所で桜井が投げたおにぎりを食べている犬と猫。

 それを、じっと見つめている桜井。

 

 その視線に気づいてか、小さな猫が桜井の足元に擦り寄ってくる。


 「毛がつくだろ、やめろって」


 足を払うが、ゴロゴロ、と喉を鳴らして足元に擦り寄って来る猫。

 それを嫌そうに見て、しゃがみこむと。


 「やめろっていってんだろ」


 カバンの中から、取り出したのはナイフ。

 左手で猫をそっと押さえる。


 撫でられているのか、とゴロゴロ喉を鳴らしながら頭を摺り寄せてくる。

 その頭を、首筋を押さえて。


 「……」


 そっと尻尾にナイフを当てる。

 するり、と尻尾がうねって、根元に当てたナイフは尻尾の先に。


 「動くなって。やめろっていってるのに聞かないお前が悪い」


 地面に押し付ける。


 「これは、しつけだ」







 ニャアアアアアアアア!!!!!






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