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ココロノヤミ  作者: ぬこ
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4



 「明日も学校、やだなぁ…」


 また、明日もテスト返しだろうし。

 修学旅行の話とかも、やだな。


 グループ分けとかなければいいのに。

 

 桜井君は、誰とグループ入るのかな。

 一緒に、なんておもうだけ、無駄だよね。


 どうせ一緒になれたって、話なんて出来るわけがないもん。

 

 誰にでも優しい、桜井君。

 人気者で、頭も良くて。

 憧れるけど私は桜井君にはなれない。






 あーあ、残念。

 入浴剤って、お肌にはいいかもしれないけど、ボクにはつまらないね。

 せっかく湯気で雰囲気バッチリなのに、なーんにもみえやしない。


 こう、成長期の少女の入浴。

 たまらないよね。


 せっかく急いで戻ってきたのに、残念。



 河合さんは、桜井君が好きなんだ?

 頭も良くて、優しくて、人気者で?


 つまり、完璧ってやつ?

 人間なのに?






 「ほら、あんまり浸かってるとのぼせちゃうわよ?」

 「はーい」

 「お風呂上りに、オレンジジュースあるからね。早くでておいで」

 「ありがとー」


 あがろっかな。

 外、寒そうだしやっぱり今夜ダンボールもっていってあげよう。

 風の音凄いし。


 お風呂でしっかりあったまったし、すぐ戻ってくればいいもんね。

 オレンジジュース飲んだら、急いで走っていかなくちゃ。

 こんな寒い夜にあんなちっちゃいこが一人きり、絶対寂しい。

 

 …うちに連れてきてあげられたらいいのにな。



 ひゅうひゅう、と風の音が窓越しに聞こえてくる冬の夜。

 立ち上る湯気が暖かい風呂場とは別に外の寒さが伺える。


 反響して響く少女の声は、学校では発した事がないほどはっきりと明瞭で大きい。

 それに気づいてか、小さく溜息をつくと、少女は湯船から体を起こす。




 うんうん、早くあがりなよ。

 そのほうがボクも嬉しいな。

 最近の子はやせすぎてたりして面白くないんだけど、あれ、気にしすぎだよね。


 やっぱりある程度こう、でるとこでてたほうがね?


 「湯上りに、けむる柔肌、おいしそう」


 ほらほら、一句詠できた。

 けむる、けぶる、どっちだっけ?

 けむるって、ツルツルな予感。

 けぶるってセクシィな感じ。


 うん、やっぱ入浴シーンは詩人にさせるね。


 冬の湯上りピンク肌とか、いいね。

 ぐっとくるよね?



 


 「ママ、ちょっと外でてくる」

 「寒いわよ?明日にしたら?」

 「うん、でもすぐ戻るから」

 「ほんとにすぐ戻ってくるのよ?」

 「うん」

 

 体を拭き、着替えると居間でテレビを見ている母親に声を掛ける少女。

 心配そうに視線を送ってくるのに笑顔で応えると、慌しく部屋へ戻り、荷物をまとめる。


 セーター、一枚だけじゃたりないかな。

 タオルとかももっていってあげた方がいいよね?

 夜露とかにぬれちゃうかなぁ…


 ダンボールをじっとみつめて、考え込む少女。

 中にセーターを敷いて、古いタオルを何枚か敷いて。

 

 「ちょっと見た目悪いかもだけど、これでどうだろ」

 

 ぐるりと巻いたのは、ビニール袋。

 透明なビニールテープでぐるっと固定して、入り口以外を密封して。

 

 うん、これなら多分大丈夫かな?

 草の上おいてもきっと濡れないよね。

 これでいいかな。



 母親が入れてくれたオレンジジュースを一息に飲み干して、上着を手に持つ少女。

 玄関に向かい、ドアを開けると外へ出る。





 あったかくしてかないとダメだよ。

 外はほら、風がすごいからね。

 せっかくあったまったピンク肌が冷えちゃうのは残念。


 あ、でもボクとしてはジャージよりパジャマがいいな。

 ボタンがあるのが好みなんだ。

 理由はヒミツ。

 


 うん、そうそう、パジャマ着て、くるくるマフラーにコートがいいよ。




 もしかしたら、誰かにあうかもしれないし。




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