19-2
「って、なにこれ」
えー、コレって言われちゃうと、ボクちょっとガッカリ。
セクシーナイスダンディって言ってほしいんだけどな。
「うわ、しゃべるし」
うん、そりゃしゃべるよ?
ねぇ、ボク、キミにもお礼にきたの。
「わけわかんないんだけど、なんなの?」
んー、そうだよね、ボクもよくわかんないや。
キミのことずっと見てたわけじゃないし、お礼、なにがいいかなー。
「はぁ?」
キミは、見てただけだよね?
うん、そう、見てただけ。
直接何か言ったわけじゃないしー、笑ってみてただけ。
うーん、お礼、何がいいかなー?
「意味わかんないから、なんなの?」
そうなんだよねぇ、ボクもよくわかんない。
だけど、お礼しないで帰るって、それはダメダメ君だもん。
ナイスダンディで、礼儀ただしく。
うん、ほら、やっぱりボクって出来てるよねっ?
「ほんとわけわかんない。どっかいってくれない?」
あれ、クラクラしてない?
あ、わかった。
ツンデロ、ってやつだね、きっと。
うん、ボク物知りだから知ってるよっ?
ツンデレ、だっけ?
まぁ、どっちでもいいや。
それじゃ、キミにも同じお礼でいっかな。
「お礼ってなんなのよ」
キミ、ただ見て笑ってただけだもんね、うん。
「だからなんなのよ、何もしてないからね」
じゃぁ、キミにも、それ、あげる。
キミになにかあったとき、ただじっとみて、笑ってもらえるように。
ただ、そこにいて、キミがしてきたのと同じように。
「はぁ?」
「てか、アンタなに一人でさっきからブツブツいってんの?」
「え、聞こえない?」
キミが、困ってる時も、ただ、じっと見て。
キミがしてきたのと同じように、してもらえるように、してあげるねっ。
声を掛けてきたクラスメート。
彼女には何も聞こえていないのだろう、此方の様子を訝しがるように見ている。
ね、お礼、うけとってねっ。
「だから、いらないって。わけわかんないっていってんじゃん」
「いや、ワケわかんないのこっちだから。どうしたの?」
「ちょっと、ほんとに聞こえない?」
「…アンタ、どうしたの?」
周りでは、じっとこっちの様子をみて、ひそひそと話し始める声。
声を掛けてきたクラスメートも、半歩ほど後ずさり、眉をひそめている。
「なんでもないから」
「ちょっと、キモイよ?」
「なんでもないっていってんじゃんっ」
それじゃ、ボクいくね、またねー?
「ちょっと、なんなのよ!」
「ほんと、アタシがききたいんだけど。アンタどうしたの?」
「なんでアンタ聞こえないわけ!?ほら、いるじゃん、そこに!」
あ、無理無理。
だってボク、ステキなナイスダンディだからさ。
普通に皆、ボクみたらクラクラしちゃうでしょ?
忘れられなくて、眠れぬ夜。
うーん、お肌の天敵。
そんなこと、ボクできないさ。
「真面目にきいてんのよ!」
「……アンタ、おかしくない?」
「なんなのよ、ほんと!」
「……」
無言で去っていくクラスメート。
すぐ側で、此方をみてひそひそと話していた中に戻っていく。
それじゃ、またねー!
お礼、喜んでくれたら、うれしいなっ。
「ちょっと!」
「あいつ、やばくね?」
「おかしいって、ぜってー」
「最近なんかちょーしこいてるし」
小さく囁かれる声。
それが、隣人へと移るたびに同意になり。
「つか、前からなんかむかつくと思ってたんだよねー」
「あー、わかる、なんかウザイよね」
顔を上げたその瞳に映るのは。
「アイツ、放置でよくね?」
「いんじゃね?」
薄笑う数人のクラスメートの視線。
こちらを見て、にやりと笑って。
目があうと、再びそらし、隣人とひそひそと。
「ちょっと!ちょっとまってよ!!!」
「まだやってるよ、イタすぎ」
「だから放置だってー」
囁かれる声ははっきりと耳に。
それに慌てて立ち上がり、クラスメートに向かって、 に向かって叫ぶ少女。
「ねぇ、あたし何もしてないじゃん!!!」
んー、ボク、いかなくちゃなんだけどなー?
デートに遅れるオトコはダメなんだよ?
ま、デートじゃないんだけどさ。
あ、ちょっと期待しちゃった?
ボクってば罪作り、うーん、やっぱりダンディ。
うん、キミは何もしてないよね?
だから、ボク、それあげる。
キミに何があっても、キミがしていたように。
キミが何か言っても、キミがしてきたように。
「ちょっと!!!」
うん、もうちょっと話してたいんだけどさ?
あ、逢瀬っていうんだっけ?
雰囲気ゾックゾク。
知性のあるダンディってイイよね?
これからボク、知性なカレシに会いに行くの。
カレシ、っていっても、ボクのカレシじゃないからね?
引き止めてたいオトメゴコロ、ちょっとイイけど、またいつか。
だってボクはセクシービジネスマンなのさ。
さてと、うん、結構大変。
でも、ここで帰っちゃナイスダンディの名がすたるってやつさ。
だから、ボク、がんばらなくっちゃ。
もちろん、クラスの皆にも、ちょこっとずつ見せてもらったぶん、ちょこっとずつお礼するねっ。
順番だから、時間差できちゃうけど、ごめんね。
でも、ちゃんと全員にするから、いいこでまっててね。
さてと、次は、みんなの憧れ、桜井君のとこいこっかなっ。