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ココロノヤミ  作者: ぬこ
18/21

18


 河合さん、ラーメン伸びちゃうよー。

 ボク、シーフード味がスキ。でも、あのうそ臭いお肉の具もスキ。

 カップラーメン考えた人、すごいよねー?

 日本人だって、知ってた?


 でも、最初は相当大変だったみたい。

 きっかけって、何があるかわからないよねー?


 ボク、みにいっておけばよかったな。

 今更だけど、ね?


 ねぇ、河合さん。

 ボク、キミの事、見てたよ。

 見せてくれて、ありがと。


 ほんとは、お礼するの、もうちょっと後がいいかなって思ってたんだけど。


 湯上りで泣いてる河合さん、セクシーだし、うなじ大スキだし。

 ちょっと早いんだけど、お礼、しよっかな。


 イイ、と、ワルイ、ボクにはやっぱり難しいや。

 オトコノコの密林ジャングルはちょっとアレだけど。

 夢にでてきちゃって、ボク、困っちゃった。


 

 それじゃ、河合さん、ボクのお礼、受け取って。





 「もぉ…やだ…」

 

 河合さん、顔あげて。

 ボク、お礼するから。


 「…え…?誰…?」


 あ、ごめんごめん、自己紹介してなかったよね?

 うん、びっくりしないでーっていっても、するよね?

 大丈夫、ボクはセクシーナイスダンディ。

 

 今まで、ずっと、河合さんみてたの。

 それで、みせてくれたから、お礼しなくちゃって思って。


 「今まで…?」


 うんうん、湯上りピンク……じゃなかったっ。

 えーっと、ほら、ね、そのっ。

 ま、まぁ、お礼するから受け取ってよ。


 「お礼…って、お礼って、なに?」


 お礼はお礼っ。

 ボク、イイ、と、ワルイ、が、どういうものか知りたかったの。

 でも、これ以上は言えないよ。

 だって、ボクは秘密のナイスガイだからね。


 「それって」


 ううん、ダメ。

 これ以上は質問きーんしっ!

 だって、ほら、秘密があるオトコって、素敵でしょ?


 ボクのこと考えてクラクラするオンナノコがたくさん。

 うーん、ボクって罪作り。


 それじゃ、いくねっ。


 ボクからの、お礼。


 喜んでくれたら、嬉しいな。






 キーンコーンカーンコーン。

 始業を告げる、鐘の音。


 「おはよー!」

 「おはよー、…って、河合、アゴにジャムついてるよ?」

 「……え……?」

 

 親しげに話しかけてくる、二人の少女。

 そして、ここは、朝の校庭。



 え、なに…?

 どうして?私、家にいたよね…?


 それに、……


 「あ、これこれ、昨日買ったんだけどすっごいうまいの!食べてみて!」

 

 そういって、鞄から菓子を出す少女。

 どうしたことか、と立ち止まる河合を不思議そうに見つめて、


 「どしたの?」

 「あの…」


 声を掛けると、にこっと笑って菓子を差し出す。

 泥もついていない、汚れてもいない、その菓子。

 

 「…ね、ねぇ…、どうしたの…?」

 「んー?」

 「なになに、河合、寝ぼけてるー?昨日一緒に買い物いったじゃん?」


 そういって、可愛らしいペンを見せてくる、もう一人の少女。

 胸元に刺してあるそれは、菓子をわけてくれた少女の胸にも、そして


 「私も…?」


 河合の胸元にも。


 

 昨日、買い物…?

 あれ……


 昨日、昨日、昨日……

 学校…


 「やだー、ちゃんとねた?」

 「昨日、学校終わったら一緒に買い物いったじゃん?修学旅行の買い物行こうって。」


 修学旅行……?

 あれ、そうだっけ…?


 確か昨日は、……川辺で…

 あれ……何が、あったんだっけ……


 困惑して考え込む河合の肩をぽんぽんっと叩く二人の少女。

 その少女の目には、純粋にこちらを気遣う様子が伺える。

 

 「修学旅行、一緒に……?」

 「ちょっとー、どうしたの?」

 「一緒に回ろうって約束したじゃん?」

 「一緒に……?」


 二人に、口々に言われて。

 一緒に修学旅行で、回る?


 「じーちゃんと、ケンタにお土産かうんでしょ?」

 「じーちゃんと、ケンタ…?」

 

 言われて、聞き返す。

 誰のことだか、検討がつかない。

 私に、おじいちゃんは、もういないはず。

 ケンタ、……親戚にも、いないよね……?


 「ちょっと、ほんとどうしたの?」

 「河合ん家のおじーちゃん犬と、子猫でしょ?名前、間違えた?」

 

 そう、おじいちゃん犬と、子猫。

 名前つけてあげなくちゃって…そうだよね…?

 

 「おじいちゃんと、ケンタ…」

 「うんうん、可愛いお洋服かってあげるんでしょ?」

 「うちのチョコにもかってあげなくっちゃ、一緒にいこうねっ!」


 そっか、おじいちゃんと、ケンタ。

 名前、つけたんだっけ…

 

 修学旅行、行って、お土産買わなくちゃ。

 一緒に…


 一緒に…?


 「一緒に…?」

 「あったりまえじゃーん!なになに、イヤなのっ?」

 「えー、そりゃないでしょーっ、友達じゃんっ!」

 

 友達。

 

 友達…?


 「友達…」

 「でしょ?」

 「ちがうのー?」


 笑って河合の手を握る、二人の少女。

 二人とも、にっと笑って、首をかしげて、自分を見ている。


 「うん、友達…」

 

 友達。

 私の、友達…。

 

 「そ、友達でしょっ!」

 「やーん、朝からうちら、ラブラブじゃん!」

 

 二人に微笑まれて、おずおずと、笑顔を返す河合。

 ほんの少しあった違和感が、ほんの少しずつ、馴染んでいくのを感じる。

 



 キーンコーンカーンコーン


 「あ、やばっ!はしるよっ!」

 「続きは休み時間にねっ!」



 二人に昇降口へと手を引っ張られる。

 

 「うん、仲良し」


 

 小さく呟いて、彼女は自分の足で、走り出した。

 



 


 うん、そうだよ。

 良かったね。


 ボク、いいもの見せてもらったし。

 おじいちゃんも、ネコも、あったかかったってさ。

 ケンタって名前、悪くないとおもうよ。


 おじいちゃんも、それでいいってさ。


 さて、まだまだボクは、お礼してこなくっちゃ。

 






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