命題3:超感覚的真実在
かつて、古代ギリシャにおいて斬新な思想を持った哲学家がいた。
彼はこう主張した。
「私達は普段、ある物質の本質の影しか見ていない。すなわち、この世に存在するあらゆる物質は、ある完全なる世界に存在する本質の贋作であり、同質にして否なるものである。」
そして
「その完全なる世界こそ『イデア』という理想郷、全ての美があり、我々が感じ取る感覚の本質が存在するのだ」
と。
これがかの「イデア論」の起こりである。
当時は誰もがその存在を否定したイデア。
しかしもし、それが本当にあったとしたなら…?
その未開の理想郷に到達した者がいたとしたら…?
そしてその世界の本質を変えたとしたら……?
全ての形相が集う場所、イデア。
そこには全てがあって、何もない。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「イデア?」
俺はその呼称を復唱した。
「そう、イデア。私達はココをそう読んでいるわ。」
ここは砂漠の真っただ中。
あの後。
目の前で、拳銃一丁であの化け物をハードなウェルダンにした少女、笠音詩乃が俺に「案内したい場所がある」と言って来た。
そのため、行くあても無い俺は仕方無しに付いていくことにしたのだ。
「イデアねぇ…。お前の命名か?」
「違うわ。私だったらもっとカッコいい名前を付けるもの。例えば『ミ〇ーワールド』とか『精神と―の――』とか」
一部風で聞こえにくくなったの仕様であって決して編集されたわけではない…はずだ。
「どっちももろパクりの上厨二じゃねーかっ! ならイデアの方がまだマシ――」
と。
チャキッという金属音の後、拳銃を俺に向けて構える笠音。
「…なんか言った?」
笑顔なのが逆に怖い。
「……何でもないっす」
防御するすべも無い俺はホールドアップする。
「わかればよろしい。で、このイデアについてなんだけど……。」
笠音が言うには――
ここはイデアと言う世界で、俺たちが普段すんでいる世界とは別の独立した世界らしい。
ここには俺たちが普段すむ世界に存在するあらゆる物質、思想、概念、そして感情に至るまでの全ての「本質」が存在しているらしい。
先程の化け物は人間の「恨み」や「憎しみ」のような負の感情の本質が具現化されたもの、ということだ。
因みにこの感情の本質は消しても消しても消した分だけ溢れてくる上、負の感情の本質は手当たり次第辺りを攻撃してくるため情け容赦無く潰してよいとのこと。
そして話を戻すと、この世界においてその本質を塗り替えたり、破壊したりすれば俺たちのすむ世界の物質を思うように変質させることが出来るのだという。
「そんな便利な世界なのか?」
「ええ。ただし……イデアの持つ力――本質を変えるという力を行使するには、イデアに存在する思念体―つまり私達ね―の意志を統一する必要があるの。」
「意志を統一?」
「そう。例えば…『ラーメンを食べたい』と願っても、他の誰かが『あぁ、カツ丼食いて~』って願ってしまうと、どちらの願いも相殺されてしまう……そういう性質がイデアにはあるらしいの。だからイデアに存在する全ての人に協力を仰いで意志を統一する必要がある。」
「意志を統一、ねぇ…」
さっぱりわからん。
とりあえず唯一わかったことといえば……
「お前、腹へってるのか?
やたらと食い物の例えばかりしてるけど。」
「なっ!? ち、違うわよ!!」
すると。
ぐぎゅるるるるぅ……
見事なタイミングで笠音の腹の虫が鳴いた。
「~~ッ!!うっ…うぅ…。」
余りに恥ずかしかったのだろう、耳たぶまで真っ赤になっている。
分かりやすいヤツだな……「とっ……とにかく!! イデアっていうのはそういう物なの!! だから今イデアに存在する全ての人を集めて、互いに協力すればイデア本来の力を行使できる!!」
「…よくわからんけど、俺をそれに協力させるためにここまで連れてきたわけか?」
「そうよ。……今更だけど、協力しないなんて言わないでしょうね?」
半ば無理やり連れてきておいて、協力しろって…
んな無茶苦茶な。
しかし、協力する以外に選択肢も無い。
「そいつに協力すれば帰る方法を教えてくれるんだな?」
「ええ……。今は無理だけど。
向こうの世界へのゲートには開くタイミングがある。だから開くタイミングを教えてあげることくらいなら出来るわ。」
「……つーか、さっきの話からすれば、俺がさっさと帰っちまうのが得策なんじゃないのか?」
「…取引材料だから詳しくは言えないけど、次のゲートが開く時間は…1週間後よ。それまでは帰れない。」
「なっ……!?」
今日は4月1日だから……俺の春休みと始業から三日間が全てぶっ飛ぶぞ!?
「ああ、大丈夫。帰ったときの時間は、ここに来たときの時間からものの1分くらいしかたってないから。」
「都合いいなー…」
「そもそもこのイデアは時間軸の「本質」すら存在する完全な世界よ? 私達の住む世界と同じように時間が流れている方が不自然じゃない。」
「ま…まぁ、確かに…」
「……さて、一通り説明し終わったところで。」
そこで一旦話を区切ると、笠音は足を止めた。「ここが私達のこの世界における住みかにして本拠地。エレメント・キャンプよ。」
「……なんでも名前を付けりゃいいってもんでも無いと思うんだけどな…」
エレメント・キャンプか…
なんつーか……もう厨二すぎて何も言えねぇな…
多分某掲示板のスレだと
「エwレwメwンwトwww」
とか
「ダメだコイツ、もう手遅れだお(爆)」
とか書かれるんじゃないか…?
砂漠の中でwの藁が大量に茂っているっていう…
「ぼけーっとしてないで早く来なさいよ!!」
「!! お、おう!!」
いかんいかん。このままだと、いつ笠音詩乃の厨二に対して「厨二乙www」とスレを回すか知れたもんじゃない。
さっきはセラピーとはいえ「否定しない」って言っちまったしな。
それに間違えて口を滑らせれば先程の銃口が俺目がけて火を吹くことは自明の理だ。
気を付けないと、な…。
生きて帰るためにも。
超☆展☆開(キラッ
……な命題3でしたっ(汗
設定厨丸出しな内容でしたが、理解できましたでしょうか……?
恐らく蓮と同様に
「ふむふむ、さっぱりわからん」
って人も多いでしょうね…OTL
自分の中で作られた設定を説明するのがこれほど難しいとは……
分からない点がありましたら、遠慮なく言ってください。
そのたびに改良していくつもりです(;^_^A
で、今回はイデアに関する説明だけでしたが、命題4では詩乃が以前呟いていたESUと、彼女曰く「能力」についての設定に触れていこうと思います。
では、また会いましょう!!




