動く、変わる未来へ
深夜の2時を回った頃。コンビニの駐車場には、夜の暗闇に溶けるような黒いワゴン車が一台だけ止まっている。
トレンチコートを深々と羽織った髭の濃い男は、缶コーヒーの飲み口にタバコを落とした。ジュっと火が水によって消される音を確認し、ゴミ箱へ投げ入れた。
そのまま遅い足取りで、黒いワゴン車の後部座席に乗り込んだ。
「今日だ。」
後部座席とは名ばかりで。中は座椅子をとり、広々としたスペースに改良してあり。そのスペースに無線機の類いやらパソコンやらをめちゃくちゃにほりこんであった。
男は手前に置いている、警察が使っているタイプの無線機だ。そのマイクから声がしている。
[現在!西区方面に逃亡中の女子高生を追走中!特徴は○×高校の制服をきた長髪!錯乱状態の為、応援要請する!どうぞ!]
男はマイクをかけ直した。
「彼女も動いている.....となれば奴を追いかけていると見るべき。」
頬杖をついて考える。
「彼女が言う未来は、丁度2時間後。」
髭を擦り、口元を曲げる。
「本当に見れるのか...未来の変更点を。」
警察のサイレンがあちらこちらから聞こえる。背後からは足音と警官の声
「まちなさーい!」
「はぁはぁ....」
動機に呼吸 が追い付かない。脇腹に鈍い痛み。でも止まれない。
「前野さん!」
さっき、唐突に前野さんから電話が掛かってきた。[助けて!学校にいるんだけど、誰かに追いかけられて]と。
気づくと一心不乱に学校へ向かっていた。
もちろんこの鳴り響いたサイレンは俺をおっているものではけしてない。ただ、補導をする警官に構ってる余裕もない。
なので絶賛逃亡中だ。
「また助けてやる。何回だって!」
脳裏に昔話が沸いてきた。