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確変2。
「大丈夫?」
田井中は俺の胸の中で、黙って頷いた。
「そか。とりあえずここを出ないか?」
「...うん。」
ゆっくりと離れて立ち上がり、俺に視線を向けて手を差しだした。目元が赤く腫れた、まだ息も整っていない彼女は何故か笑っていた。彼女の白い笑顔に俺は少し見とれていた。
彼女は、俺が手を握りかえすのをただ待っている。
「帰ろう...」
俺は握りかえした。その瞬間、彼女は俺の手を勢いよく引っ張った。
「ごめん。」
視界は暗くなった。
私はやってしまった。時間軸が狂ってしまう程の間違いを。だが、この世界は今までにない変化が生まれた。
今私がおんぶしている眠った長井くんが、先に言った事が事実なら、可能性はある。ついに終われる。
ならむしろ、全てを隠さなければならない。深みに入れてはならない。
肩から垂れる長井くんの腕に頬を寄せた。
「私がやってあげる。全て。全ては終わった時に。」
いとおしくも狂おしいこの感情が私の原動力だと思っている。この原動力は、同情で消えてしまう火。
時間の放浪者は孤独。先の長井くんから聞いた言葉だ。
私は長井を背負って夜道に消えて言った。