第四話
「地獄を見れば~心が騒ぐ~戦いは飽きたのさ~」
「オーッ!」
会場内は音楽に合わせて歓声が上がる。
一部の人間は、ピョンピョンと飛びはね、変な踊りを踊り、黄色い点灯棒を振りまくっていた。
異様な熱気が室内に立ち込める。士郎はそれを、なかば呆然として見ていた。
「なあ、あの歌は何なんだ? えらく渋めの曲だが……」
「ああ、あれは装甲騎兵ボトムズの<炎のさだめ>ですよ。80年代のアニメの曲です。」
「お前、詳しいな。結局、お前もこいつらと同類じゃないのか?」
「否定はしませんけど~」
渋い曲を歌うのは殻倉 あつなと言う少女だった。
被害者がファンになる事もあり、なかなかの美人でコスプレも似合っていたが、士郎は亡き妻の方が上であり、学校では「紫の薔薇のつぼみ」などと呼ばれいるらしい娘の鏡子の方が顔は上だなと思った。
「そっとしておいてくれ~明日に~ああ繋がる今日までは~」
あつなはネガティブな歌詞を元気ハツラツに歌い続ける。
周りを盛り上げる雰囲気を彼女は持っていた。
士郎はどさくさに紛れて本日11本目のタバコをふかす。
「明日になるまではそっとしてくれ……か。まるでこれからムショにでも入る奴みたいだな」