第十話
犯人は遂に逮捕される。
「お父さん、遂に逮捕されたんだね!」
新聞を読んでいる士郎に、鏡子はかける。
新聞の紙面には事件の事が書かれていた。
<犯人は小林 敏子(22)>
「ああ、そこに書いてある通りだ。」
「ふーん。」
この地味な名前では誰もピンとは来ないだろう。
この犯人は、コスプレアイドルの殻倉 あつなの事だった。
全ては彼女が周到に仕組んだ事だったのだ。それを、彼女は全て認めた。
友人にアリバイの口裏合わせをしていたが、無駄に終わってしまった。特殊な計画犯行をたてた割に、彼女はかなりずさんな部分があったからだ。
「どうした? 鏡子。」
「この事件、TVでやるんでしょ? ワイドショーとかで。」
「だろうな。」
「だったら、どんなだったか教えてよ。昼間は学校だから、TVみれないし。」
「いいぞ。」
「え、いいの? さっすがお父さん心が広いね!」
そういって、鏡子は士郎を野次馬気分で見つめる。
士郎は、別に娘なら話しても構わないだろうと思った。鏡子は、家では甘えん坊でお調子者っぽいが外ではとても口が堅いのだ。家で話した事は、外に漏らさない。
「実はな、犯人は……」
新聞を下すと、士郎はタバコを一本取りだし口にくわえた。
士郎は、長話をするときはタバコをふかす癖があった。