解放
ようやく、遠くから見覚えのある声がした。
「おーい、悠斗! 場所取ってくれてたんだな!」
翔太と大輝が手を振りながら近づいてくる。
「……来た。」
悠斗は体を起こした。
全身がだるいが、それ以上に胸の奥に「解放感」が湧いた。
――これで、ここに縛られずに済む。
ブルーシートを二人に任せ、
「ちょっとコンビニ行ってくる。」とだけ言い残し、
悠斗は人混みの方へ足を踏み出した。
すでに公園の周囲は浴衣姿や家族連れでごった返している。
汗の熱気と、焼きそばやかき氷の匂いが入り混じる中、
悠斗は肩を縮めながら人をかき分けた。
やっとの思いでコンビニに着いたが、
そこには長蛇の列ができていた。
「……マジかよ。」
悠斗はコンビニの前にできた長い列に、しぶしぶ並んだ。
体はだるく、頭がぼんやりする。
汗でTシャツが肌に貼りつき、息をするだけで熱が肺に溜まる感覚がした。
前の人たちは楽しそうに話している。
「早くかき氷食べたいね」
「花火、どこで見る?」
その声が、遠くの世界のことみたいに感じられる。
ふと、横から視線を感じて顔を上げた。
浴衣姿の二人組がこちらを見ている。
佐伯美桜と高城華だった。
華が驚いたように声を上げる。
「あれ? 悠斗?」