炎天下の孤独
相沢悠斗は、昼過ぎの昭和記念公園にいた。
手には折りたたんだブルーシートと、水を入れたペットボトルが数本。
正直、花火大会なんてどうでもよかった。
家でゲームでもしていた方がずっと楽しい。
でも、断るのはもっと面倒くさい。
それに――彼女も、気軽に誘える友達もいない。
「……まぁ、やるしかないか。」
木陰の少ない芝生広場にシートを広げ、四隅にペットボトルを置いた。
場所は簡単に取れたが、まだ太陽は真上にあり、熱気が地面から立ち上る。
人の気配はまばらで、蝉の鳴き声だけがやけに大きく響いている。
悠斗はコンビニの袋からお茶を取り出し、一口飲んだ。
口の中に広がるのはぬるい緑茶の味。
スマホを取り出して時間を見ると、まだ午後一時前だった。
花火が上がるまで、あと六時間以上。
「……長ぇな。」
炎天下。
悠斗はブルーシートの上に寝転がり、腕で顔を覆った。
目を閉じても、まぶたの裏は赤い。
風はほとんどなく、空気は重く、じっとしているだけで汗がにじむ。
ポケットの中のスマホが気になったが、取り出さない。
バッテリーを温存しなければ、夜の連絡が取れなくなる。
することがないからこそ、余計に時間が遅く感じられる。
「……まだ一時間しか経ってないのかよ。」
空に向かって小さくつぶやき、再びごろりと横を向く。
芝生の匂いが鼻につく。
遠くで、子どもの笑い声と、蝉の鳴き声だけが続いていた。