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第8話:逃亡する宰相と“最後の罠”――リリアーナ、剣を取る

「……宰相の姿が王国の北方領・フェルディアで確認されました」


報せを持ってきたのは、王国直属の騎士団副長――ハロルド。

エドワードの信頼厚い部下であり、今回の事件を通じてリリアーナとも密かに連携していた人物だ。


「フェルディア……国境地帯の要衝ね。あそこなら、密出国も可能」


「ただし、そこにはルシウス直属の私兵が潜んでいます。正面からの突入は困難です」


エドワードは眉をひそめた。


「……やつは逃げきれれば勝ちと踏んでいる。国外に出れば、王国の法が及ばなくなるからな」


沈黙が流れる。


そのとき――


「私が行きます」


静かな声でそう言ったのは、リリアーナだった。


「リリアーナ、お前は療養中だ。すでに役目は果たしただろう」


「いいえ、まだ終わっていません」


彼女は静かに立ち上がる。

まっすぐに、エドワードを見つめて。


「私がこの国に戻るきっかけになったのは、宰相の陰謀。

家族を救えたのは偶然じゃない。

ここで私が手を引けば、また誰かが“見えない悪”に泣くわ」


「だが、危険だ」


「それでも、私は“公爵令嬢”よ。

守られるだけの存在じゃない。

家族を、王国を、守る覚悟があるの」


――その夜。


リリアーナは静かに一振りの剣を手に取った。


それはかつて、父が贈ってくれた“護身剣”。

飾りに過ぎなかったそれは、今、彼女の意志で本物の武器へと変わる。


(私は、悪役令嬢だった。ずっと人を傷つけて、誰からも疎まれていた)


(でも、それでも――この手で守れるものがあるなら)


(私は、悪役のままで、戦う)


そして数日後。


リリアーナは騎士団の部隊に加わり、北方領・フェルディアへと向かった。


そこは雪の舞う静かな町。


だが、陰謀の残り火はまだ燻っていた。


宰相の配下が布陣する砦。

潜む刺客。

張り巡らされた罠。


「ルシウス……やはり、あなたは簡単には終わらない男ね」


闇の中、仮面を外した女は、冷たい空気の中で凛と剣を構えた。


誰よりも気高く。

誰よりも誇り高く。

かつて“悪役”と罵られた令嬢は――


今、正義の剣を振るう。

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