スナイパー
ダルクのカフェ、グロリアスについたころには時刻は午後六時を過ぎていた。
「うっ・・・おえっ・・・」
「大丈夫か?」
「あぁ、主人公がこんなところで吐いてちゃだめだ・・・」
「いや、もう吐いてるぞ」
帰りも当然、馬車を使ったのだが、雨が降ってたら酔わないみたいな都合のいい能力は持っていない。酔った。
「それで、ヤオさんたちがどこにいるかだが・・・」
「そうだな。ムーンビースト関係のニャルラトホテプの信者たちのアジトはまだあるにはあるけど、お前が先天的能力使うレベルのムーンビーストがさっきのアジトにいたと考えると、別のアジトにいるとも考えにくいな」
一番強い奴がいるところに一番盗られてはまずいものを置く。当たり前の行為だ。でも、そうなるとどこにいるんだ?
「まぁ、なんか飲みながらゆっくり考えようぜ」
「だな。俺レモンティーで」
「あいよ」
そういいながらダルクが飲み物を入れようと立ち上がった時
カラカラーン・・・
扉が勢いよく開く音がした。
「いらっしゃいませ。お好きな席に・・・」
「た、助けてくださいこのままだと私っ、私!」
ダルクの発言を遮りながら、緊迫感のある声で助けを求めている。ん?そういえばこの声・・・
俺がもしやと思いその人の方を見ると、そこには見覚えのある姿があった。
「あれ?アインスさん?」
俺に今回のことを依頼したアインスさんだ。
「もしかして、依頼主か?」
「そうだ。何かあったんですか?」
俺が声をかけながらアインスさんに近づこうとしたとき、外で何かが光ったのが見えた。
建物の上、光はそこまで大きくなく、強くもなかった。そして光ったのは一瞬。まさか、スナイパーか⁉
俺は慌てて刀を手に持ち、窓とアインスさんの間に入って居合の構えをした。そこから発砲音が聞こえたのは一秒もしなかった。発砲音とほぼ同時に窓が割れ、弾丸が迫ってきた。俺はそれを斬り飛ばした。
「ダルク、アインスさんを頼む。俺はスナイパーを狩る」
「わかった。お客さん、こちらに」
ダルクは発砲音でとどめを刺されたのか、腰が引いて立ち上がれないアインスさんを外からの射線が切れるところまで運び出した。
俺は割れた窓から外に出て光がした方向まで向かった。
スナイパーライフルは扱いが難しい。反動が大きく、風による影響も受けやすいからだ。しかし、あの弾は確実にアインスさん一直線に飛んで行った。俺が斬り飛ばさなければ確実に死んでいただろう。そうなると相当の実力者。でも、そうならなぜスコープの光りの反射を許した?今が真昼間ならまだしももう日は沈み切っている。実力者にあるまじきことだ。油断してたのか。それとも・・・