傘
えー、なりきりチャットにハマって書く時間が減ってしまいました。進展はあまりありませんがどうぞ
さてと、困ったぞ。どうしよう。居場所を聞く相手がいなくなってしまった。
俺は刀を鞘にしまったのち、頭を抱えた。一体どこにいるんだ?このアジトの中にいるのか?そういえばあいつ一言も「生きている」とは言ってなかったよな。生きてるのか?
そう少し不安に思っていると、あることを思い出した。
「まずいダルク死んだ」
俺は大急ぎでダルクの元まで戻ろうとしたその時。
ドサッ
後方から何かを置くような音が聞こえた。振り向くと、その何かは気を失ったムーンビースト。しかも三体だった。そして、それらはネクタイで縛られている。
「おい、勝手に殺すな」
そういいながら入ってきたダルクは、ボロボロになっていてあちこちから血を流していた。
「お前、大丈夫か?」
「はっきり言って大丈夫なわけない。マインお前回復系の後天的能力持ってないか?」
「そういうのは組織所属の医療担当の英雄に期待しろ」
「お前主人公になりたいくせに怪我してる仲間助けられないのか?」
「じゃあいい治療方法がある。ショック療法っていうんだが・・・」
「それ発狂した奴にやるやつ!」
多分だが今のダルクに俺が本気でショック療法やったら怪我が悪化するどころかポックリ逝ってしまう。冗談でもやめておこう。
「それで、行方不明の人たちは見つかったのか?」
「いや、まだだ。ムーンビーストのボスが俺たちの言葉話せたから聞いてみようとしたんだけど、答える気ないみたいだから先天的能力使った」
「お前の先天的能力、そういう時不便だよな」
「まぁな。負けることは決してないけどな・・・」
俺があまり先天的能力を使わない理由だ。勝つだけなら簡単だが、英雄は、勝つだけではよくない時もある。相手を恐怖で縛って喋れなくする≪おにごっこ≫はこういう時不便だ。
「それで、なんかあてはあるんか?主人公」
「あるわけないだろ。主人公は万能じゃないんだよ」
「主人公にできないことはないって言ってたのはどこのどいつだ?」
「小二のころの話を持ってくるな」
そう考えると、俺主人公になりたいって言ってからかれこれ結構な時が経ってるんだな。過去の俺、まだなれてないすまぬ。
「まぁ、ここで考えるのもあれだし、一旦俺の店戻るか?」
「ああ,そうする」
あまりここで突っ立って考えるのもよくない。一旦場所を変えるべきだな。
そう思って外に出ると、黒く染まった空から水が降ってきていた。
「雨か・・・」
「マイン、傘あるか?生憎俺は一つしかない」
そういいながらダルクはカバンから折り畳み傘を取り出した。
「いや、持ってない」
「だろうな。お前傘ささないもんな」
ダルクの言う通り、俺は傘を差したことがロクにない。剣士である以上、片手がふさがるのはあまり好きではないからだ。小学校低学年の時は傘を持ってきてこそいたが、差さずに剣としてぶん回してた。あれ、開けば盾にもなるとか思ってたな・・・
「お前のことだし風邪ひくことはないだろうけど、気をつけろよ」
「主人公は風邪ひかねぇよ」
「どういう理屈だよ・・・」