40.鑑定
手術後はびっくりする位の量の尿漏れに悩まされたが、2、3ヶ月経つとだんだんオムツが小さくなって半年後には一般的に売っている軽い尿漏用下着で済む程に回復した。しかし、世の中はそれと反比例する様に新型コロナウイルスが蔓延してきた。コロナが豪華客船によって日本に上陸する1ヶ月強前が手術日だったので助かったが、数ヶ月遅かったら手術も延期で癌が進行なんて事になりかねなかった。
手術から半年位経った頃、尿漏れもほぼ解決しコロナも下火になったので恭作は直接仁美さんに連絡して鑑定を受ける事にした。娘の愛奈と仁美さんは半年〜1年に1回位のペースで鑑定してもらっていて仲が良いらしく、LINEのアドレスを教えてもらい愛奈の父親という事で鑑定を申し込んで直ぐに予約が取れた。
仁美さんとは東武東上線のとある駅の近くの喫茶店で待ち合わせした。コロナは一旦少し落ち着いた時だったのでコロナ初期は電話での鑑定しか対応していなかったが対面での鑑定が可能になった直後の事だ。
鑑定は恭作から悩みについて質問するという形式だが、とりあえず2年後に迫っている定年後の仕事について聞いてみたら、
「それは問題ないわ。何か教育関係の仕事をしているのが見えるわ」
との事だった。これは定年後就任した会社内の教育機関の校長職のことだった。しかしそれが決まったのはその一年後の事でその時点で社長ですら未だ決めていなかった人事だった。仁美さんからは
「それだけじゃないでしょ。あなたの悩みは」
と話をふられてしまった。
「実はちょっと言いにくい相談になっちゃうんですけど・・・」
とどう切り出そうかと悩んでいると
「奥さんと別れて家を出たいんでしょ」
と、いきなりのど直球で来られてしまった。'やはり愛奈が言っていた友達の親の離婚話とは俺のことだったのか!'と思い覚悟を決めて仁美さんと対峙した。
「娘はどこまで知っているんですか?」
「あなたに女の人がいて離婚したがっているという事と、あなた達が前世で母娘だったという事は少なくとも話したわよ。でもあなたの問題はそこからよ。今日来てもらったのはその忠告なんだから。今の奥さんと別れるのは正解よ。今の生活を我慢して続けるとあなた早死にするわよ。あなたの身体について前に愛奈ちゃんを通して観た時はお腹の下あたりが問題だったけど今は大丈夫みたい。でも今後の事を考えると別れてその女の人と幸せに生きる道を選んだ方が良いと思うわ。今のままだとまた何かの病魔に襲われるかも。子供達も立派に育て上げてもう人生も終盤に入っているんだからこれからは幸せに生きることを第一に考えなくちゃね」
恭作はドンと背中を押された気持ちだった。仁美さんのアドバイスは自分が正に考えていた事で、でも家族の事を考えるとそれを実行するのにはもう一歩踏み出す勇気が必要だったからだ。
それにしてもこの時点で恭作と優子の不倫の事実を知っているのは当事者の二人以外では、優子の親友二人、恭作の同窓会メンバー6人強の計10人弱しかこの世で存在しない筈だ。
なんでこの世でその人数しか知らない話をそこまで知っているの?というスピリチュアルTV番組のゲストの様な驚きを経験した。
約束の1時間には未だ少し残っていて仁美さんとも大分打ち解けてリラックスして来たので聞いてみた。
「何でそんなに人の事が見えるんですか?」
「鑑定を依頼された人にアクセスしようとすると、例えば障子に指を突っ込んで穴を開けて覗くような感じで見えるんですよ。それで人によって見える範囲も違うんです。こういう世界を信じていない人の事は見にくいし、心を開いてくれる人は見やすいし。あと未来の事は本人次第で変わるものもあるんです。だから鑑定して差し上げて少しでも幸せな未来を迎えられる様に過ごして欲しいんです。」
この話で一気に仁美さんのファンになってしまった。人の事が見えているだけで無く、それに対するアドバイスが人生観、価値観などを含めて尊敬に値するものだったからだ。
ちなみに仁美さんの鑑定結果は5年以上経った2025年末現在、恭作の不倫の件以外もほぼ現実となっている。愛奈の就職の内容、愛奈の彼氏の就職の内容、親友の奥さんの病気、私の定年後の仕事内容など予言どおりになっている。外れたのは2025月7月の地震予知位だ。
-続く-




