35.同窓会
恭作は単身赴任する何年か前に小中学校時代の同窓会に参加した。久々の学年全体の同窓会という事でサッカー部の元キャプテン潮谷君が行方不明だった恭作の居場所を見つけてくれたことにより35年以上ぶりに参加できたのだ。後で考えるとこの事が恭作の老後の人生に影響を及ぼしたかも?
小中学校時代の地域は練馬駅や中村橋駅が最寄りでその頃は畑や林が多く、また鐘紡の工場が練馬駅北側にあってその社宅(平家一戸建て)や電電公社(現NTT)・国際電電(現KDDI)の社宅(当時憧れの鉄筋コンクリート4階建)があり同級生のかなりの割合が恭作も含めてその社宅族だった。そんな理由もあり同窓生のほとんどは大人になってからは散り散りばらばらになり、50歳代になって集まれるのはすごい事だと思った。
その後は恭作が所属していたサッカー部や、そこと仲の良い?女子バレーボール部が中心となって年に1度くらい集まって都内のとある店(同窓会メンバーの経営しているカフェバー)を貸し切って少人数の同窓会をやっていた。
その少人数同窓会の何回目かの日、例によって午後3時頃から飲み始め、一次会が終わったのは8時過ぎで二次会にも行った。恭作はかなり酔っ払っていて、どの時点でそんな話をしたのか覚えていないが二次会の終わり頃には恭作と優子の不倫話で大盛り上がりになっていてそこからは記憶がある。今までその不倫の事実を知るのは世の中で当事者の二人と優子の親友であるシャチとアンジェラの計4人だけだったが、その日から一挙に10人以上になってしまった。
恭作としては多分誰かに話したくてしょうがなかったのだが付き合いは会社関係がほとんどで、社内不倫した恭作にとってはとても言えなかった。それに反してこの同窓会は何でも話せる唯一の機会だった。酔いで自制が効かなくなったことも手伝っての告白だった。
同窓会の幹事役でとある出版者の編集をしている女性の小崎さんは心配して聞いてきた。
「シマッペ、娘さんいるんだよね。仲良いって言ってたじゃないの。大丈夫なの?」
小学校時代のあだ名で呼ばれた恭作は答えた。
「娘には何か感付かれてるかもしれないんだよね。'よくあんなママと一緒にいられるね' なんて言ってくるんだよ。俺は娘が大学出て独り立ちしたら離婚したいと思っているんだけど、賛成してくれそうな気がするんだよね」
「娘さん応援してくれそうなんだ。良かったね。熟年不倫をテーマにした、ちょっとした小説みたいで良いね」
と彼女は優しく慰めてくれて、その後小川糸さんの「喋々喃々」という不倫小説まで貸してくれた。
帰りの電車は同方向の潮谷君と中央線に乗っていたのだが、彼曰く恭作は電車の中で大声で不倫と離婚したい事を喋っていたらしい。皆んなに暴露したせいで嬉しくて調子に乗っていたのだろう。
この潮谷君と小崎さんは例の学年同窓会で会ってからこういう集まりにはだいたいいつも一緒に参加していて、同窓会のメンバーや場所が多少変わっても2025年末の現在でもまだその状況は変わらない。特に潮谷君にはこの時の告白事件をよく酒の肴にされているし、小崎さんには最新の状況を報告している仲だ。ある意味、恭作にとって何でも話せる、そして新しい人生に向けて背中を押してくれる親友が出来たように感じた。
さて問題はその告白事件飲み会の翌朝で、二次会まで含めて7時間近く飲み続けたツケとしてクルマでの通勤途上、ガードレールに左腹をぶつけてしまった。二日酔いのレベルを超えていて内輪差の感覚が狂っていたんだろうが、そんな事で済んで良かったと猛省した。ちなみに修理代は20万円を超えた。
ちなみにこの時は2018年、娘の愛奈が専門学校生で仁美さんに出会った頃の事だった。同窓会と何の関係の無い仁美さんが恭作と優子の関係を知る可能性は皆無だったのにもうこの時は・・・
-続く-




