32.悠介
二人は大学近くのファミレスにいた。相手の名前は悠介、愛奈とよく似た境遇だ。
実家は東京都だが、かなりの西部地区で同じ方向の愛奈の実家からクルマで30分以上更に西に走った所にある。彼もまた大学受験に失敗し、希望大学に編入を目指す目的であの専門学校に入って来たのだった。
専門学校から帰る時も中央線で国分寺まではよく一緒に電車に乗っていた。そういうときには色々話をして良く相談にのってもらった。彼は勉強はトップクラスで楽勝で編入出来る位置にいて尊敬していたし、母親との確執の悩みも打ち明けていた。彼という意識は全く無かったが。
愛菜と悠介は専門学校のクラスも大学編入後のクラスも同じ英米語学科で、悠介は自分の家からはとても通えないと編入の始めから大学のある千葉にアパートを借りて一人暮らしを始めていた。明るくて話しやすい性格でクラスでも2枚目半くらいの立ち位置で盛り上げ役だった。しかしその明るい悠介が大学編入してから急に元気が無くなったのだ。
「悠介、最近元気ないじゃん。何かあった?」
「恥ずかしいんだけど、俺ホームシックになったかも」
「えー!?信じらんない!私なんかようやく親を説得して、再来月からする一人暮らしが楽しみでしょうがないのに!アンタひょっとしてマザコン?」
「いや、マザコンっていうより家族大好きって感じかな。弟も両親も仲が良くて、一緒に住んでいた時はそこまで思ってなかったんだけど、いざ一人暮らし始めると家族がいないのが堪えてさー」
「家族仲良いんだねー。私ンチなんてママはお兄ちゃんばっかりだし、私は母親と仲が悪くてパパ大好きっ子で、多分両親の仲は悪いと思う。まあ悠介は私が話し相手になってあげるよ。バイト以外は暇だし、もうすぐこっちで一人暮らしも始まるし」
「あの噂の彼氏とは別れたんだ?」
「ああ、あのBMW乗ってるチャラ男?あんなの彼氏だったと思いたくない黒歴史だよ」
悠介は心の中で花火を何発も上げた。実は専門学校の頃から愛奈の事が好きだったけど、同級生でチャラ男の彼氏がいると噂が広まっていて諦めていた。ホームシックも事実だけど、一人暮らしを始めるという愛奈の話を聞いて元彼と同棲するんじゃないかと心配していたのも元気が無かった原因だ。
「じゃあまたちょくちょくこうやって話聞いてくれる?」
「もちろん、だけど勉強も教えてね。流石に大学の課題は厳しいわ」
愛奈にとって何が言良い感じだった。と同時に思い出した。
'あっ!これが仁美さんから言われたもう一つの事だ!'
-続く-




