30.初めてのカウンセリング
それはある私鉄沿線の駅前の喫茶店だった。
約束の2時の10分前くらいに着いてしまったので、空いてる席に座りその場所をLINEで仁美さんに告げた。
2時を少し過ぎた頃、その人は現れた。
「嶋愛奈ちゃんですね?私は平山仁美です。今日はよろしくね。」
不思議な感じの人だった。ぱっと見は普通のおばさん'ママ位かな?'なのだが、何かが違う。年齢不詳で雰囲気は静かだけど何かパワーと神秘さを感じた。
予め自分と母親の生年月日と姓名を送っておいた。それによって「算命学」によりある程度の事がわかるそうだ。しかし対面カウンセリングが進んでいくとその何十倍の情報を吸い取られた気がした。
「予め聞いていた悩みは母親との関係よね。それも大事だけどあなたを観ているとお父さんが見えてくるのよね。こっちの方が大事かもしれないな。お父さんの名前と生年月日も教えて」
と意外な質問が返ってきた。しばらく計算などしてまた会話に戻った。
「まず一つ目の悩みね。お母さんの事だけどはっきり言ってこの人は未だ子供ね。自分の事が第一で周りの事はそれが家族であっても二の次って人だから。あなたの方がよっぽど大人よ。これは単に精神年齢って事じゃ無くて、生まれ変わりも含めた魂の年齢って事なの。あなたが小さくて自我が芽生える前は問題なかったんだけど、ある所であなたは母親より歳上になったのよね。あなたの場合小学校高学年から中学生になるくらいからでしょ、仲が悪くなり始めたのは?」
全くその通りだった。小学生の時はまだパパが守ってくれていたから大した事無かったけど、中学生になるのと同時に単身赴任でいなくなってからが酷かった。
仁美さんの話は更に続いた。
「お母さんの事は色々腹立つ事も多いだろうけど歳下だからしょうがない、自分の方が大人なんだからと諦めるのよ。出来れば家を出るのが1番なんだけどね。距離を置けば時間が解決してくれることもあるしね」
「このままの成績を維持すれば、もうすぐ大学編入が決まるんです。編入したら家から大学は遠くなるので一人暮らししたいと思っていたんです」
「それならこのまま勉強に集中して編入頑張りなさい。今のあなたにはそれが最重要事項よ」
愛奈は心が軽くなった。'よーし、勉強頑張るぞー。あと数ヶ月だから'と気合いを入れた。
ここまでで約束の1時間が経ってしまった。他にも彼氏のことか聞きたかったのにと残念に思っていると、
「あとね、若い男の子も見えるんだけど、彼氏かな?BMWかなんかの外車乗ってる?」
愛奈は唖然とした。'正にそれそれ!何でBMWまで知ってるの?由紀さんにすら言ってないのに!'
「実はその事も聞こうと思ってたんですけどもう時間ですよね?」
「もう少し大丈夫よ。私ももっと話もしたいし。彼氏の件は大した事じゃないわ。嫌なんでしょ?サッサと別れちゃいなさい。大学編入したら新しい道が開けるわよ。私が話したかったのはそっちじゃ無くてお父さんの事よ。こっちの方が重要よ」
BMWに乗ってる彼氏は外観で惹かれて付き合い出したけど中身スカスカのチャラ男で別れたいと思っていた所だった。'あー!スッキリした。道が開けるって新しい彼氏?よーし、益々頑張るぞー!でもパパのことって何だろう?'
「あなたのお父さん、相当アタマ良くて会社でも重役がなんかでしょ。見えるわよ。でもね、色々あり過ぎて流石に今日話すには時間も無いし、今度で良い?編入決まってからの方が良いわね。とにかく今は大学編入一筋よ、頑張って!次回からは直接LINEで予約できるから。待ってるわ、愛奈ちゃん。」
愛奈がその後勉強に集中して、大学編入に成功した事は言うまでもない.
-続く-




