29.仁美さん
愛奈の選択した専門学校は都内にある外国語系のもので、2年後の成績が上位なら系列の大学に編入できるというものだった。その大学こそが彼女の第一志望大学だった。
そのパターンは恭作の親友である朝谷の次男、翔也の進んだコースだったので恭作は何の違和感も感じず素直に大賛成した。一方母親はと言うと世間体を気にする性格で'女の子なのに浪人同然な道を選ぶなんて。何処でも良いから入れる大学入ればいいのに。せっかく高いお金出して私立の大学附属高校に入れたのに'と不満だった。当然この不満は口に出さなくとも娘には伝わり、また具体的にもお小遣いの額で揉めるなど母娘の仲は益々険悪になっていった。
専門学校といってもその授業と課題は普通の文系大学より厳しいもので、その中で在学2年間で上位を取らないと大学編入できないので愛奈はかなり勉強した。当然恭作の家庭教師も続いたが、外語大レベルの課題となると流石にアメリカ駐在経験のあるといっても難しかった。
お小遣いの件は結局あまり貰えなかったので遊び盛りの愛奈はバイトもかなりこなした。学校が都内でバイト先には事欠かなかったので寿司屋やホットヨガなどで働いた。そこでの人生経験は彼女にとって貴重な財産となった。特にヨガでの先輩女子社員である由紀さんからは可愛いがられかなり仲良くなり、飲みに連れてってもらったりそろそろ編入が決まりそうな2年目には良く泊まりに行ったりした。
「愛奈ちゃん、もう20歳越えたんだから今日はガンガンのむわよ!最近元気無いから今日はお姉さんが元気づけちゃう。アイツ(同居してるパートナー)今日は帰って来ないから泊まっていきな。ところで何か悩み事でもあるの?」
「うん、実は母親がウザくて一緒に暮らすのも嫌な位なの。でも大学にもまだ編入出来るかわからないし、家を出るのは無理だし・・・」
「あのね、凄く良く当たる占い師さんがいるの。占い師というよりはスピリチュアルカウンセラーって言うらしいんだけど、TVでもやってる'突然ですが占っても良いですか?'に出てくる様な感じの人だよ。私も何回も観てもらっているけど凄いんだよ。絶対に私以外知らない筈の事をズバズバ指摘してくれて人生の方向性のヒントをくれるの。その占い師さんのレベルだと普通だったら何万円もする鑑定料が1時間たった6千円だよ」
「その人有名なの?何でそんなに安いの?」
「普段は普通のOLらしいんだけど、暇な土日なんかに口コミ紹介された人だけ観ているらしいの。その収益は犬猫保護団体に全額寄付しているからあまり客も取らないし無名で細々とやってるんだって。仁美さんって言うんだけどもし良かったら紹介しようか?」
愛奈は二つ返事でお願いした。悩みはいっぱいあった。
「母親の事が1番だけど、それ以外にもこのまま大学編入出来るかな?とか、彼氏の事とか、色々聞きたい」
「じゃあ私は今日それらの事は聞かないでおくね。だって私から詳しい情報漏れたと思っちゃうと信憑性が無くなるでしょ。本当に何でもわかっちゃうんだから、仁美さんは!」
そして数週間後のある土曜日にカウンセリングの日が決まった。
-続く-




