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類魂  作者: 嶋恭作ニ
第一章 運命の人
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25. I will be back

中国の天津工場設立プロジェクトは大成功だったが、創業開始から1年以上経っても作った製品がほとんど売れないという事態に陥っていた。これは営業/マーケティングの問題で恭作の担当外だったのだが、専務に昇格した身では責任を取らざるを得ない状況だった。投資した工場規模に見合った売上が無いという見込み違いの実質的原因は実は小山内社長本人が腹心の瀬島にリモートコントロール式にやらせた事であったのだが・・・


一方で恭作が元勤務していた埼玉の工場の製品は中国で爆発的に売れ、中国国内での生産を検討する段階にまでなっていた。これは恭作が開発、マーケティングして種を撒いていたものが収穫期になったというものだったが、この事で埼玉工場長の深原は実質何もして無いのに会社内での評価が上がりNo.2の座に上り詰めていた。彼がやった事は「深原の犬」と呼ばれるYESマンの幹部職で周りを固め、その犬達を恐怖政治でリモートコントロールして利益を搾り上げた事だ。その為恭作派の本当に仕事が出来る人材は反抗し、虐げられ海外工場や閑職などに左遷されていた。しかし、その悪事はすぐに暴かれた。その左遷された海外子会社社長達から小山内社長が海外出張し訪問した時に深原工場長の実情やその悪事を直訴していたのだった。

そんな中、小山内社長は恭作を呼びつけた。


「恭作君、中国の状況だが京都工場関連の製品がほとんど売れず、逆に埼玉工場の製品は中国で現地生産しなくてはならない程までになっているな。そんな中、現埼玉工場長の深原は天津工場の利用では無く内陸部の武漢とか重慶での工場新設を進めようとしている。深原は来期からは埼玉の事業から外して別の事業所にに移すので、君が埼玉に帰って工場長をやって今の天津工場を最大限活用して埼玉製品を現地生産してくれないか?ちなみに天津工場の代表は君のままにしておくから京都工場製品の現地生産についても引き続きお願いしたい」


「これも打診では無く、命令ですよね」恭作の頭の中は時計が3年前に巻き戻されていた。


小山内はニヤッと笑ってうなずいた。

'自分を脅やかすNO.2の深原を追い出しながら、同時に恭作に天津の失敗を帳消しに出来る何て名案なんだ'と心の中で自画自賛しながら。 


恭作は優子にも早速連絡したが、お互い複雑だった。

「結構この遠距離恋愛良かったし、移住まで考えたのにね。まあ候補の淡路島もまた地震があったし、関東でこのまま暮らすのもめんどくさく無いか」

と納得してくれた。


恭作は小山内に対して'勝手に人の事振り回しやがって!大体いい加減なマーケティングにより工事規模を独断で決めたのは小山内じゃないか!その穴埋めを俺にさせる気だな。天津の事業は成功すれば自分の手柄、失敗したら俺の責任というシナリオまで作っていやがる' と腹が立った。

'しかし冷静に考えれば自分は天津では人脈、経験、埼玉工場の事業では製品知識、開発、営業、生産技術全てを知り尽くしている。社長としては極当たり前の人事異動だな'と納得して覚悟を決めた。'3年前より遥かに簡単じゃないか'とも思い、埼玉の事業に関する海外を含めた主要な恭作派のスタッフ達に'I will be back!'というメールを発信した。この転勤ニュースで現埼玉工場長の深原に虐げられていた恭作派の人間は大喜びした事は言うまでも無い。


-続く-



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