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類魂  作者: 嶋恭作ニ
第一章 運命の人
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23.天津プロジェクト

中国の天津への進出のミッションを課せられた恭作は赴任2ヵ月も満たない2011年5月下旬に天津に初出張した。目的は中国人の出資候補者の(ファン)さんと会う為だった。黄さんと親しい現地の駐在員から聞いた話では、恭作の前任者の市村専務(小山内が社長就任する時に本命と自他共に目されていた人物で、社長就任争いの相手である小山内とは犬猿の仲と噂されていた。現在は小山内に次ぐ代表取締役専務に就任している)が別の中国出資者と天津進出を計画していたのだが、社長が小山内になって出資候補者が黄さんに変わったとの事だ。ここで会社の派閥争いや中国人出資者とのドロドロとした関係に気づくべきだったのだが、例によって鈍感で一本気な恭作は大して気にも留めていなかった。単純に前の出資候補者との話が遅々として進んでいなかったので出資者が変わったのだろう位にしか思っていなかった。


新しい出資候補者の黄さんは大金持ちで怖いという噂だったが実際会うと日本語は普通に喋れるし、性格も恭作と似ていて相性も良くツーカーで話が進み意気投合した。

ちなみに黄さんは恭作の2,3歳年上で、大金持ちで且つ天津の政府筋にコネが強く女性関係も大好きというある意味憧れる存在だ。当時彼のクルマは私有車として東京に2シーターのベンツとBMWハイブリッド、天津にアウディA8,上海にベンツSクラスセダンを持ち、東京にマンション2つ(豊洲と浦安),天津に実家とマンション1つずつ、上海にマンション2つ(その内一つは恭作も数回お邪魔したがオーディオ設備だけで億単位の金をかけている)を所有している。東京の神田に自分の会社を持ちそこの社長が本業だが、上海と天津に恭作の会社との取引している会社も所有している。さらに恭作の知っているだけでも天津には元妻、東京には今の妻、上海にはまた別の彼女がいてそれぞれに子供がいるはずだ。ちなみに天津生まれの中国人だが日本国籍を取得していて日本語もペラペラなのも納得だ。そんな凄い人なのに話をすると極普通の人で付き合いやすかった。


天津プロジェクトで結構大変だったのは夜の付き合いだった。白酒(バイジョウもしくはパイチュウと発音されていてアルコール度数は52度が最もポピュラー、42や62度もある)で乾杯してそれを繰り返すという飲み会が当たり前だった。相手は政府の役人だったり、黄さんの会社の幹部職だったり、とにかく工場を設立するには仲良くしておかなければならない人達ばかりだ。初回の飲み会は流石に倒れてホテルの部屋に運ばれたが、そのおかげで現地人に認められたのは言うまでもない。もし、ここでとことん飲まないとこれから協力してくれる黄さんや関連会社のスタッフからも信頼が薄くなるところだった。(それが出来ない日本人も恭作の周辺には何人かいて、失敗して帰国していた)恭作はこの後から白酒を飲む時は細心の注意を払う様にした。口当たりは52度とは思えない程柔らかなのだが、調子に乗って飲んでいると突然酔いが回ってくるという危険な酒だからだ。


黄さんやその他の中国人スタッフ達にうまく溶け込めたおかげでこのプロジェクトは異常な速さで進行し、初上陸から1年余りで土地の買収と工場建設が進み、天津工場が完成したのは2012年の夏だった。恭作は土地の買収や工場の審査や各種申請にほぼ2ヶ月に一回ペースの出張の時間を費やし、工場の中身は小山内社長の腹心である瀬島部長に任せっきりだった。これが偶然か作為的なものかはわからないが結果的にその事が再び恭作の人生を変える事となってしまった。


-続く-

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