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類魂  作者: 嶋恭作ニ
第一章 運命の人
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19. 試練

恭作は当時社長になったばかりの小山内から呼び出しを受けていた。


「恭作君、君は上島優子という社員と付き合っているそうだな。且つその上島君が君の指示だと言って工場内でパワハラしているそうじゃないか」


「確かに彼女とは仲が良いですが、彼女の能力が素晴らしいので色々と仕事を任せているんです」  


「君が誰と付き合おうと恋愛は自由だし会社の口出す事では無いんだが、仕事上それを利用して被害者が出ているのは放っておけん」


「いや、彼女はまともに仕事をしているだけで決してパワハラなどしていません。むしろ地方工場の悪い習慣を改善しようとして誤解されているんです」 


と、恭作としては不倫の事は触れずに事実を正直に伝えた。

事実、その工場には'何故そんな事しなきゃいけないの?'という習慣が多く蔓延っていて,古株とかその部署の長に尋ねても'昔っからそうやっているんだから、しょうがないんだ。今さら変えるのもカッタリーし(厄介だし)'という答えしか返ってこない。そのため、何人の優秀な人間が嫌気をさして転職していったことか。恭作も自分の責任範疇の業務は優子に手伝ってもらって改革していた所だが、それをパワハラ呼ばわりされるとはと腹も立ったが何とかこらえた。


「とにかく上島君を工場以外の事業所に転勤させろ。まあ都内の営業支社だな。それしかこの火を消し止める方法は無い。転勤に必要な人脈はこちらで紹介する」


二人の噂が尾鰭(おひれ)が付いて社長の耳に入り、反恭作派の小山内としては工場の人脈を利用してここぞとばかり攻撃したのだが、この時点で未だ恭作は派閥争いの事も自分が嫌われている事も気づいていなかった。むしろ不倫を責められなかった事で'しょうがない、この妥協案を受け入れるか'とむしろある意味味方なのかも知れないと思ってしまった。これは恭作に対する攻撃第一弾だとは知らずに。


幸い優子の引っ越したマンションの最寄駅は所沢から一駅遠いが都内へは通勤圏で都内の営業支社に通える範囲内だ。しかも都内での派遣社員の渡歩きが彼女の経歴の大半だったので仕事上は全く問題無い。こんな事になるとは予想してなかったがマンションも所沢近辺に決めて良かったと思った。優子も多少通勤時間は増えるがしょうがないと諦めて受け入れてくれた。


逆に2人の付き合いは目立たなくなり、ある意味やりやすくなった。彼女の帰りが通勤で遅くなるので猫ちゃん達には少々かわいそうだったが、なんとか逆境を良い方向に転換して2人の仲は益々親密になった。

しかし優子の転勤した営業支社での上司である瀬島部長が中々の曲者だった。小山内社長が紹介すると言った人物である。今風に言うとモラハラが1番近い表現だが、何かと優子を責め立てていたらしい。後で考えれば当たり前の事だが小山内の側近の様な輩で優子追い出し策を試みていたのだ。優子はその事と通勤のせいでストレスを感じ、体調もあまり優れなくなっていった。

そんな中、第二第三の事件が起きた。


-続く-


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