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類魂  作者: 嶋恭作ニ
第一章 運命の人
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17.派閥争い

出社してわかった事は結論から言うと自宅マンションからの飛び降り自殺だったのだ。会社側はマスコミにバレて騒がれるのを嫌い、必死に隠して必要最小限の人だけで通夜など対処した様だ。それで下っ端ながらも役員の恭作にすら何も連絡が無かったのだが、逆にその事により優子との不倫旅行がバレず助かったのだ。

これはその後の報道でも、ネットで調べても飛び降り自殺という死因は出てこなかった。恭作は自分の会社レベルでも報道規制って出来るんだと妙な所に感心してしまった。

水森社長は恭作を47歳の若さで抜擢した福田会長の次の社長で、日頃から恭作に目を掛けてくれていた。恭作としては後で聞いた話だが、福田会長、水森社長、恭作という流れで派閥が形成されつつあったと噂されていたらしい。年齢的にも水森社長の次の社長候補の本命は恭作だとも。

何が水森さんを自殺に追い込んだのかと言うと、一言で言うと社長として何も自分の思う様に出来ないという不満と、私生活の自由も奪われてしまったという二つの原因らしい。前者は会長に退いた前社長の福田さんが原因だし、後者は秘書室長のTが原因だ。

一つ目の原因は福田さんは会長として会社経営の権限を奮い水森社長を自分の思うままにリモコン操作したと噂されたが、恭作としては尊敬する福田さんが何故?と疑問だった。おそらくその後明らかになった福田さんのアルツハイマー症がもうこの頃から発症していてそれによる理不尽な指示等が水森社長を追い込んだのではないか?というのが恭作の見解だ。また第二の原因だが、秘書室長のTか口うるさく公務が終わるとキッチリ社有車で自宅まで送り届け奥様に確認するとか、自由に外出できなかったとか、朝の散歩コースまで管理されていたとか、とにかく飲み歩いたりする事でストレスを発散する場まで奪われていた様だ。'本当にそんな事で自殺までするのか?'と恭作としては半信半疑だった。'帰宅してからまた飲みに行けば良いじゃない'とか'運転手買収すれば良いのに'とか'秘書室長更迭すれば良いのに'とか思ってしまう。


その後も直ぐには次期社長は決まらず暫定的に福田さんの社長復帰となったが、アルツハイマーの病魔は確実に彼を蝕んでいて、かなりの人間がその事に気付いていた。福田会長のアルツハイマー、水森社長の自殺と、噂されていた恭作を含む主流派閥は崩れていった。一方で自身の担当業務に集中していた恭作は、役員の中で自然と派閥ができていてそれに関連した出世争い(特に社長争い)が水面下で進行していたとはその手の話に鈍感なので気付かなかった。

水森社長が亡くなっておよそ1年後、次期社長は恭作を敵視していた小山内に決定した。

この一連の出来事は少なからず恭作と優子の人生に影響を与えたのだった。


-続く-

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