ep.9: 超人の訓練, 頂点の奮起
前回のあらすじ:生まれつき世界の常識を覆す力を持って生まれたトノの新しいクラスにはミュリアとコンバーサスがいた。
「ねぇ、トノ?1ついい?」
(な、なんだ?)
「急ぐって…どういうこと?」
「え…なに?本当にどうしたの?」
トノは本当に心配になる。
「どうした?どこか痛いのか?」
「違う。私が言いたいのは…」
「う…うん。」
トノは緊張する。
「移動魔法で連れてって!」
「おい時間返せこの野郎…まぁもう時間もないし、今回だけだぞ?」
「やったー!ありがとう、トノ!」
「行くぞ」
「うん!」
トノとミュリアの足下に魔法陣が展開される。
「いつ見ても理解できないわ…トノの魔法陣は」
シュウウウウウウン
「みんなにバレたくないからとりあえず倉庫の後ろにしておいたぞ」
「いやー助かる!ありがとう!じゃあ行こっか」
「うん」
「おし!チャイムがなったな!これから戦闘訓練を始めるぞ!まずはランクごとに列に並んでくれ!」
「「はーい」」
「並び終わったな!じゃあ訓練の相手を発表していくぞ!まずは…エンクールとアミークスだ!神童の2人で高め合ってくれ!」
辺りがざわつく。
(相変わらずの人気だな。やっぱ神童はすげえな)
相手が次々に発表されていく。
(俺の相手は…フォティス・ケアルか。Fランクで下から2番目かよ。まぁ最下位は俺なんだけど)
「よし!対戦相手は確認したか?これから君たち2人組の周りに結界魔法を張る。この結界は外からは中が見えず、中からも外が見えない、テストにはもってこいの魔法だ!しかも中に入ったものは限りなく小さくなるから、とても広い場所で思いっきり戦える!では、楽しんで!…いや、楽しむな。全力でぶつかれ!」
キュウン
トノとケアルの周りに結界が張られる。
「(うーん…とりあえず負けてあげるか。俺最下位だし。)…全力でこい!」
「では、失礼します。含沙射影!」
ピュロロロ…
(なんだこれ。Fってここまで雑魚いのか?)
トノは、初めそう思っていた。そして、トノに当たりそうになったその時だった。
(あー…そろそろ当たるな、負ける演技とか考えとくか…)
ブアッ‼︎ズオオオオオオオオオ…バッコォォォン‼︎
(なに⁉︎)
その影の弾が急に巨大になり、ブラックホールのようにトノを吸い込む。
「あーれええええぇぇぇぇぇ…………」
「そのブラックホールは入ったら終わり、絶対に抜け出すことができません。中ではダメージ魔法陣まで待ち構えていますので、私の勝ちです。すみませんでした。」
「すごい。結構大声で独り言話すんだね。この技、Fランクじゃ撃てなくない?君何者?」
「はい。私はガウディウムさんのサークルの幹部をやっている者です。いい人材がいるか潜入してチェックしてこいとガウディウムさんから………ってなに⁉︎」
ケアルはこの技からトノが抜け出すとは思っていなかったのだろう、油断して身分を明かしてしまった。
「なぜ…?いつの間に?」
「うーん…君が本当のFだったら負けてあげてたけどな。実力隠してたんならお互い様だね。俺も本気じゃないんだ。まだ入学したばかりなんだし、友達に…」
ケアルは戦闘体制に入り、こう聞く。
「…なら、あの威嚇魔法も?」
「あぁ、もちろん俺だけど?」
「なるほど。…あなたはガウディウムさんの下につく気はありますか?」
トノはニッコリ笑ってはっきりと言う。
「ない!」
「…そうですか。ガウディウムさんの障害となりうる人は早めに排除しておかねば。影狼…」
ケアルの影が丸くなり、そこから沢山の影でできた狼が出てくる。
「私は影魔法を得意としています。ちなみに、その狼は1体で階級、鬼までは倒せるほどの強さを持っているのでお気をつけて。」
「へー。ほぼ無限の兵力を持ってるのと同じだな」
「おっと。そんな余裕をかましていて大丈夫ですか?」
バウ!バウバウ!バオ!
(なるほど?こりゃ結構強いね。狼の数は…ざっと50か。流石にミュリアでも勝てないかもな。)
1匹の狼がトノに噛みつこうとしたその瞬間、
「フッ…遊び相手にもならないな。雷印。」
ビビビビビ…ビィィィィィィィィン!
そこにいた狼たちは倒れ、ケアルの影へと吸い込まれていく。
「なるほど。ならこれはどうでしょう。泣亡闇!」
辺りが闇に包まれる。しかし…
「今度は闇の中での狼か。」
「なぜわかった⁉︎」
「魔眼だよ」
「なるほど。魔眼を使ってきますか。ならばこちらも魔眼で対抗しましょう。未来の読み合いです!」
「(闇の中だからどこからでも狼がくるな…)とりあえず壊雷。」
トノの手から四方八方に雷が飛び、闇を晴らす。
「なんだと⁉︎」
「これミュリアの時も使ったけど、便利だな。」
「くそっ!遠影!」
ケアルは影でできた刀を持ち、トノに切り掛かってくる。
「騙されるかよ!今更そんな安直な攻撃をしてくるはずがない。(なんだ…?何が狙いだ?)」
ケアルが刀を振り下ろす。
(なるほど。あぶねぇ、やっと魔眼で視れた。)
トノはケアルの刀を避け…もう一度横に跳んだ。
「…やはり気付かれていましたか。」
「あぁ。まさか斬撃が遠くまで届く技だとはな。ギリギリまで気づかなかった。」
「…しかし、私の魔眼も舐めないでいただきたい!そこにはもう、斬撃を"敷いてある"!」
「斬撃を敷く?まさかな。」
トノがそう言った瞬間に、トノの足下から無数の斬撃が繰り出される。
「なんっ…だと?」
「はははははは!流石にこれは無理でしょう。さようなら、強者よ。……っ⁉︎」
「ふぅ。あぶねぇ。」
「⁉︎今のでも無理なのか…?」
(なんか今の場面ミュリア戦と似てるな。…じゃあこの戦闘もミュリアの時と同じような感じで終わらせるか)
トノは苦笑する。
「豪雷。」
辺りに一斉に巨大な雷が落ちる。
ズゴォォォォォォォォォォオンッッ!!!!
バッゴォォォォォォォォォォンッ!!!!
ドゴォォォォォォォォオオオオンッッ!!!
その威力に耐えられずに地面が盛り上がり、巨大な亀裂が入る。地面は破裂し、中から溶岩が噴き出してくる。溶岩は龍の様にうねり、辺りを溶かしながら爆発していく。岩は降り注ぎ、火は燃え広がり、辺りは地獄絵図と化す。ただ、今回は…
「くっ!うおおおおおお!!!!含沙射影っ!!」
ケアルは頭上に巨大なブラックホールを放つ。
「(なるほど。そこに自分が吸い込まれることによって亀裂に落ちるのを防いでいるか。)…おい、お前」
「っ!なんだ!」
「エンクール・ミュリアを知っているか?」
次回:超人は最強, 隠れた誼