ep.1: 超人の誕生, 均衡の崩れ
「おぎゃあああっ!おぎゃあああっ!」
「いやああああああっ‼︎‼︎…あっ………。」
バタッ。
「大変だ!出産したばかりの女が倒れたぞ!」
「誰か医者を読んでこい!」
「おぎゃああああああっ!」
ここは周りが海で囲まれた小さな孤島。名をサイト島という。
「まずいぞ!医者が到着するまで9時間はかかるそうだ!」
「何だって⁉︎そんなにこいつがもつわけない!」
「おぎゃああっ!」
周囲は混乱に陥っている。ただ、そんな中1人の男があることに気づく。
「おい…なんだか辺りがおかしくないか…?」
「本当だ…なんだか、いき、ぐるしっ…!」
「それに、まわりの、草木までかれてきてるっ…」
「もう、むり……」
バタッ!
ー8時間後ー
「ハァ…ハァ…急いできたぞ…って、何っ⁉︎」
到着した医者は辺りを見て驚いた。
なぜなら生き物が1匹もいなかったからだ。
そこで生まれた赤ん坊を除いて。
「おぎゃあああああ!」
「どうなってるんだ…?この赤ん坊は何なんだ?何が何だか分からないが、とりあえずこの赤ん坊を診てみるか」
医者がその赤ん坊の体を調べようとしたその時だった。
「おぎゃ」
ブゥウウウウウウウン
医者の足元に覚えのない魔法陣が展開された。
「なっ何⁉︎拘束魔法だと?一体誰が?」
医者は一時混乱する。しかし、
「誰だかは知らないが、この私を舐めないで欲しいね!私は魔気階級が栄のロード・パレントという者だぞ、魔法解除など容易いっ…⁉︎」
そこまで言ってパレントは固まる。元々動けないのだが。
「こんな複雑な拘束魔法陣は見たことがない!なんだこれは!これは神…いや、賢レベルだっ‼︎」
先ほどからパレントが口にする魔気階級というのは、魔気の量、質、コントロールによって振り分けられるランクのことだ。階級は上から威、賢、神、栄、鬼、強、弱、微に分けられる。
「しかし、一体誰が…?賢がこの島にいるとも考えにくいが…待てよ?拘束魔法は対象に触れていないと発動しないよな…?まさか、この赤ん坊が⁉︎」
「あぶ」
「確かにそうなると拘束魔法のことも、辺りの生き物が強すぎる魔気に触れた時に起こる魔気反発によって倒れていることも納得がいく。」
パレントはあらためて赤ん坊を見る。
「お前、親がいないんだろ?ウチへ来いよ。俺が引き取ってやる。お前の名前は、今日からトノだ!…しかし、生まれながらに魔気が発現しているとはな。俺も気をつけねば。」
本来、人間は生まれつき魔気を持っておらず、大体5〜7歳に発現するものだが、トノは生まれつき成人男性約8人分ほどの魔気を帯びていた。
その膨大な魔気に耐えきれず、母親はトノを産んだと同時に死に、父親は逃げ出した。
普通は5〜7歳に魔気が発現し、そこから魔気に慣れていくのだが、トノは生まれつき発現していたため、まるで体の一部のように魔気を操れた。
ここから、この最強の赤ん坊の無双劇が始まる。
ー9時間後ー
「ふう、なんとか連れて帰ったが、まさか道中で2回も拘束魔法をかけられるとは。拘束魔法なんてそんなに簡単にかけられるものではないんだがな…。」
「あぶ」
「まあいい。それよりも攻撃系の技を教えたいな。でも、防御もしないと意味ないか。育てるのが楽しくなってきた……っなに⁉︎」
ブゥウウウウウウウン
「おいおい!今は誰にも触られていないぞ⁉︎トノも向こうにいるし……まさか」
やっとここでパレントは自分がトノの才能を舐めていたことに気づく。
「まさか、本当に触れずに拘束魔法をかけられるのか…?これが本当だったら四魔王の1人、ガウディウムと同じレベルということになるが?どうなっているんだよ、全く!」
今パレントが口にした四魔王とは、世界にたった5人しかいない魔気階級、威の中の4人を指す言葉で、拘束魔法の"幻影"ガウディウムをはじめ、火炎魔法の"逆鱗"イラ、水魔法の"彗星"ドロレム、回復魔法の"愉悦"ファンによって成り立っている。残りの威の称号者は全魔法の"絶対者"モトゥスといい、その異名の通り全ての魔法を極めている。今世界は威の称号者によって支えられていると言っても過言ではないほど、この5人の力が強すぎるのだ。
「拘束魔法を極めたガウディウムには、誰1人触ることができないまま戦闘が終わるというが…よし!俺はトノをそのくらいに育て上げよう!俄然燃えてきた!」
次回:超人の魔気階級,見性自覚の時