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97.発想柔らか大浴場(1)


ミンリンさんの「むにゅう」に左腕が(つつ)まれる頃、むずかしい話が終わったと見えたのか、ミンユーとクゥアイが俺の前に来て両膝(りょうひざ)()いた。


クンッと()き出されるクゥアイ()と、ばいんっと()し出されるミンユー()とで、思わず息を()んでしまった。


「無事に戻りました!」


と、クゥアイは満面(まんめん)()みを俺に向けてくれる。()れてる場合じゃない。


いや、呑気(のんき)に照れたり出来るのも、無事に帰って来てくれたお(かげ)……。


「ケ、ケガはない……?」


「はい! 右腕に少し(つめ)がかすっちゃったんですけど、装甲(そうこう)が守ってくれました!」


笑顔で報告(ほうこく)してくれてるけど、相当(そうとう)(こわ)い思いをしたに違いない。こんな可愛(かわい)らしくて華奢(きゃしゃ)な女子を、前線に送り出すことに(あらた)めて申し訳ない気持ちになる。


けれど、クゥアイの(やり)腕前(うでまえ)が、突出(とっしゅつ)して高いのも事実だ。


湯で()れて(つや)やかにも見える腹筋(ふっきん)を、思わずマジマジと(なが)めてしまう。


と、自分の視線(しせん)に気が付いて、(あわ)ててミンユーにも(たず)ねる。


「ミ、ミンユーはどう? ケガはない?」


「はい。大丈夫です」


あの人見知(ひとみし)りだったミンユーが()()ぐ俺を見て、ハッキリとした口調(くちょう)(こた)えてくれる。


小隊(しょうたい)(ひき)いて一晩中(ひとばんじゅう)闘った経験(けいけん)が、ミンユーの自信になっているのかもしれない。顔付きが一変(いっぺん)したチンピラさんたちのことも思い浮かぶ。


昨夜(ゆうべ)初陣(ういじん)素晴(すば)らしかった。しっかり湯に()かって、身体(からだ)を休めてね」


と、俺が2人に声を()けると、向こうからメイファンが()けて来た。


ちょ、お風呂で走ったらダメですよ! す、すっごい()れてますし!


メイファンは、クゥアイをミンユーと(はさ)むように両膝(りょうひざ)()いた。もちろん、ばいんっと()()()()()た。


近いしッ!


「マレビト様! ミンユーの短弓(たんきゅう)はどうでした? スゴかったでしょう?」


と、メイファンも満面(まんめん)()みを浮かべて聞いてきた。


「う、うん。スゴかったよ……」


い、今、目の前の風景(ふうけい)もスゴイですけどね……。ばいん、クンッ、ばいん。


――むにゅうぅぅぅ(下)。


左腕は丁寧(ていねい)に丁寧に、ゆっくりと()()()()()ますし……。


「あーあ! 私も見たかったなぁ!」


と、宮城(きゅうじょう)の南側屋根で一晩中、長弓(ながゆみ)を引き続けてくれたメイファンが言った。始まる前には「ミンユーが見えたら、気が気でなくなる」と言っていたメイファンだ。


けど、そのどちらも本当の気持ちなんだろう。


ミンユーは()れたように苦笑(にがわら)いしている。


「ミンユーさんの短弓(たんきゅう)、ほんとにスゴかったです! あっと言う()に、ピュンピュンピュンッて飛んでいくし、ほとんど眉間(みけん)(はず)さないし! 私も何回も助けられました!」


と、クゥアイが身振(みぶ)手振(てぶ)りを(まじ)えて話すのを、メイファンは(うれ)しそうに(うなず)きながら聞いている。ミンユーは照れて(うつむ)いたり、顔を上げたりを()り返してる。


……全体的に、目に入る何もかもが、()れている。


「ミンリン様!」


と、メイファンが、俺の左腕を()()()()るミンリンさんに話しかけた。


「はい……」


と、ミンリンさん()が止まる。


「マレビト様の右腕! 姉妹(しまい)で初めて一緒(いっしょ)に闘った記念(きねん)に、私たちにやらせてもらってもいいですか!?」


ど……、どういうこと……?


なんの記念……?



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