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81.活き活き大浴場(2)


……クゥアイさん。……ふ、風呂場で走るのは良くないですよ。()れますしね。それに、昨日(きのう)、スイランさんが俺の近くで(ひざ)()いたのは近眼(きんがん)のせいですよ? この距離をデフォルトにします? そうですか。するんですね。


ニコニコと(うれ)しそうな笑顔で、クンッと()()()()()()クゥアイに、なんて言っていいか分からず、ただ俺の顔の赤みだけが()す。


「今日、ちょうどよく雨が()ってくれたから、薬草(やくそう)(たね)の育ちが良くなると思います!」


「そ、そうか! そ、それは……、良かった!」


「はい!」


クゥアイは本当に嬉しそうで、最終城壁内に逃げ込んでから久しぶりになる農作業(のうさぎょう)が、よっぽど楽しかったと見えた。


(くわ)の具合はどうだったのだ?」


と、シーシがクゥアイに(たず)ねた。


「はい! バッチリでした! すごく使いやすくて、さすがだなって思いました!」


「ニシシ。そう? ボクも初めて作ったから、ちょっとだけ自信がなかったのだ」


「そうだったんですね! そうですよね。私たちが使う(くわ)って、司空府(しくうふ)の方が作られるようなものじゃないし。でも、ほんとに、すっごく使いやすかったです!」


「ニシシシ」


と、シーシが俺の方を見た。()めろとおねだりされてる。


「さ、さすがシーシ! なにを作らせてもすごいな!」


「そう? そうかなぁ? ニシシ」


……これまで交流(こうりゅう)のなかった人たちが、こうして力を合せて頑張ってる。身分も()えて、知恵(ちえ)と技術を出し合って、協力し合ってる。


クゥアイは一生懸命(いっしょうけんめい)(くわ)の使い心地を語り、()()ろす仕草(しぐさ)()らし、シーシはふんふん聞いている。実際に使う人の感想は、作り手にとっては貴重(きちょう)な意見なんだろう。


シーシからも質問が飛び、クゥアイが思い出そうと振り下ろす動作(どうさ)()()こす動作を(くり)(かえ)し、そのたび()れて、俺も(くわ)奥深(おくぶか)さを知る。俺も使ったことないし。


とてもいい光景(こうけい)だと思う。


けど……、俺の前で、全裸でやる必要あります? これ? 近いし。


――ぷにゅう(上)。


あ。メイユイさんも、集中力もどったみたいですね……。丁寧(ていねい)さが……。


――ぷにゅう(下)。


それはそれで、気恥(きは)ずかしくはあるんですけど。普段(ふだん)、俺の護衛(ごえい)でどこにでも付いて来てくれてて、普通(ふつう)のやり取りをいっぱいしてる恋人でもない女子のおっぱいが、背中で(すべ)ってる訳ですから。……気恥(きは)ずかしくならない訳ないでしょう。


目の前ではシーシとクゥアイの農具(のうぐ)談義(だんぎ)も終わる様子がない。


でも、確かに普段は別々の場所で働いてて、直接関わることもない人たちが、こうしてお風呂っていうリラックスした場所で毎日一定(いってい)の時間、顔を合わせるようになったら、情報交換(じょうほうこうかん)(さか)んになりますよね。


つい先日まで高校生で社会経験のない俺ですが、これが異業種交流いぎょうしゅこうりゅうってやつなんですね。


大浴場の中を見渡(みわ)すと、そこかしこで女子たちがキャッキャとお(しゃべ)りしてる。黄色髪(きいろがみ)のシュエンはツイファさんとイーリンさんと一緒に湯船(ゆぶね)()かって、少し笑顔も見える。


大浴場全体が、昨日までより()()きして見える。他愛(たあい)のないお(しゃべ)りも、中味(なかみ)()議論(ぎろん)も、きっと()わされてる。それはそれで、いいことだ。とてもいいことだ。


ここで心合(こころあ)わせの出来た女子たちが、風呂から上がれば()()()()に帰っていく。そして、ジーウォ城内の人たち全員に少しずつ伝播(でんぱ)し、城全体がひとつになっていく助けになれば、言うことがない。


目線を移すとミンユーは、まだ(うれ)しそうにメイファンを見ている。


――そうだ。短弓(たんきゅう)の……。


と、思わずミンユーを呼びそうになったのを、(あわ)てて押し(とど)める。それは、後で大丈夫。後で大丈夫。ここにミンユーまで加わっては、俺の頭が()ぜてしまう……。


メイユイの、ぷにゅうは左腕に移り、全裸で胡坐(あぐら)をかいてるシーシさんは、クンッと()()()()()()クゥアイの話を熱心に聞いてる。


風呂を上がって、ひと眠りしたら、いよいよ短弓(たんきゅう)などでの近接戦闘(きんせつせんとう)の準備にかかる。戦闘に参加してくれる住民さんたちの危険度(きけんど)は、格段(かくだん)に上がる。


――ぷにゅうぅぅぅぅぅ(左腕を上に)。


()()めたい気が、引き締まらない……。


もう! (やわ)らかいなぁ! メイユイさん!



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