69.ミーティング大浴場(1)
「今朝は、私が……」
と言って、ミンリンさんが俺の後ろで手拭いを泡立てている。
今朝も大浴場は純潔の乙女たちでいっぱいで、キャッキャと賑やかだ。照れてるだけじゃなくて、皆のこともちゃんと見ていこうと昨日、心に決めたけど、照れるものは照れる。
「夕刻は、ご立派でした……」
と、ミンリンさんが話しかけてくれた。剣士府にはミンリンさんにも来てもらった。俺だけじゃ、あの場は収まらなかったと思う。
「いえ、そんな。ミンリンさんも立ち会ってくださって、ありがとうございました」
「私は、座ってただけですから……」
「ヤーモンが、突然、フラれたのビックリしましたね」
「ふふ。本当に……」
と、ミンリンさんは思い出し笑いしながら、手拭いを泡立て続けてる。丁寧にしっかりやりたい性格なんだろな。
ふと、洗い場を見渡すと、ツイファさんがシュエンの体を洗ってあげていた。姉妹のようにも見える。
ツイファさんに負担を押し付けてしまったような気もするけど、ここは甘えておこう。シュエンの心が少しでも休まるといいんだけど。
視線を移すとメイファンが水色髪のユエに、なにかを一生懸命、話しかけている。ユエは微妙な愛想笑いを浮かべて聞いている。
ユエもこの大浴場で、動転する心を落ち着かせている一人だ。まだまだ、心を開いているようには見えないけど、メイファンのコミュ力に期待してみよう。
……しかし、デッカイな。
たゆん、たゆんしているユエのを、思わずジッと眺めてしまいそうになるのを抑えて、視線を移す。
昨日はメイファンに背中を流してもらって、顔から火が出るかと……。と、思い出したときには、もう遅かった。
後ろから伸びたミンリンさんの手が、そっと俺の両肩の前側を押さえたかと思うと、背中に昨日とはまた違った柔らかい感触が。
むにゅう。
「ミ、ミンリンさん……?」
「昨日、メイファンさんがこのようになさっていましたので……」
そうですけどっ! と、首をひねって肩越しにミンリンさんの顔を見ると、俯き加減に真っ赤にしてる。
腕の外側から羽交い絞めに抱き着かれたような体勢になって、俺におっぱいを押し付けてるミンリンさんが、ゆっくりと上下に動き始める。
ああ、これダメだ。拒否ったら、なんでメイファンにだけ? って、なるヤツだ。ミンリンさんがというより、女子全体が……。
――むにゅうぅぅ(上)。
女子が一番きらうヤツですよね。里佳から教わってます、って2回目だ。(20話参照)
――むにゅうぅぅぅ(下)。
イーリンさんが最初に俺のベッドに来ちゃって拒否ったときも、すごい凹んだ顔させてしまったしなぁ。(17話参照)
――むにゅうぅぅぅぅ(上)。
って、ゆっくり動くのエロいなっ! 刺激がじわじわ強すぎるわっ! な、なにか話でも……。
「か、仮設住宅、ありがとうございました……」
「いえ、そんな……」
――むにゅうぅ(下)。
「は、速いのがスゴイですよねぇ……。あっと言う間に建って、ビックリしました」
「お褒めに預かり、光栄です……」
――むにゅうぅぅぅぅぅぅ(上)。
「一夜城みたいでした」
「一夜城……?」
――むにゅう(下)。
き、気持ちで圧力が変わるの、……やめてほしい。
「お、俺の生まれた、国で、昔、敵を攻めるための城を一晩で建てたって話があって……」
「そうですか」
――むにゅ(上)。
お。興味惹かれたかな? さすが……、土木好き黒髪インテリ巨乳陰キャ女子。
豊臣秀吉が若い頃の木下藤吉郎が建てたって伝承の、墨俣一夜城の話を、ミンリンさんに話す。敵の目と鼻の先にある墨俣の地に、川の上流にある山で材料を切り出して、夜の間に材料を筏にして川を下って運び込んで、敵に邪魔されずに、一晩で城を建てたって、お話し。史実かどうかは怪しいらしいけど。
俺が話してる間も、ずっと、ゆっくりゆっくり、泡だらけの「むにゅう」が上に下に、丁寧に滑り続ける。たまに、お腹が触れるのも分かる。
……お、終わらないなぁ。
もういいですとか言って、傷つけちゃってもなぁ――。