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53.大浴場の革命(2)


早くも()()になった顔で浴室(よくしつ)の中に入ると、(すで)にシーシが泡だらけになって体を洗ってた。


()()()()(ねえ)さん、神出鬼没(しんしゅつきぼつ)かよ。さっきまで宮城(きゅうじょう)の外で、仮設住宅(かせつじゅうたく)建設(けんせつ)指揮(しき)()ってたのに。


衛士(えいし)のメイユイも先に来てて、泡だらけで手を()ってる。つい、日没前にチラ見してしまった胸に目がいく。装甲(そうこう)の胸当てを外して大きくなって見えた胸は、服を脱いだら、もう一段(いちだん)大きく見えた。


女子の胸って、着るものでこんなに大きさ違って見えるんですね。初めて知りました。今は何も着てませんけど。


目を()らしつつメイユイに手を振り返して、いつものように木製(もくせい)のバスチェアに座った。全裸(ぜんら)の女子に背中を流してもらうのが、当たり前のように振舞(ふるま)うのも気恥(きは)ずかしいけど、……いたしかたない。


「マレビト様! 今日は私が背中流すね!」


と、メイファンが俺の後ろに回った。どういう仕組(しく)みで順番を決めてるのか聞くのも、期待してるみたいで恥ずかしいし、今日の担当が誰なのか、実際に来るまで俺には分からないままになってる。


今日は一晩中、望楼(ぼうろう)()り付いてくれてて、人獣(じんじゅう)一体(いったい)射抜(いぬ)いて倒し、大活躍だったメイファンに背中を流させるのも悪い気がしたけど、なにも言い出せない。


ただただ、顔を赤くして(なな)上方(じょうほう)天井(てんじょう)(にら)む。そっちの方向には、目に入る()()が何もないことに、ようやく気が付いたのだ。


後ろでは、メイファンが手拭(てぬぐ)いに石鹸(せっけん)泡立(あわだ)てる、ワシャワシャという音がしてる。


女子たちも、何も()(この)んで俺と入浴(にゅうよく)してる訳じゃないんだと、自分に言い聞かせる。()くまでも、シキタリなんだ。異世界の王国の、俺には意味不明なシキタリを大切にしようとしてるだけなんだ。


それを、里佳(りか)にフラれたばかりで、まだまだ里佳への想いでいっぱいの俺の気持ちも大切にしてくれて、俺の気持ちとシキタリとの【折衷点(せっちゅうてん)】を、なんとか模索(もさく)してくれてるのが、この大浴場いっぱいに全裸の女子たちがキャッキャしてる風景なんだ。


頭の中に引かれた直線の両端(りょうはし)が俺と女子たちだとすると、ちょうど中間あたりに()かれた点が、その【折衷点(せっちゅうてん)】だ。数学で何度もお世話になった、数直線(すうちょくせん)を思い()かべてた。


もっとグイグイ(せま)られたら、スッパリ(ことわ)れたのかもしれないのに、ギリギリの【折衷点(せっちゅうてん)】を()かれてるとも言える。健気(けなげ)と言えば健気(けなげ)。頑張ってると言えば、頑張ってる。その頑張りの結果として……。


なんて、グルグルと考えてると、異様(いよう)に気持ちの良い感触(かんしょく)がした。


むにゅん。


――むにゅん?


「な、なにしてるのっ?」


と、俺が(あわ)てて振り向くと、メイファンが泡だらけのおっぱいを俺の背中に押し当てている。


「え――? だって、こうした方が2人同時に洗えて効率いいでしょ?」


と、にこやかに答えたメイファンが、おっぱいを押し当てたまま、上に下に動くと、(やわ)らかな感触が俺の背中を(すべ)っていく。


背中()しなのに、形や弾力(だんりょく)がはっきりと(わか)ってしまう。


むにゅん。


――上に。


むにゅん。


――下に。


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って……」


と、俺が立ち上がろうとすると、肩を上から両手で押さえ付けられる。


「マレビト様、動いたらちゃんと洗えないよぉ!」


――これは、()()()()なんでしょうか……?


肩に体重(たいじゅう)をかけられて、俺が無理に立ち上がろうとしたら、メイファンを(ころ)ばせてしまう。どうしたものかフリーズしている俺をよそに、メイファンは()()()()洗い続けてる。


脇腹(わきばら)に、ちょっと太ももが当たる感触が、かすっていく瞬間(しゅんかん)がある……。どういう体勢(たいせい)になってるんですかね……。


前を向くと、顔を(おお)った手の指の間からこっちを見てる女子、ニタニタして見てる女子、顔を()()にして(うつ)加減(かげん)でチラチラ見てる女子、……みんな、こっち見てる。


俺の頭の中の【折衷点(せっちゅう)】が、数直線上でグイッと()()まれるイメージが()かんだ。


――後に『大浴場の革命(かくめい)』と(ひそ)かに口伝(くでん)されるメイファンの暴挙(ぼうきょ)に、俺はただ、背中を上に下に滑っていく感触を、なされるがままに感じていた。



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