表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/262

31.グイグイとかガツガツとか


「そ、倉庫の備蓄(びちく)を使いたいときは、ウンランさんに許可を(もら)えばいいんですか?」


と、俺が(たず)ねると、スイランさんは自分の胸をポンっと(たた)いて、(おさな)い顔立ちにドヤ顔を()かべた。


「いいえ。マレビト様から求められた場合、食糧(しょくりょう)以外の資材(しざい)は、すべて私の判断(はんだん)で出してよいと、ウンラン様から(おお)せつかっております」


なるほど。上司であるウンランさんからの信頼(しんらい)(あつ)いってことか。(ほこ)らしげな顔が可愛(かわい)らしい。


「じゃあ、早速(さっそく)ですけどお願いがあります」


「なんでも私に言って下さい」


「見たところ服の備蓄はなさそうでした。布と針と糸って出してもらうこと出来ますか? できれば、大量に」


俺の言葉にスイランさんが、少し怪訝(けげん)な表情をした。


「それは(かま)いませんが、何に使われるのですか?」


「昨日、最終城壁(さいしゅうじょうへき)内を少し歩いたんですけど、避難(ひなん)してる住民の方たちは()()()のままで逃げ込んだって感じでした。男はともかくとして、女の人に着替(きが)えがないのは可哀想(かわいそう)だなって思って。いや、先に女の人にって意味で、男の人にも着替えを用意してあげたいんですよ」


俺の後ろについてくれてるユーフォンさん、ツイファさんの空気が(やわ)らかくなったのを感じた。スイランさんは少し戸惑(とまど)ったような表情で口を開いた。


「それは素晴(すば)らしいお考えかと思いますが……、宮城(きゅうじょう)の人員では縫製(ほうせい)が……」


「布と針と糸が用意できるなら、フーチャオさんに相談してみようと思ってます」


村長(むらおさ)殿に?」


「避難して来てる人の中には、お母さんっぽい人や、お(ばあ)さんっぽい人も見かけました。たぶん、お願いしたら()()さんをやってくれるんじゃないかって思うんですけど」


「なるほど……」


「それに、出来ることがないっていうのは不安なものです。こんなときなら、尚更(なおさら)です。手を動かしてたら、少しは気も(まぎ)れます」


「いいじゃないですか!」


と、ユーフォンさんが明るい声を上げた。


「素晴らしいお考えです! 女性が汚れた服を着続けるのはツラいですからね。きっと、リーファ姫でも同じことを考えられましたよ!」


「分かりました。すぐにお渡し出来るよう準備をします」


というスイランさんの言葉に、謝辞(しゃじ)()べて司空府(しくうふ)をあとにした。宮城(きゅうじょう)の中を自分の部屋に向かう道中、ずっとユーフォンさんが()めてくれた。


「さすがリーファ姫の召喚されたマレビト様です! これまでのマレビト様とは全然違う! 平民とも気さくに()()ってこられたリーファ姫のお気持ちにも()()うものです! 素晴らしい! 素晴らしい腰抜(こしぬ)けです!」


最後!


「ユーフォン」


と、ツイファさんが落ち着いた口調で呼びかけた。


「腰抜けは褒め言葉ではありませんよ」


「え? そうなの?」


「むしろ(けな)してます」


「うそ! ごめんなさい!」


ご、ごめんなさいも、よせ。涙目で俺に謝る里佳(りか)の姿がフワッと、頭の中を()(つぶ)してしまう。


……ええ。幼馴染を忘れられない腰抜けですよ。間違いじゃありません。まだ、フラれて4日目ですからね。立ち直ってる方だと思いますよ、自分では。


「じゃあ、なんて言えばいいの?」


「なにが言いたいのか分からないので、アドバイスしようがありません」


それもツイファさんの言う通りだな。


「こう、グイグイこない感じ? ガツガツしてないっていうか」


「お(やさ)しい方、でいいんじゃないですか?」


「んー。私が言いたいことと、ちょっと違うんだよなー。ニュアンス? 的に?」


と、ユーフォンさんが(むずか)しそうな顔をして考え込んでしまった。ツイファさんは、いつものことなのか、()ました顔で歩いてる。


まあ、とりあえずユーフォンさんに悪意(あくい)がないことはハッキリしたので、それで良しとしよう……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ