199.揉んで大浴場(1)
夜明けを迎え、回廊決戦の決行を決断した。
この後、皆で仮眠を取り、午前9時頃からの開始を確認した。
大浴場では、回廊決戦で前線に立つ女子たちが、俺を囲んで代わる代わるに背中を流してくれる。
城壁の外で回廊を築きながら人獣と闘う。
一度築き始めたら一本道に進むしかない。外征隊以上の危険を伴う。しかも四方向に同時開戦になるので、兵士と剣士の密度も下がる。その分、一人ひとりの危険も増す。
もちろん、最後の大浴場にするつもりなんかサラサラないけど、自然と前線に立つ女子たちが集まってきた。
キャッキャ言いながら、俺の周りをグルグルして、交代に滑らせていく。
皆んな、怖くない訳がない。
俺の背中に柔らかな膨らみをグッと押し当てて、それで緊張を解す助けになるなら、いくらでもやってくれていい。
皆んなが一巡して、にこにこと笑い合ってる中、とんっと、メイファンが俺の前に両膝を突いた。
「マレビト様」
「なに?」
メイファンは俺の右手を取って、自分の左胸に押し当てた。
「ちょ……」
「揉んでほしいなぁ」
「え? は?」
「抜け駆け推奨だし」
「はあ?」
「また、揉んでもらいに生きて帰れるおまじない。ダメ?」
くぅ。そ、そんな風に言われたら……。珍しくメイファンが頬を紅く染めてるのも、可愛いが過ぎるし……。
「わ、分かった……」
「ほんと?」
「も、揉むよ……?」
「ばか。そんなこと聞かずにやってよ」
そ、そういうものなのか……。何分、初めてなもので、申し訳ない。じ、自分の意思で触るの初めてだし……。
――むにゅん。
「あっ」と、メイファンが吐息のような声を漏らした。そして、俺の目を見詰めた。
「もう一回」
――むにゅん。
「ひひっ! ありがとう! 絶対! 生きて帰るから!」
「う、うん。そうしてくれ」
ド、ドキドキしたぁ……。と、メイファンが放した俺の右手をクゥアイが握った。
「わ、私も……、お願いします……」
と、クゥアイもその控え目な膨らみに俺の手を押し当てた。
えっ? これ、全員の流れ……?
槍兵のリーダーとして頑張ってくれてるクゥアイ。その頼みを聞かないという訳にも……。
――ぷにっ。
メイファンには2回したよね……。
――ぷにっ。
「ありがとうございます! 絶対、第2城壁を奪還して生きて帰ります!」
と、顔を真っ赤にしたクゥアイが、満面の笑みで言った。
俺の右手は今度はイーリンさんの膨らみの上にある。
イーリンさんは剣士として回廊の建設を守る。危険な役割だ。
――ぱにゅん、ぱにゅん。
「……か、必ず、勝ちます」
顔を赤くしたイーリンさんに続いて、ミンユーが俺の手を取り、ジッと見詰める。
――むにゅん、むにゅん。
「勝つ……」
なんだかよく分からない『おまじない』だけど、少しでも皆んなの励みになるのなら……。
「ニシシ。ボクのもお願いするのだ」
と、シーシが俺の手を掴んでいる。
「小さくて申し訳ないのだけど……。ニシシ」
――くにっ、くにっ。
いや。結構、しっかり揉み応えありましたです。しっかり、おっぱいでした。
回廊決戦の要はシーシたち司空府の職人さんだ。剣士や兵士が護るとはいえ、最前線に丸腰で立たないといけない。
シーシの目をジッと見詰めた。
「ニシシ。そんなに見られたら照れるのだ。大丈夫! 任せておくのだ!」
と、シーシは俺の手をミンリンさんに渡した。立派な膨らみの上にピトッと置かれる。
「よ、よろしくお願いいたします……」
そんなに畏まられると、かえって気恥ずかしいんですけど……。
ミンリンさんが設計した回廊が、ここまで連れて来てくれた。当日、予想外の不具合が出たらすぐ対応出来るように、ミンリンさんも前線に立つ。
――むにゅう、むにゅう。
や、柔らかっ……。
「か、必ずや、成功させてみせます……」
墨俣一夜城の話から、ここまで広がった。最初に背中を柔らかな膨らみで流してくれたのはメイファンだけど、2人目のミンリンさんで定例化したようなもの。
その気恥ずかしさを紛らわそうと、照れ隠しにした一夜城の話が、城壁奪還の切り札に繋がるとは思いもしなかった――。




