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173.ハレの宴(4)



「ルオシィは15歳、ビンスイは14歳ですの」


「あれ? スイランさんと、随分(ずいぶん)、離れてるんですね」


と俺が言うと、ヨウシャさんはグイッと俺の耳元に顔を寄せた。


ほのかに、いい香りが……。


「スイランが10歳になる前にはもう、『ああ、スイラン(こいつ)(よめ)に行かねぇな』って(わか)りましたので、(あわ)てて作った子どもでございます」


「と、言うと……?」


「既に『仕事の鬼』の風格(ふうかく)(そな)わっておりました(ゆえ)……」


「あ、ああ……。なるほど……」


赤縁(あかぶち)眼鏡(めがね)をクイッと上げて、テキパキ仕事をこなすスイランさんの姿が思い浮かんだ。空色をしたミニのワンピで……。


14歳のビンスイは『スイランさんミニ』って感じで幼さが残る。


15歳だというルオシィはスイランさんより背が高くて、シュッとした感じの美少女。


……ん? 15歳?


「ルオシィは、あと10日ほどでマレビト様のお側でお(つか)えできます」


と、ヨウシャさんが言うと、ルオシィはポッと(ほお)を赤らめ、恥ずかしげに口を(とが)らせた。


「あと11日です……」


「あら、そうだったかしら?」


スイランさんよりちょっとタレ目のお母さんは、スイランさんより細かいことを気にしないタチらしい。


「ルオシィも心待ちにしてるのねっ」


「そ、そうじゃないけど……」


と、ルオシィはさらに顔を赤くして(うつむ)いてしまった。


俺はと言うと、スイランさんの「くにゅっ」て感触(かんしょく)裸体(らたい)の映像を (のう)が勝手に『これっスよね? きっとこんな感じっスよね?』と、ガンガン再現して納品してくるのを、(かた)(ぱし)から返品するのに必死だった。


――こ、このパターン、まだあったのかぁ。


ホンファが16歳になって大浴場(ハーレム風呂)に加わってきたときに、気付くべきだった。


あと、何人いるんだ15歳女子……。


それは、ともかく……。


「11日後かぁ」


と俺が言うと、ルオシィは(うつ)いたままで、コクンと(うなず)いた。


「その頃には、第2城壁くらいは取り(もど)してたいね」


ルオシィはチラッと俺を見て、また(うつむ)いてしまった。


スイランさんよりお姉さんにも見える、シュッとスリムな女子。


た……、楽しみって言ってしまっていいんだろうか……。(なや)む……。


「ビンスイはあと2年ほど。その頃には平和になってると良いのですが」


と、ヨウシャさんは微笑(ほほえ)んだ。


城壁の上で闘う空色(そらいろ)髪の女剣士は、ずっと見て来た。この人も、強い。


それが、こんなに柔らかな雰囲気のお母さんだとは思ってもみなかった。


だいたい、そんな(とし)にも見えない。


アスマは俺のことを人に(まじ)わるって言ってくれたけど、この極限状態(きょくげんじょうたい)の城で最短距離(さいたんきょり)を駆け抜けてきて、まだまだ()らない人ばかりだ。


ルオシィとビンスイは盛り上がる人たちの輪に戻っていった。


「スイランもルオシィも、よろしくお願いいたします」


と、ヨウシャさんが改めてお辞儀(じぎ)をしてくれた。


「いえいえ、スイランさんには助けられてばかりで……」


「ただ……」


と、ヨウシャさんが声を(ひそ)めた。


「はい」


「男の方でも純潔(はじめて)は緊張されるものです。私で良ければいつでも練習相手になりますから」


……。


……。


……あっ。


……そ、そこも同じパターンですか。


……れ、練習相手って。


……れ、練習って。


……て、手ほどきってことですか?


ポフっと顔を赤くしてしまい、目を()らした先に、リンシンさんがいた。


「いつでも(ねや)にお呼び下さいね」


と、ニコッと微笑むヨウシャさんの顔が近い……。


……(ねや)、ベッドに、童顔(どうがん)のヨウシャさんと、妖艶(ようえん)なリンシンさんがいる想像(イメージ)が……。浮かぶ……。


「何度でも、心ゆくまで練習のお相手をさせていただきますから……」


……な、何度でも。


想像(イメージ)だけで、頭がポンっと()ぜた――。



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