156.ユニゾンの地下牢(1)
日が落ちた望楼に、シアユンさんに加えて、ツイファさんとユーフォンさんにも集まってもらった。
やはり、このリーファ姫の侍女3人が、込み入った話も相談できる、俺の『側近』だった。
アスマから教えてもらったこと、話し合ったことを慎重に伝えた。
これまで、遭遇すれば殺し合いだった北の蛮族。
その思想や宗教、国家体制に初めて触れた3人は、驚きの色を隠さなかった。
この場では結論を急がず、俺も含めた4人でアスマたちとの話し合いの場を持とうと決めた。
シアユンさんたち3人は、生まれた時から凶悪な蛮族と教えられて育ってきた。
周辺には北の蛮族との戦で命を落とした人もいるだろう。急げば否定的な結論にしか至らない。
アスマたちと実際に話し、肌で感じて、自分たちなりの結論を出してほしいと思った。
そして、日が昇り大浴場に向かうと、今朝の背中流し担当はシーシだった。
――くにっ(右)。
「見たのだ見たのだー!」
「え? なにが?」
南側城壁でアスマと会見したことは、開けた場所だし積極的に隠してはないけど、そう直球でこられると……。
――くにっ(左)。
「ミンリン様の新しい図面! 見せてもらったのだ!」
あ、そっちか……。
ミンリンさんの考案してくれた『回廊』の図面を見せてもらったのか。
――くにっ(右)。
「あれは、スゴいのだ!」
「うん。出来そう?」
――くにっ(左)。
「やるのだっ!」
「そ、そっか。頼もしいな」
――くにっ(右)。
「いやぁ、あれはスゴいのだ。簡単に組み立てられて、頑丈でないといけないのだ! いやー! 頭が痛くなるのだ!」
と言うシーシは、とても楽しそうだ。
いつもより左右に振る腰の動きのキレがいい。
――くにっ(左)。
連弩づくりの間は毎朝、シーシが俺の背中を流してくれてた。
なんのかんの、ツルペタ姉さんの肌が一番、俺の背中を滑ってる。とか意識すると、ちょっと気恥ずかしさが込み上げてくる……。
――くにっ(右)。
ツルペタ姉さんの微かな膨らみまで、はっきりと背中が覚えてしまってる……。
「マレビト様は気付いてないかもしれないけど、解体も素早くキレイに出来ないといけないのだ!」
「え? え? なに? 解体?」
――くにっ(左)。
「ニシシ。すぐに解体して、また使えないと第3城壁の奪還に使えなくなるのだ!」
「そうか……」
――くにっ(右)。
「簡単に組み立てられて、頑丈で、簡単に解体できて、また組み立てたら、また頑丈でないといけないのだ! いやー! 無茶を言うのだ! ニシシ」
「シーシは楽しそうだな」
――くにっ(左)。
「楽しいのだっ!」
と、シーシは俺の背中から離れ、左腕に……、抱き着いた。
や、やりますよね、シーシさんも。
スイランさんとクゥアイがやってるの、見てましたもんね……。
――きゅみゅ。
って、いきなり太ももではさみますか? 手の平を。
「ニシシ。お、おイヤですか……?」
……ク、クゥアイの真似とかしてくるし。
――きゅみゅ。
「イ、イヤじゃないです……」
やっぱり見逃してなかったか……。
「ニシシ。良かったのだ。ボクのだけイヤって言われたら、どうしようかと思ってたのだ」
――きゅみゅ。
ちょ、ちょっと頬が赤くなってますよ、シーシさんも……。
――きゅみゅ。
ふ、太もも……、気持ちいいっスね……。
「しかも、組み立ての工程に兵士の動きも計算に入れないといけないのだ!」
――きゅみゅ。
あ、その話も続いてたんスね……。
って……。
シーシは太ももで俺の腕をはさんだまま、スルスルと上に上がってくる。
シーシの全身の肌という肌が、左腕を滑っていって、ゾクッとしてしまう。
密着した肢体の細かな凹凸まで、肌に感じる……。
そして、俺の耳元に口を寄せて囁いた。
「北の蛮族とはどう? 牢の木格子のこと聞けそう?」
うーん。もっと、普通に聞いてほしい。
シーシの方を向くと唇が当たりそうな近さで、動けない。そのままの姿勢で応えた。
「う、うん……。なんとかなるんじゃないかな……」
「ニシシ。さすがマレビト様だね」
と、シーシは吐息が耳元にかかりながら囁いた。
そして、またスルスルと身体を下に滑らせていって、上に下に滑らせ始めた。
ツ、ツルペタ姉さん……、エ、エロいっス……。
そして、ふわふわしながら大浴場を上がり、ひと眠りした後の昼下がり。
俺はシアユンさんたちと地下牢に向かった――。
本日の更新は以上になります。
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