表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

152/262

150.お願い大浴場(1)


夕暮(ゆうぐ)(どき)。今日は南側城壁の上から、外征隊(がいせいたい)を見守らせてもらっている。


イーリンさんは外征隊のメンバーとして城壁の外に出ており、代わって柿色(かきいろ)の髪をした女性剣士が俺の護衛(ごえい)に付いてくれた。


あの剣士府(けんしふ)での演説のときに見かけた、イーリンさん以外に2人いた女性剣士のうちの1人。


大浴場(ハーレム風呂)に来てないってことは、()()()()ってこと……、と、あの時も軽く動揺(どうよう)してしまった。


エジャと名乗った女性剣士は、俺の(そば)で、凶暴化した人獣(じんじゅう)が登ってこないか警戒(けいかい)してくれている。


(とし)(ころ)は、たぶん、俺と同じか少し下。(ふく)らみも(ゆた)かで、経験済みかぁ……、って思うと、昼間にリンシンさんから「お(なぐさ)めします」って言われたことを思い出して、赤面してしまう。


いやいや、いかんいかん。今はそれどころではない。


外征隊は今日も備蓄庫(びちくこ)到達(とうたつ)して、資材(しざい)(はこ)び出している。


生傷(なまきず)()えないようだけど、安定的に闘えている。心強い。


これで、当座(とうざ)の間は木材の在庫(ざいこ)の心配がなくなる。


ミンリンさんが考えてくれた『回廊決戦(かいろうけっせん)』を(いど)むには、また大量に木材が必要になるはずだ。


背後(はいご)に目線を移すと、宮城(きゅうじょう)夕陽(ゆうひ)()まっていた。


この時間帯の宮城(きゅうじょう)を外から見る機会(きかい)は、これまでそんなに多くなかった。


北の蛮族(ばんぞく)からの侵攻(しんこう)(そな)える質実剛健(しつじつごうけん)なつくりにも、王族が城主を(つと)めたこともあるという宮城(きゅうじょう)は、瀟洒(しょうしゃ)意匠(いしょう)(ほどこ)されていて夕陽を反射(はんしゃ)している。


その地下には、あの褐色(かっしょく)女子たちを(とら)えている。


ミンリンさんの執務室(しつむしつ)を出た後、ドレスを着直(きなお)したシアユンさんと地下牢(ちかろう)に足を(はこ)んだ。


褐色女子たち3人それぞれに話かけてみたけど、返事は返ってこない。


取り上げられていた服は返却(へんきゃく)されており、(くさり)(いまし)めも最低限のものに減らしてある。


着ている服は、黒地に金で複雑な紋様(もんよう)(ほどこ)された装束(しょうぞく)で、文明度(ぶんめいど)の高さを(うかが)わせる洗練(せんれん)されたデザインだ。


蛮族という言葉のイメージからは、ほど遠い。


褐色の肌に、()(とお)るような銀髪(ぎんぱつ)。オフのレザーのような素材(そざい)の装束に金の紋様。


名前も教えてもらえないし、見た目も共通してるところが多いし、俺は心の中で3人を「巨・大・中」と呼び分けた。……胸の大きさで。


さすがに、シアユンさんとも共有できる呼び方ではないので、心の中でだけ……。


褐色女子(巨)が一番立場が上なようで、俺の話には答えなかったけど「あとの2人は私に付いて来ただけだ。解放(かいほう)してやってくれ」とだけ言った。


解放したくても、それは(そく)人獣(じんじゅう)のエサだ。


地下牢(ちかろう)に閉じ込められていた褐色女子(巨)に、外の状況が(わか)っていないことは無理もなかった。


夕陽に照らされた宮城(きゅうじょう)から視線を落すと、剣士の宿舎(しゅくしゃ)(もど)る母親と娘の親子連(おやこづ)れが目に入った。


シュエンが司徒府(しとふ)配給(はいきゅう)の責任者になったことで、()き出しやその他の作業に参加してくれる方が少しずつ増え始めたと報告を受けていた。


宿舎に()(こも)っていた剣士の遺族(いぞく)たちが、同じ境遇(きょうぐう)のシュエンが責任者になったことで、少しずつ顔を上げ始めてくれている。


その報告をしてくれたツイファさんも、俺が以前にお願いした剣士遺族の動向(どうこう)を気にかけ続けてくれていた。


そのツイファさんは今、俺の横で南側城壁に立っている。


俺がジーウォ公に即位(そくい)したことで、俺も【(やみ)(もの)】の護衛対象(ごえいたいしょう)になったんだろうか? いつもの()まし顔で、(すず)しげに外征隊の戦況(せんきょう)を見守っている。


やがて、外征隊は日没前に無事に城壁内に戻った。


日没後の戦闘に(そな)えた準備が始まったので、俺とツイファさんは柿色髪の女性剣士エジェに礼を言って城壁を()りた。


外征隊は想像以上の戦果(せんか)を上げている。


第2城壁奪還(だっかん)に向けて、決戦を(いど)構想(こうそう)も始まった。


(みんな)が、それぞれの持ち場で全力を()くしてくれている。


今、俺が集中すべきことは、北の蛮族の褐色女子たちの心を開くことか。


当面、自分自身が()すべきことを確認しながら、夕陽で()()に染まる宮城(きゅうじょう)に戻った――。



本日の更新は以上になります。

お読みくださりありがとうございました!


もし気に入っていただけたり、おもしろいと思っていただけたなら、

ブクマや下の☆☆☆☆☆で評価していただけるととても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ